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女性社長が多いのは、座っているから


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記事:ほさか 梨恵(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
「梨恵、社長になってくれないか?」
晴天の霹靂とは、このことを言うのかというくらい衝撃的だった。
私より一回り以上年上の義弟に打診されたのがちょうど二週間前の日曜日。
そして就任したのが先週の金曜日。
なんと私は社長になった。
 
青森県は、ある調査によると女性社長比率が全国1位だとか。
色々理由はあるだろうが、県全体で平均寿命が短い、いわゆる「短命県」であることが要因として挙げられている。父親や夫が亡くなって、娘や妻が事業継承するパターンが圧倒的に多いのだという。創業社長や叩き上げ社長の割合はさほど多くはない。
 
と書いていると、まるで私の夫が亡くなったように見えるが、夫はいまだ健在だ。
ただ昨年病気を患ってしまったため、経営には耐えられない。
元々は夫が創業した会社であるため、ある意味、青森県でよくある事業継承パターンとも言えなくはない。
 
私は昨年、13年勤めた会社を辞めた。
長時間通勤に耐えられなくなったとか、仕事の先行きに不安を感じたからというのもあるが、一番の大きな理由は起業して、自分のやりたいことに集中したいからだった。
ひとまずは個人事業として昨年の夏に開業した。
昔からお付き合いのある企業の仕事を中心に一人でできる範囲で仕事を請けてきた。
今年からは大きな女性向けイベントの事務局を務めることになり、万が一を考えて、在宅勤務のスタッフを1人雇用した。
少し早いかとも思ったが、一人で仕事をしているとやはり病気で倒れた時にバックアップできないという不安が付きまとう。
実際、今年の1月に20年ぶりにインフルエンザに罹って、1週間業務がストップし、仕事を遅延させてしまった。やはり、バックアップは必要だ。
運よく知人が「在宅ならぜひやってみたい!」と言ってくれたおかげで、今は私とスタッフの2人体制で仕事をしている。
 
もちろん、いずれはこの個人事業を法人化したいという想いがある。
受託している仕事の他にも、興したい事業のアイデアも頭の中にたくさんあるのだ。
業務効率化のためのロボット作成代行や、コワーキングスペースと民泊を掛け合わせたコワーキングハウスの設立。更には社会人向けの学び直しを支援するビジネススクールの立ち上げ。
頭の中の動きに体と資金が付いてこないのがもどかしいくらいだ。
 
その矢先に起きた社長就任の打診。
「俺としては梨恵にやってもらえたらもちろん嬉しいし、親父や親会社も梨恵だったら良いだろうと言ってくれている」
「ただ、梨恵が起業して、そっちで頑張っているのも聞いている。だから強制はしない」
義弟は、私に判断を委ねた。
 
確かに、難しい話だと率直に思った。
自分で事業を成長させて経営者になるのとは、違う。
その会社は既に多くの従業員も抱えている。
パソコン一つあれば仕事ができる私の個人事業とは異なり、畜産の飼育に食品加工や販売を行っている会社だ。それなりに課題もある。
 
ノーと言えば、それまでだ。
別に誰も責めはしない。
義弟もダメ元で打診している。
 
けれど、断ったら、こんなチャンスは二度とこない。
そう頭の中で誰かが叫んだ。
「社長、やります」
 
「え?! 本当に良いの?」
義弟に何度も確認された。
「もちろん、一人じゃ心許ないので、支援はお願いしますよ?」
「皆には失礼かもしれないけれど、チャンスだと思ってるんです」
 
いずれ経営者として立つことは決めていた。
課題の多い会社かもしれないけれど、その目標がちょっと早くなったと思えば、たいしたことではない。
会社の商品は前から好きだったし、何より美味しいものには目がない私だ。
コワーキングハウスで地元の商品を取り扱いたいと思っていたのだから、そこで会社の商品も取り扱えばいい。
食品関係の友人もいるから、困った時にはアドバイスももらえる。
そうだ、これはチャンス以外の何物でもない。
 
青森県で女性社長が多いのは、「頑張り屋で面倒見が良い」女性が多いからだと見る向きもある。
確かに、親や夫が先に亡くなって、自分が支えなければというプレッシャーから、決断するというのもあるかもしれない。
けれども私の周りにいる青森県の女性社長を見ていると、悲壮感をもった人はあまり見当たらない。
むしろ青森県の女性社長は肚が座っていて、それでいて無理がないという表現が合っているように思える。
周りにそんな女性が多いから、きっと社長になってくれと言われた時に「やりましょう」となるのではないだろうか。
 
そんなわけで、私も女性社長の仲間入りを果たした。
まだまだひよっこ社長だけれども、いつか私にあこがれて経営者になったという人が現れてくれたらいいなぁと思っている。

 
 
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2018-06-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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