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エイリアンの倒し方を伝授します


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記事:前田 さやか(ライティング・ゼミ3月コース)
 
 
私の脳内で、繰り返し流れる呪文がある。
それは「エイリアンにはNOを!」だ。

奴らはある日突然、何の前触れもなくやってくる。そして、私の目の前にぬっと現れては、気力と体力をじわじわと吸い取っていく。まさに恐怖そのもの。私の脳内では、映画『エイリアン』のあのグロテスクな生物と姿が完全に重なっている。
 
私は信じている。エイリアンは実在するのだ! この人間社会の中に。
「この人、頭おかしいのでは?」と思ったそこのあなた。どうか、もう少しだけ聞いてほしい。
エイリアンは「いい人」をターゲットにする。そっと近づいてきて、無断で心の境界線を越えてくる。そして最後には、人の心をじわじわと壊していくのだ。だが今の私は、ひとつの武器を手にしている。それが「NO」と言う力だ。この武器のおかげで、エイリアンの追い出し方がわかった。そして私の生き方も、だいぶ楽になった。
 
武器を持つようになったきっかけは、5年前の出来事だ。職場で、宇宙人顔をしたアイツに言われた。
「売上が落ちている。これはあなたのせいだ」
この言葉を私は間に受けた。末端で働く私がどうあがいても、売り上げに大きく関われるはずもないのに。悩み、苦しんだ結果、うつ病になってしまった。
 
私は三ヶ月の休職を経て、職場を変えた。そして自分に問い続けた。「なぜ、あの時私は壊れてしまったのか?」
思い出したのは、職場で何度も言われたひとこと。
「前田さんって、いい人すぎるよ」
それは褒め言葉ではなく、警告だったのだ。私は、必要以上に“いい人”を演じて、自分の境界線を無防備にしていた。
 
それに気づかせてくれたのが、アドラー心理学のベストセラー『嫌われる勇気』だった。「課題の分離」——つまり「自分の問題と他人の問題を切り分ける」考え方が、私を救ってくれた。売上の問題は私の課題ではない、とアドラーが言ってくれたような気がした。それ以来、私は自分の心と生活を守るために、「境界線」を意識するようになった。他人に越えられてはならないこのラインを、守るのは自分しかいない。
 
では、エイリアンが境界線を越えてきたとき、どう気づくのか?
答えは至ってシンプルだった。「セコムの警報音を聞け」だ。
「また、コイツおかしいこと言っているよ。」と、いい加減思うだろう。
もし、あなたの家の壁を突破して、誰かが入ってきたとする。次に、セコムの警報音が鳴る(セコムと契約をしていたらだが……)。結果あなたは、異常に気づいて警察へ連絡すると思う。
 
心も同じだ。「不快」「嫌だ」と感じる。その感覚こそが、実は警報音なのだ。たとえば、職場で上司に頼まれ事をして、心がざわつくことはないだろうか。あの不快感だ。それこそ、エイリアンが現れた証拠だ。私は思えば、警報音をずっと無視してきた。だから、部活が続かなかったり、人間関係で苦労したりした。こんなことは繰り返すまいと思っている。だから常に奴らが潜んでいないか、日々探しているのだ。
すると奴らは意外と色々な所に現れる。職場だけじゃないのだ。出現事案を紹介する。

私は「二次会には行かない」と事前にLineグループに伝えていた。なのに、飲み会終盤に差し掛かり、しつこく友達から言われた。
「なんでさやかだけ来ないの? ノリ悪いよ〜」と。心の中のセコムが、作動した。二次会へ行くか行かないかは私が決めることだ! と。
「今日は無理だよ。ごめんね。帰ってから予定があるから。」
と言って、その場を後にした。昔の私なら、流されていたかもしれない。
 
誰にでも、「これ以上は入ってこないでほしい」というラインがあるはずだ。しかし日本人には、「空気を読め」「和を乱すな」という雰囲気が強い。それが境界線を曖昧にしてしまう原因ではないだろうか?
ふと私は、厚生労働省のサイトを見てみた。国内にはうつ病の患者が約160万人もいるという。誰もが理由は違えど、心が蝕まれている人が多くいる。この数字にショックを受けた。
 
どうか、心の声に耳を澄ませてほしい。小さな違和感を無視しないでほしい。あなたの「嫌だ」は、ちゃんと意味がある。さらに言うなら、「NO」は決してわがままではない。むしろ、自分自身と周囲の関係を健全に保つための、大切なサインだ。
 
私は最近では、「NO」を伝える言葉の選び方にも工夫するようにしている。ただ拒否するだけではなく、相手への敬意を残しながら、自分の意思を伝える。たとえば、「それは難しいけど、こういう形なら手伝えるかも」といった具合に、代替案を出すようにもしている。
 
しかし、今も“社会的エイリアン”に怖くなることがある。そんな時、映画『エイリアン』の主人公リプリーを思い出す。恐怖に立ち向かいながらも、自分と仲間を守るために戦った彼女。あの姿は、私にとって心の中のヒーローだ。私も、自分を守るためには戦わなくてはいけない。
「エイリアンにはNOを!」
この呪文は、これからも私の中で何度も再生され続ける。
 
 
 
 
***

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