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推し活が教えてくれた「2−1=3」という公式


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:星空志音(ライティング・ゼミ5月コース)
 
 
「1+1=−1」になるのに「2−1=3」になるのか! 
先日あるライブの帰りに感じた気持ちを因数分解したら、不思議な数式が頭に浮かんだ。
数学的には絶対成立しないのに、とても腑に落ちる。
2つの推し活の経験が、人生を生きる公式を教えてくれたのです。
 
 
 
私はあるミュージシャンの方のファンで、先日久しぶりに開催されたライブに行きました。なかなか取れないチケット。会場に入れるだけでも幸せと思うけれども、少しでもいい席で見たいと思うのが人間のサガ。そしてさらに欲をかくと、ライブ中に飛んで来る金テープが欲しい。ライブに行かれたことのある方なら、わかっていただけるのではないでしょうか? 
 
でも私の行くライブは、あまりそういった気持ちに囚われない珍しいライブです。それはファンの中に浸透したある素敵な習慣があるから。
 
それは「タオル裏返し作戦」と呼ばれるもの。
 
金テープが取れなかった人がタオルを裏返して肩にかけていると、2つ以上取れた人が譲ってくれるという、何とも温かいルール。これはファンの中で自然に生まれた習慣のようで、ミュージシャンの方や運営の方から指示されたルールでは一切ないのですが、いつの間にか浸透していきました。
私自身もこのおかげで、何度も譲っていただいたことがあり、今まで参加した全てのツアーで1本は頂くことができています。さらに2本以上取れた時には必ず誰かにあげるようにしているので、ライブ後に交流が生まれ新たなファン仲間ができるというおまけ付きです。
 
 
この習慣の良いところは、みんなが幸せになるということ。
 
まず、もらえた人はもちろん嬉しい。
0+1=1なわけですから。
それどころか0+1=2になったりします。
0(持っていない)+1(もらえた)=2(金テープと温かい気持ち)
 
 
次に、あげた人も嬉しい。
本来は2−1=1なはずです。
でも不思議と2−1=3になるのです。
実際に金テープは1つ減るけど、相手がすごく喜んでくれて、自分も嬉しくなる。これがきっかけで、推しの話に花が咲き、仲良くなれることもある。
つまり金テープをあげる前よりあげた後の方が幸せになっている。だから2−1=3もしくはそれ以上になるのです。
 
 
さらに、見ていた人まで嬉しい。
これは今回のライブで私自身が体感したことでした。
ライブが終わってしまった寂しさと途方もない長さのシャトルバスの待機列に、心と足が痛みに戦っていた時のこと。満面の笑みで「もらってください!」と渡す人と、泣きそうな顔で「ありがとうございます!」と応える人の声が響き渡ったのです。お二人とも何とも幸せそうな表情をされていて、私を始め周辺の人たちまでがみんなニコニコ。笑顔が伝染していました。気が付けばちょっと前まで感じていた痛みは、どこかへいっていました。
つまり0+0=1
0(持っていない)+0(貰ってもいない)=1(なのに幸せ)
こんな不思議な方程式が成り立ったのです。
 
 
 
以前私はあるアイドルのファンをしていました。人気過ぎて滅多にチケットの当たらないライブ。争奪戦は日々激化していました。
とあるライブで、1人1枚入場特典が配られました。プラチナチケットを手にできた一部の人しか貰えないそれは、間違いなく高値で取引されることが予想されました。ただこれは金テープとは違い、入場すれば必ず全員1枚貰えるもの。人数分がしっかり用意されているのです。
しかし悲劇は起こってしまいました。弱々しい子供の手に握られていた特典を、奪い取って逃げた人が現れたのです。
 
今でも思います。奪ったその人は果たして幸せになったのだろうかと。
1(自分のもの)+1(他人のもの)=2
すでに1枚持っているはずなのに、もう1枚手にする。数学的には公式は成り立つと思います。
でも実際には、人から奪った入場特典を見るたびに良くないことをした事実に苛まれるに違いない。人の物を奪ってまで得たかったものってなんだったのだろうか? 
盗られた子供はさぞかし悲しかっただろう。
でも奪った人も決して幸せになっていない。
残念ながらこの公式が成り立ってしまう。
「1+1=−1」
 
 
 
「1+1=−1」になるのに「2−1=3」になる。
つまり「奪うより、与えた方がお得」だということ。
私達は日々何かを得るために生きている。お金・権力・肩書き・賞……。何かをGETすればきっと良いことがある。それゆえ、人のものを奪ってまで欲しくなるもので、物理的数が増えれば幸せも増えると思っていた。
GIVEはGETの逆で、自分の持っている数は減る。なんか損をしそうでもったいない気がする。でも、私は金テープを譲ってくれたあの人の顔が今でも忘れられない。何年経っても思い出す。その方の温かい想いのおかげで、楽しかったライブの思い出がさらに何倍にもなったことを。
GETは自分だけが得をするけど、GIVEはもらった人もあげた人も得をするなんて、なんか魔法みたいですごい。得たものは死んだら無くなっちゃうけど、与えたものはもらった人の中で生き続けるかもしれない。
 
 
「何を手にできたかではなくて、何を残せたか」
これが人生を生きる公式になった。
 
 
金テープをくれたあなたへ
あなたはもう忘れているかもしれないけれど、あなたのくれた想いは私の中で生きています。ありがとう。
 
 
 
 
***

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