メディアグランプリ

猫飼い女の朝ルーティン


 

 

 

 

*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

記事:鐵谷知会子(2026年8月開講 ライティング・ゼミ福岡)

 

 

猫飼い女の朝のルーティンは時間との戦いだ。朝6時前イイ感じで二度寝をむさぼる私の耳を痛いほど噛むミー子。白い体に尻尾と頭の一部がキジトラ模様だ。その脇で私の後ろ髪を嫌という程なめるのは茶キジに白のターちゃん。一番私と一緒にいるのに時々狂暴になる油断ならない。とにかく2匹とも私を起こして朝食にありつきたいのだ。もう少し寝ていたい私は頭から布団を被る暴挙にでる。するとミー子は悲しげにナーと鳴く。その声を聞いたターちゃんが体の大きさに似合わない細く可愛らしい声でミャと鳴く。私自身トイレの我慢がそろそろ限界だ。仕方ないから布団を勢いよく跳ね飛ばし眠気を引きちぎる様に起きる。

「あー分かりました、分かりましたー」歌うように言いながら、まずはトイレに行かせてよと足元に絡んでくるターちゃんを蹴る様に歩いてトイレへと急ぐ。追い立てられるようにトイレを出ると手洗いし、歯を磨いてリビングの真ん中にあるキッチンに移動。私は背筋を真っ直ぐ伸ばすと今から始まる時計との戦いに身震いし、大ぶりのマグカップいっぱいの水を飲み干す。キッチンカウンターにマグカップを戻すと様子を伺っていた猫達が尻尾を垂直に伸ばし鳴き声を一斉に高くして、忙しく私の足元でくるくる纏わりついてくる。キャットフードの入った缶を私が抱えると、すでにターちゃんが皿の前でお座りをしている。彼の皿にシャラシャラとフードをいれると同時にソソソソソと音がしてソファの下を住みかにしている可哀想なチョコが這い出してきた。チョコはサビ猫で大人しく頭がいい。嫉妬深いハチワレ柄のプチ丸に何故だか目を付けられ追い回されて、いつの間にかソファの下が彼女の居場所になった。だから食事の時だけ這い出てくるのだ。チョコの皿にもシャリシャリと餌をいれ彼女の頭をそっと撫でる。そのチョコを睨むプチ丸に「なにしてんの」と大きな声で説教すると、いかにも不満げにプチ丸がジャーと鳴き自分のお皿へと向きを変えたが待ち構えていたミー子からパンチをくらっている。私は2匹のほうへくるりと向きミー子とプチ丸のお皿へフードをシャラシャラいれる。

 

さっきからうるさく吠えるのは、おばあちゃん小型犬のリィリィだ。実は犬飼いでもある私が繁殖犬だった彼女を保護した時、すでに歯槽膿漏になっていて歯を全部抜く羽目になった。だから皿にドライフードを23gいれたら水を足し電子レンジ500W40秒。フードが柔らかくなるから温度を氷3個で調整してソファの上で待つ彼女の前に置く。時間に余裕があれば手で食べさせられるが今日は二度寝のせいで時間がない。

次は小走りで玄関脇右手の扉へと急ぐ。扉の向こうは、すでに猫達の鳴き声で騒がしい。この部屋はアトリエに使いたくてわざわざ改装したのに、今は2022年に保護した猫達の専用部屋になっている。正真正銘お猫様達の無法地帯でひどい有様だ。いやそんな事を考えている暇など無い。ため息をつく私の足元にクネクネと小柄な茶キジのツーちゃんがやってくる。ツーちゃんはワクチンを接種した翌日から全身の麻痺が始まり、かなり心配した。幸いにも2か月経つ頃には体の麻痺も少し揺れるくらいに落ち着いたが後遺症の一つなのか体は小さいままだ。ヌガーと低い鳴き声が首を傾げた可愛いビジュアルと合わない。

いつものように天井に顎を突き出したポーズでじっとしているのは同じく茶キジの光ちゃんだ。光ちゃんは保護した仔猫の時、酷い風邪にかかっていた。そのせいで目が見えなくなり耳まで聞こえなくなってしまったのだ。光ちゃんの鼻先に手をかざすと匂いで私とわかり前脚から背骨にかけ真っ直ぐにグンと伸ばして嬉しそうだ。

猫達の皿をテーブルの上に置くとカリカリフードを目分量でいれ、その上にウエットフードをトッピング。この部屋猫の特別食の出来上がりだ。まずは足元のツーちゃんの前に皿を置き次は隣に座る光ちゃんの前足に皿をコツンとぶつけて合図する。光ちゃんがゆっくりと皿に口を近づけるのを見届けたら今度はプリンの母親である白猫ミーの番だ。元々野良猫だったが仔猫だったプリンと一緒に保護をした。彼女がいわゆる家猫になってからはぐんぐんと太り、勿論食欲旺盛だから皿を待ち構えている。

次は私の事が嫌いなシャム猫風のプリンだ。青い瞳だが片方の目が白い。私のことが嫌いな彼女は相変わらず一定の距離をとり此方の動きを観察している。私も緊張させぬよう彼女から遠いところに皿を置く。プリンが食べ始めたら今度は急いで飲み水用のボウル3つを手に取り水を入れ替える。ここまでで20分といつもより遅いタイムだ。猫のトイレの掃除は夕方だ。部屋を出たら顔を洗って出勤の用意。今日はまだまだ終わらない猫飼い女の朝のルーティンタイムトライアル。

ユメユメネボウスルコトナカレ。             

 

 

≪終わり≫

 

 

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