とても厄介で、美しい魔法
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
氏名:あまね(ライティング・ゼミ平日コース)
「敬語もなっていないし、お前は俺を馬鹿にしている」
「詐欺だよね。そこまでして製品を売りたいのか?」
心に残って、離れない言葉がある。
「あなたは背が高い、そして美しいの」
「あなたに足りないのはね、自信だけだよ」
心に残って、いつでも勇気をもらえる言葉がある。
言葉は、とても美しいもろ刃の剣だ。私たち
私たちを元気づけたりもできる反面、どん底に落とすこともできる。
そして、皮肉なことに、言われて嬉しい言葉よりも、辛くて痛い言葉の方がより頭にこびりついて離れない。口は災いのもと、とは諺とは本当によくできていると思う。まさにその通り。実態がないくせに、何よりも影響力があって、縛りがあって、厄介だ。
冒頭の言葉は、前職の時に実際に言われた。「自分は悪くないのに」「残業までして頑張っているのに」という言葉を飲み込んで、我慢した覚えがある。ただただ悲しくて、背筋が凍るような嫌な経験だった。
実際に、理不尽な怒りではあったし(補償範囲外の物を、どうして補償してくれないのか、というような問い合わせだった)、上司にはあまり気にするな、とも言われた。でも、最終的には私への個人的な攻撃へと変わっていったあのやり取りは、嫌なことに今もはっきりと思い出せる。
逆に、いい意味で心に残る言葉もある。背が高いことをコンプレックスに感じ、かわいいヒールを履けなかった私に、ホストマザーが言ってくれた言葉は今も私の宝物だ。何をやっても毎回毎回自信がなかった私に、友人がかけてくれた言葉も。今思いかえすと、「自信がある」と言って失敗するのが怖くて、「自信がない」とわざと自分に言い訳を重ねていた私の背中を思いっきり叩いて目を覚まさせてくれた一言だった。
私は、かなり口が悪い子供だった。悪い、というよりもきつかった。前に実家から私が小学生の頃に書いた作文がでてきたのだが、「口が悪いのをなおしたい」と書いてあって、思わず笑えてしまった。小さい時の自分、案外自分を分かっている。
主に兄弟喧嘩の時などは、「大嫌い」「死ね」のような言葉を特に考えもせずに使っていた。さすがに学校などでは使わなかったが、母にもよく「女の子なんだから」と言われていた記憶がある。
「何気ない言葉が、どんなに人を傷つけるのか」
それを考えるきっかけになったのは、18歳でアメリカ留学をした時だ。アメリカは、自由だけれど反面自己責任が大きい。当たり前のように、親や学校に守られていた学生時代とは比べものにならない程のプレッシャーがあった。
自分が今までどれだけ甘えていたか、何もしないで朝昼晩のご飯が食べられて、あたたかい布団で寝られること、着る物に困らないことが、普通ではなく特別なのだとはじめて知った。同時に、自分がどれだけ周囲の人に恵まれ、また支えられているのかを実感し、感謝の言葉を伝えるよう心掛けるようになった。
そこで自然と、「言葉」の重要性を少しずつ実感してきた。最初は英語もろくに話せないし、理解できなかったけれど、だからこそ余計に言葉で伝えないと伝わらない。よく考えれば「Thank you」も「ありがとう」も一言だ。いったもん勝ち、だと思って少しでもありがとうと思ったらそれを言葉にした。
ただ、ポジティブな言葉にすべてがポジティブで返ってくるわけではない。特に、社会に出てからは。社会にでると、「100%の悪意」を向けてくる人がいる。自分が悪くなくても、謝らないといけない時も。冒頭の話のように。
そして、べこべこに凹んでいる中に、一つ気が付いたことがある。もしかしたら、私も同じように言葉で誰かを傷つけているかもしれない、ということ。小学校の時、些細なことで喧嘩した友人に言った一言、もしかしたら先生に何気なく言った一言、クラスメートに何気なく放った言葉が、一番触れたくない部分に触れてしまったかもしれない。にこにこと笑っていても、実はすごく傷ついているかもれない。
その時、すごく怖くなった。同時に、自分の一言が誰かの邪魔になったり、誰かが何かに挑戦しようとした時の妨げには絶対になったりしてはいけないと感じた。
私は今、言葉を扱う仕事に就いている。自分の言葉が、少しでも人に元気を与えたり笑顔にできたらとても嬉しいし、そうでありたいと思っている。
私たちがはなつ言葉は、多分私たちが考えているよりも強力だ。何気ない言葉ほど心に残るし、それが誰かのきっかけになったりもする。
最後に、ここでぜひ心に残っている嬉しい言葉を思い出してほしい。そして、それを誰が言ってくれたかも。そしたらその人に連絡をとって、一言ありがとうを伝えてほしい。「ありがとう」は魔法の言葉だ。すごい癒し効果を双方にもたらしてくれる。
言葉は、使い方によっては誰かの一生の宝物になるから。
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