メディアグランプリ

「スパイス」と「味噌醤油」の共通点について書いていたらカレーを作りたくなった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:冨山 繁美(ライティング・ゼミ3月コース)
 
 
 「国際結婚ってどう?」私がスリランカ国籍の男性と結婚をしていることを伝えると多くの方からよく聞かれる。この「どう?」は「楽しい?」というよりは「大変そう」という言葉が見え隠れする。そして次はだいたい「スリランカって何食べるの?」だ。
 
 最初の質問には「日本人同士でも環境が違えば当たり前も違うから同じだよ。でも日本っていう枠組みがない分理解し合えないところがあって当然って割り切れるかも」こんなふうに答えるとかなり納得してもらえる。食生活は南インドの影響を受けているので毎日カレーだと伝えると決まってこう言われる。「え! 毎日カレーなんて無理かも」
 
 日本でカレーといえばご飯にルーをかけるあのカレーだ。最近は各国のカレー屋さんが多くなり、日本のカレーではなくナンやサフランライスで食べるカレーを思い浮かべても一日3食、毎日なんてとんでもない! と思うのは当然だ。私だってそう思っていた。
 
 結婚した次の年に義弟の結婚のため1ヶ月のスリランカ滞在という計画が持ち上がった。毎日の食事を心配したパートナーは日本のお米や乾燥うどんにそうめん、醤油や粉末だし、インスタントのお味噌汁まで大きい段ボールに溢れるほど食材を買い込んできた。そしてそれを持って出発。ところが、その食材はほとんど使わなかったのだ。もちろん三食カレーが出てくる。しかしそのカレーは微妙に味が違い飽きない。メインは本格インドカレー屋さんで出てくるようなとろみがついていたり、汁気のあるカレーで肉や魚。それもココナツミルクベース、トマトベース、香辛料のみ、と同じ具材でも味が変化する。付け合わせは野菜が中心、インゲン、レンズ豆、人参、ジャガイモ、なす、ブロッコリー、カリフラワー、オクラなど。汁気のないドライなカレーだ。単一の野菜炒めカレー味。それを数種類組み合わせる。例えば、牛肉トマトベースカレー。そこに人参のカレー炒め、オクラのカレー炒め、ナスの素揚げのカレーまぶし。ピクルスやチリペーストも食卓に並ぶ。毎食食材が変わるがカレー味なのだ。
 
 なんだか日本食に似ている! 鳥の唐揚げ、ナスの煮浸し、ほうれん草のおかか和え、筑前煮にけんちん汁。え? 何が似ているのかって? 「醤油」での味付けではないか。しかし素材が違うから同じ醤油味でも微妙に違って飽きが来ない。そうなのだ。スリランカだけでなくカレー文化の国での香辛料は日本の「味噌・醤油」のような使い方をする。
 
スリランカでは「カレー粉」ではなく使うのは各種スパイスだ。その配合の微妙な加減がその家庭、その家の「お嫁さん・お母さん」の味となる。そこに「ココナツミルク」や「トマト」が加わるからバリエーションも豊富なのだ。さらにスリランカの主食は米。その米の種類もとても豊富でスーパーのお米コーナーには赤や黒い米や大きさや形も様々な種類が並び匂いも味も全く違うことに驚いた。米粉を練って小さな穴から押し出しそうめんのようにしてから蒸す「ストリングホッパー」という食べ方やイギリスの植民地の影響でパンも生活の中に入り込んでいる。同じカレーでも主食によっても味が変わるのだ。
 
 私はすぐにこの「スリランカカレー」に魅了されてしまった。大きめのお皿の真ん中にご飯を乗せる。その周りに、お肉、野菜1、野菜2、野菜3と盛っていく。それぞれの味を楽しみながらご飯を食べ、そして混ぜ合わせる。その混ぜ具合でも味が変化するのだ。
 
 「毎日カレーなんて無理!」と言う友人にこういう言い方をするようになった。
「ひじきの煮物、きんぴら、肉じゃが、おかか和え、筑前煮 そういう日本食ってお醤油ベースだけど毎日食べても飽きないよね。それと同じなの。味噌、醤油と同じように香辛料を使うの」
すると
「醤油って万能調味料だと思っていたけどスパイス(カレー粉)も同じだね」
とわかってもらえることも多くなった。
  
 しかし! 日本人の私とスリランカの親戚の大きな違いがある。私は味噌・醤油が使われていない西洋料理や洋食、そして各国料理も楽しめる。しかしスリランカの家族はカレー味でなければ物足りないようだ。コロッケもカレー味、スパゲッティーもカレー風味、ピザもカレー味。その食文化の違いはやはり歴史や風土・習慣が大きく関わっていてることも肌で感じた。
 
 我が家のキッチンには「クミン」「クミンシード」「コリアンダー」「ターメリック」「カルダモン」「シナモン」「青唐辛子」「チリパウダー」「カレーリーフ」などが揃っている。そして時々「スリランカカレー」を作る。家族全員で移住し3年間過ごしたスリランカでの生活で現地の味を盗み、日本の食文化と融合させたその味はきっと誰にも真似できない「お袋の味」「家庭の味」になっているはずだ。
 
 どの国でも食は様々な記憶とともに刻み込まれているのではないだろうか? ぜひ年に一度の母の日に「我が家の味」について記憶を辿ってみて欲しい。きっと「どのお店よりも家で食べたあれが美味しかった」や「あれほんとに不味かったよね」とエピソードとともに記憶が蘇るだろう。その記憶を含め「食文化の豊かさ」なのかもしれない。
 
食にうるさい息子がこっそり「母のカレーはスリランカを含め色々なところで食べたどのカレーより美味しい」とSNSに書いていた。その一言を見つけ軽くガッツポーズをする私は久しぶりにスリランカカレーを作りたくなった。
 
今、あなたの食べたいものは何ですか? 
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「天狼院カフェSHIBUYA」

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜20:00

■天狼院書店「名古屋天狼院」

〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先 レイヤードヒサヤオオドオリパーク(ZONE1)
TEL:052-211-9791/FAX:052-211-9792
営業時間:10:00〜20:00

■天狼院書店「湘南天狼院」

〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-18-17 ENOTOKI 2F
TEL:0466-52-7387
営業時間:
平日(木曜定休日) 10:00〜18:00/土日祝 10:00~19:00



2025-05-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事