メディアグランプリ

ずっとソロになりたかった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:森脇 千晴(ライティング・ゼミ平日コース)

「女 ひとり旅」
「女 ひとり飲み」
時々、このような検索をかけることがある。

「だから結婚出来ないんだよ」
そう言われても仕方ないが、私は、ひとりの時間を愛している。

学生時代、学校から帰ると家には必ず専業主婦の母がいた。
両親が共働きの、いわゆる鍵っ子たちはテーブルに置かれた小遣いでおやつを買いに行くらしい。
鍵っ子たちからは、毎日お母さんが用意してくれるおやつを羨ましがられたが、人間ないものねだりである。
自分で家の鍵を開け、好きなおやつを選び、親が帰ってくるまでの時間を1人で過ごす彼らが、なんだかとても自立しているように見えて羨ましかった。
だから、たまに「○○へ出かけています。○時頃帰ります」などと書かれた置手紙を発見した日には、大げさではなく、飛び上がってガッツポーズをした。
「やった! 1人だ!!」
別にやましいことがしたかった訳ではない。
朝起きて、学校に行って集団生活を送り、家に帰っても誰かがいる生活。
ほんの少しでいいから、誰にも干渉されず1人になれる時間を子どもながらに欲していた。

「自分は、この先、1人暮らしを寂しいと感じることがあるのだろうか?」
大人になった私は、あるとき、そんな疑問を抱いた。
何年か1人暮らしを続けている今も尚、私は1人暮らしがとても気に入っている。
数年前に飲み友達の1人(男)が30代半ばにして突然1人暮らしを始めると言い出した。
自動的に、サラリーマンと真っ暗な部屋、味気ないコンビニ弁当を連想した。
「一気に結婚したくなるモードに突入やで! それは!」と興奮気味に言う私。
「いや……そんな弱っているときに結婚を決めたくない……」と力ない笑顔で返された。
ちょうど彼に「ちょっといいな」と思っている女性が現れた頃だった。
その女性が正式に彼女となり、恋愛スイッチのボタンが押された頃、彼は突然、東京への転勤を命じられた。
「遠距離が不安だ」と繰り返しながら東京に行った彼。
その後も、他愛もないことで、私たちは何かと連絡を取り合っていた。
飲み友達になってから、そんなに月日は経っていなかったが、1回LINEをし始めると、会話をしているように、ポンポンとやりとりが続く友達だった。
そんなある日、いつもの何てことのないLINEの中でそれは起こった。
「実はな、俺結婚してん」
なんとなく、勘付いていた。
だけど、なんだか申し訳なさそうに言っているように感じるのは気のせいだろうか?
先越してしまってスマン! みたいな……?
「うん。そろそろちゃうかなーと思ってた」そう返信した。
「転勤中に入籍するなんて弱ってた……」

寂しくて? 
誰かにいて欲しくて? 
結婚決めちゃいましたってことですか??
(それはそれで、ちょっと羨ましいんだけど……)
あまり結婚願望が湧いてこないことを、自分でも不思議に思い始めていた頃だった。
彼のように一気に結婚願望が湧き上がるような「1人暮らしトラップ」に自分もいつか、かかるのだと思っていたのかもしれない。

周りの女友達が結婚し、子育てが始まるのと同じくして、おのずと1人で行動することが増えていった。
「ソロ活動」が本格化し始めたのである。
初めて1人旅をしたとき、予想以上の楽しさと快適さに「1人旅を毎年の恒例行事にするぞ!」と決意したことを覚えている。
1人旅だけではない。
日常においてもソロ活動の幅はどんどん広がっていった。
映画や買い物も1人の方が好きだし、1人で飲みにいけるお店も出来た。
最もハードルが高かった「ひとりカラオケ」だって、お酒の勢いに任せて、実はもう2回ほどクリアしている。
寂しさを感じるどころか、どんどん「おひとりさまライフ」が快適になってきているではないか……。

「人間には3つ目の場所が必要だ」というような話を聞いたことがある。
1つ目、2つ目の場所は「家庭」や「職場」。
3つ目は、その2つとは異なる場所。
つまり「家でも職場でもないどこか」。
趣味の場だったり、飲み屋だったり。
そんな場所のことを「3rd プレイス」と言うそうだ。

「1人になりたい!」と切望していた頃の私が欲しかったのは、3rd プレイスなのかもしれない。
学校とも家にいるときとも違う私に戻る場所。
もっとも素に近いであろう自分に寄り添う時間。
常識とか世間体とか人の目とか、ついつい余計なものがくっついてしまっている、いつもの自分との切り離し作業みたいだなと思った。

とは言え、ソロ活動もやり過ぎは良くないと分かっている。
何事もバランスが大事。
「一緒に旅行に行こうよ!」 先日そんな誘いを受けた。
夏好きな私は、秋の気配を感じる頃、決まっていつもセンチメンタルになる。
秋の旅行……ちょうどいいかも。
この誘いに乗ってみようかなと思っている。
「ソロ」じゃない自分も、時には必要だ。 
***

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2018-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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