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こちとら、ひっそりとなんて咲いてらんないんすわ《週刊READING LIFE Vol.368「たとえば野に咲く花のように」》


 

 

 

 

 

*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

 

 

記事:まるこめ (READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

 

 

 

朝、目覚めてから夜、子供たちが眠りにつくその瞬間まで……

 

子供たちの支度に追われ、家事をそこそこに家を出る。

「保育園から電話ですよ」と言われないかヒヤヒヤしながら、日々の業務をあーでもない、こーでもない、と言いながら気持ちと体力に差が出始めたアラフォーのカラダに鞭を打ち、今日も電話が来なくてよかった……と安堵しながら、定時でGO! の勢いで保育園へと車を走らせる。

 

「ママ!」

 

と指を指して、嬉しそうにする次女を小脇に抱え、車を走らせるは近所のスーパー。

あぁ、今夜も献立が浮かばない。一人なら、かまぼこで酒が飲めるのにな……なんてボヤきながら、なんとなくバランスを考えつつ食材の入った大きな袋と、そこそこ大きな次女を両手に抱え、大急ぎで家路に着く。

 

「ママ! おかえり〜」

 

と、先に帰った長女に迎えられ、息つく間もないまま「その日の出来事」をサブマシンガンのようにぶっ放してくる長女の言葉を、産後太りで大きくなった背中で必死に受け止めながら、どうにか食事を作り、食べさせる。食事もそこそこに風呂に入れて、あっという間に寝かしつける時間が目の前までやってくる。

 

寝る直前までサブマシンガンをぶっ放す長女と、寝る直前になると暴君と化す次女が寝た後の我が家は、先ほどまであんなにも騒がしかったはずなのに、まるで水を打ったように静かだ。

 

 

天使の寝顔で、幸せそうな娘たちの顔を見ながらふと、思ってしまうことがある。

 

 

「女の子」に産んで、申し訳ない、と。

 

 

男としての人生を歩んだことがないから、殿方の大変さはわからない。

ただ、少なくとも「女」として生きるのは決して楽なことではないのだ。

 

 

ある程度大きくなってくれば、毎月のように生理がやってくる。

何も悪いことなんてしてなくても、毎月、1週間は無条件で血を流しながら普通の生活を余儀なくされる。ひどい場合、その不快感にプラスして理不尽な痛みにも耐えなければならない。

 

そして、いざオトナになってもその大変さは足枷のようにまとわりついて決して離れてはくれない。

 

 

「仕事も良いけど、いつ結婚するの?」

 

 

適齢期を迎えれば、周りから挨拶のように結婚を促され、結婚をしたらしたで

 

 

「おめでとう! で、子どもは?」

 

 

と、これまた息をするように子供の話をされるのだ。妊娠中でどれだけ大変であろうと

 

 

「別に、みんなフツーに産んでるし」

 

 

と、辛さを簡単に吐き出すことはできず、いざ産んでしまえば

 

 

「おめでとう! で、2人目は?」

 

 

と、一点の曇りのない眼でこちらをみてくる。慣れない育児に奮闘していても

 

 

「まぁ、周りも当たり前に2人とか育てているし」

 

 

と突き放されて、3人、4人と増えててんてこ舞いにでもなっていようものなら

 

 

「考えなしに産むから……」

 

 

などと、後ろ指を指される。本当に無責任なハナシだ。

悔しいけれど「お前が言うたやん!」なんて、口が裂けても言い返せないから参ってしまう。

 

そして、働いていればイベントが発生する度、たとえどれだけ一生懸命に働いていようとも、同じスタートラインに立っていたはずの仲間からはどんどん出遅れてしまう。どれだけ、一生懸命に成果を出したとしても、一度キャリアのレールから外れてしまうと、もう簡単に追いつくことは、どうしても無理だということを思い知らされて、絶望する。

望んで幸せを掴みに行っているはずなのに、キャリアか、それとも家庭かを天秤にかけて、どちらを選んでも後悔が発生する、答えの出ない問題に直面しなければならない。40歳を目前にしても、これの最適解はいまだに答えは出せそうにない。幸せは何かしらの犠牲に成り立っているということを肌でヒシヒシと痛感する。

 

 

 

これが、女だ。

 

 

 

我が子に、私と同じ苦しみをさせてしまうのかと思うと、本当に申し訳ないな、と思ってしまう。口をポカンと開けて、これからやってくるであろう苦労なんてこれっぽっちも知らない、娘たちの顔を見るたびにそんなことを思ってしまう私が、いる。

 

そんな、私の大切な娘たちの名前にはそれぞれ異なる「花」をせめてもの餞にして贈っている。

 

バラや、百合のように豪華では決してないし、チューリップやカーネーションのように、メジャーな花では、ない。だけど、必ず誰かが彼女たちを見つけてくれますようにと、そんな願いを込めている。

 

どんなに才能があっても、どれだけ器量が良くても、見つけてもらえなかったらその良さというのはわからない。そして、それらの花言葉である「嬉しい知らせ」と「豊かな実り」にあるように、常にチャンスに恵まれてほしいと、切に願っている。

 

「チヤホヤされたい」

 

と、思いながら闇雲に努力をしていたことがある。

今思えば、努力というか迷走な気がしないでもないけれど、若かった頃の私は、とにかく誰かに認めて欲しくて、頼ってもらいたくて、構ってもらいたくて必死だった。温室の中で優雅に過ごす胡蝶蘭のように、チヤホヤされて、ぬくぬくと育ちたかった。

 

けれども、やっぱり胡蝶蘭ではこの女性として生きるには、人生ハードモードすぎる。

温室育ちじゃ、荒野みたいな人生……生き延びること自体困難なのだ。

 

社会人になって15年も経ってしまったけれど、私の人生は「雑草魂」そのものだ。

やっとこさ、芽が出てきたのかな? と思うけれど、15年、アスファルトの隙間からでもどうにか泥水を啜り、誰に褒められなかったとしても地面に根を張り、踏みつけられれば強くなり、深く深く、地中に根を張り巡らせた。引っこ抜かれても、地中に張った根は腐ることなく、コツコツと地面を這いつくばり、またしっかりと頑張ることができている。

 

いろんな人に振り回され、いろんな制約に足枷をされて、毎日ヘトヘトだし、たまに疲れる。

そんなハードモードな毎日だけど、寝ている娘たちが、不意に「ママ」と呼んでみたり、手を握ってきたりするのをみると、私の人生、なかなか捨てたもんじゃないなと思う。

 

「置かれた場所で咲きなさい」という言葉があるけれど、たとえば野に咲く花のようにひっそりと健やかになんて綺麗なものじゃない。自分たちの力で、地に足をつけて、誰に褒められなくても自分の花を咲かせること。これが、女の生き様なのかもしれない。

 

私も、名前に「花」はないけれど、自分の中にはでっかい「華」はある。

 

あー、しんどいわ今日。なんて思うことはしょっちゅうだけれど……

いつか、年収1000万円稼げる様になったら家政婦さんを雇い、好き勝手仕事して家族と遊び倒すんだという野望を常に抱きながらバリバリ働きながら、どうにか頑張れている。

もしかしたら、明日またポッキリと心が折れるのかもしれない。それでも、自分の野望を花開かせるために、私は一分一秒たりとも歩みを止めることなく進み続けるほかないのだ。

 

 

娘たちよ。

 

 

やっぱり、女でいることは決して楽だとは思わない。

理不尽はすぐに足を引っ張ってくるし、幸せってなんだろう? という分厚い壁が君たちの行く手をすぐに阻んでくるだろう。

 

それでも、そうであったとしても……

 

どうか、諦めることなく日の当たる方を目指して、淡々と進んでいってほしい。

そうすれば、貴女たちの名前に込めた通りの「うれしい知らせ」や「豊かな実り」は必ずやってくる。そのチャンスをうまく掴み取って、それぞれの花を咲かせてほしいと私は願っている。そのために水を上げる努力を、私は決して惜しまない。

 

そして、いつかみんながお酒を飲める様になったら、一緒にお酒を飲もう。

 

辛いことも、理不尽なことも、泣きたくなる様なことも、ゲラゲラ笑いたくなる様なことも全部ひっくるめて、飲みながらたくさん話ができたら良いなと思う。

 

そんでもって、グラスを合わせて声高々にこう叫ぶんだ。

 

 

「あーぁ、女に生まれて、良かったぁ」って。

 

 

with Bもとい、with P(パパ)の奢りで(ニヤリ)

 

【終わり】

 

❏ライタープロフィール

まるこめ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

日常のあれやこれやに思いを馳せながら、ある時はペンを握り、ある時は包丁を握り、ある時はマウスを握る。自動車販売会社に勤める傍ら、9歳差の姉妹を育てる兼業主婦リーマン。今日も夕飯の献立が浮かばない。

 

 

 

 

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