メディアグランプリ

“インスタ映え”は、もうやめた!


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記事:雪(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「内容は書かれていますが、何をどう考えたのかが書かれていません」
 
返却されたA4用紙の下に小さく書かれたコメントをみて、思考が止まる。
どういうこと?
 
28歳で2度目の大学生になった私は、実習前のスクーリングに参加していた。
「記録」を書く練習をする、という。
「記録」は一日の課題の達成度や疑問、反省をA4一枚にまとめたもの。実習指導者に提出し、毎日フィードバックを受ける。
「実習中は必ず上から下まで埋めるように!」
と先生は「とにかくびっちり書け」と強調して言った。
 
また書くのか……。
 
私が入学したのは通信教育部で、レポートを書かないと単位がもらえなかった。
在籍中の3年間で書いたレポートは45本。1本約2,000字。テストも含めたら合計100,000字以上は書いた。
そして実習でも、毎日書け、と言う。
いい加減うんざりしながらも、「A4一枚くらいは余裕でしょ」と思っていた。
そんな中、返ってきた評価が
 
「内容の記載はできていますが、そのことをどうとらえて、何を考えたかの考察がなされていません」
 
だった。
 
ショックだった。今まであんなに書いてきたのに。
評価も「優」とか「良」とか貰っていたから、自分の書く文章には自信があったのだ。
自分は書ける、と思っていた。
その自信を一刀両断されてしまった。
すっぱり切られたショックを引きずり、スクーリングは終わった。
 
数か月後から実習が始まって、いきなり壁にぶち当たった。
書けない。全然書けない。
なんで? レポートは書けたのに。一文も書けない。
あのコメントを思いだした。
 
「何を考えたのかが書かれていない」
 
やっと気が付いた。
実習は体験をとおして、教科書や本では学べないことを学ぶ場所だ。
だから体験して思ったこと、考えたことを書くしかない。
私が今まで書いてきたレポートは、教科書や文献にある考えを、さも自分が思ったかのように書いていただけだった。
授業で書いた練習もそう。先生や生徒が言った言葉をまとめただけだった。
 
誰かの言葉を切りとって、見栄え良く整えて。
 
“インスタ映え”はするけど、そこにあるのは自分ではない「誰か」の言葉の寄せ集めだった。
 
自分は、何を感じたのか。
自分は、なぜそう思ったのか。
自分だったら、どうするのか。
 
私、「自分」を主語して考えることをしてこなかったんだ。
 
愕然とした。
空っぽじゃん。
どう見られているかばかりを気にして。カッコばかりつけて、中身空っぽじゃん。
 
「自分の言葉」だ、と使っていた言葉は、本や映画や漫画やネットや音楽や、親や先生や上司や友達や、自分以外のどこからか拾ってきた言葉だった。
自分の薄っぺらさに笑えてきた。
あ~あ、大したことないな。あんなに自信あったのに。笑える。
誰かの力を借りなきゃ、何かを伝えられない。
……そうだよ、私、そんな大した人間じゃないんだよ。
もういいじゃん。今よりも「良くみせよう」としなくても。
もういいじゃん。綺麗に見せようと切り取ったり、整えたりしなくても。
そういうの、もうやめよう。
空っぽな人間だと気付いたのなら、ここから始めればいい。
これから自分で選びながら、一つずつ中身を詰めていけばいいんだ。
 
ふぁーっと力が抜けた。
すると、少しずつ言葉が出てきた。
そうか。「とにかく埋めろ」というのは、「カッコつけずに書け」ということだったのか。
薄っぺらくても、一文一文を積み重ねていくしかない。
書いて、言葉にしていかなければ、「自分の言葉」は生まれない。
こんなに地道な作業だったんだ。言葉にするって。
 
実習中の14日間、毎日何時間も机に向かってノートを書いた。
A4一枚を、上から下まで。
訂正印だらけで字も汚くて、読みづらくてボロボロだけど。
“インスタ映え”からほど遠いけど。
そのノートは、たぶん、ずっと捨てられない。
 
スマートに、クールに。
それが「カッコ良い」と思っていた。
そう思って生きてきた。
だけど、空っぽの自分に気づいてから、考えが変わりはじめた。
「カッコ良い」って物凄く地道な、カッコ悪い作業の積み重ねで生まれるのかもしれない。
一枚一枚、薄いA4用紙を重ねていくように。
ボロボロのノートを見て、そう思った。

 
 
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2018-06-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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