メディアグランプリ

拘束されるの大好き人間


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:木戸 古音(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「ああ、拘束に身を任せたい」
私の回りにはそう言う類の人間がわんさか居ます、
って言われると
「何それっ」て一斉に引かれてしまいそう。
実は、わたしも当初引いてました。
「別に怪しげな世界ではないよ」
いぶかる私に知人は平然と答えるのです。
知人が音楽療法を受けての話とか。それによると
「音楽の様々な効果の中に、拘束と言うことがあるんや」
といわれたと。
「なにそれ、拘束ってどう見たって否定的な意味しかないやん」
と私。
みなさんもそう思いませんか。
音楽、ここでは一応クラシックの生演奏を念頭においている。
彼はいう、
「ひとたび音楽の演奏が始まれば、その場を離れず、
他のことはしないで聴かなければならない、そのことを言うのだ」と。
「生演奏の場合、音楽に拘束される。そのことで、他の事から一切離れ、今この時間を音楽とだけ共に過ごす。その結果、そこに効果が生まれるのや」
と。
この話を聞いて、考えてみればそんな時間があるということは
生きていてなんと幸せなことだろうかと思った。
「拘束されている間は今晩のおかず何やろな」とか
「今度の日曜何やろうか」とかを
一切考えることなく音楽に集中する。
その間でも俗世間の雑念から超越できることになる。
ストレスが少しでも緩和される。
少なくともその時間帯だけでも我を忘れて没頭できる。
 
私は、現在絵描きをしている。
元々は音楽をやっていた。
オーケストラに所属していた。
だから音楽を通じてついつい考える習慣がついてしまった。
美術に関しては芸大美大も出ていない
いわばアウトサイダーだ。
 
なので音楽から絵描きに転じたときにどうしても
理解、知識のある音楽の観点からものごとをみてしまう。
そこで一番問題になるのが
音楽は時間芸術だということです。
美術は時間芸術だとは言わないですね。
みなさんはどう思われますか。
 
しかし私はあえて美術も時間芸術とみるようにしている。
音楽の醍醐味を一言で言うと集中力。
指揮者小沢征爾のいうコンセントレーションと同義語だと思う。
この面倒くささがクラシック音楽の嫌われる要因の一つだと思いませんか。
人は言いますね、こんなふうに
「クラシックはかたぐるしい。やたら長いしな。
わけもわからん。難しい」
と。マイナスの評判ばかりが目立ちますね。
「いやはや、まったく持って世間の言うとおり。恐れ入りました」
と言わざるを得ない。完敗だ。
すると私ら音楽好き人間は変人なのでしょうか。
その抽象芸術ゆえに、わかりずらいとも言えますね。
 
いったいに集中力を必要とするものを一度挙げてみると
読書、勉強授業、音楽
スポーツ運動、危険な仕事
ライティング
映画鑑賞(映画館で)
座禅、お茶
宇宙船の発射時
おとっとと、それこそキリがないですね。
はて、いまざっと並べたのですが
「映画をみる」「スポーツ運動」は一応問題ないですか。
その他に列挙したものたち、緊張感、集中力を必要とするものは、苦手やな、嫌いやな、とっつき悪いっていう人が多いですかね。
かたぐるしい、しんきくさい、しんどいとかの理由で。
例示したのは言い換えれば心も身体も
拘束を伴うものばかりではないですか。
 
たとえば音楽。
サガンの名作「ブラームスはお好き」なんてとんでもないでしょう。
音楽の好きな人でもブラームスの渋さ加減は忍耐力、集中力と辛抱が必要。
東北人が言ってましたね。
「ブラームスは東北の人間に好きな人が多いよ」と。
ブラームスは確かにスルメみたいなもんで噛めば噛むほど味が出てくる。
美味しくなる音楽。
だから粘りがあり、辛抱強い東北人に愛されるというのだ。
 
私はこの拘束、集中力、緊張感を絵を描くことでも経験している。
私の場合、まちのクロッキー会に参加したことから絵の道が始まりました。
このクロッキーつまり早描き。人体モデルを1分から7分程度で描きあげる。
そんな嬉々とする「訓練」をのべ2万人のモデルを描くことでやってきました。
緊張感の中に、ものすごい集中力を要求されます。
これを2~3時間やるとドバーっと疲れる。だがこんなに充実した疲れはないのです。
まさにそう。作品という成果が眼の前にあるのだから。
モデルさんと描き手との戦いでもある。
まさにクロッキーは格闘技。
「描けるものなら描いてみて」と武器も無し、一糸まとわぬモデルが挑み
「よし、受けて立とうじゃないか」と木炭、パステルで迷彩色になった素手で挑む。
まさしく無鉄砲。
キャッチボールというより、やはり無血戦。
こんなに愉快な疲れ方、集中、緊張感はない。
 
音楽と言い、画作といい、わたしは日々こんな愉快な拘束をよぎなく、
否、喜んで拘束されようとしている。
ライティングも週ごとに課されるめんどくさいが楽しみな拘束、集中力。
今日も、ライティングという座敷牢の独房に自ら望んで囚われん。

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2018-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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