メディアグランプリ

私はスポンジ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【9月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Ryoko (ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
私の心と身体はまるでスポンジだ。
 
昨年の6月からホットヨガを始めた。
毎日体がすっきりしない日が続き、病気ではないのだけれど元気でもない。すぐ風邪をひいてしまい、なかなか治りきらない。
これは体力が落ちてるのかな、30代後半ともなれば代謝も落ちていく一方だし、何か運動を始めたほうが良いのかもしれないな、と思ったのがきっかけだ。
 
まず、体験レッスンに申し込んだ。自宅より徒歩20分程度のところだ。
予約の日が来ると少し緊張しながら向かった。カウンターで必要事項を記入すると、水のペットボトルとレンタル用のバスタオルを受け取り、体験者用のTシャツ、短パンに着替えるとスタジオに案内された。
 
レッスンが始まると、床にヨガマットをしいてインストラクターの声に従ってポーズをとっていく。室内の湿気と温度でポーズをとるごとに汗がぽたぽたと体から垂れていく。無理しなくていい、自分のできる範囲で、など声を掛けられながらインストラクターの3分の1程度の体のひねり、でも自分にとっては精いっぱいのポーズをとっていく。
 
1時間、レッスンの終わりには仰臥位のポーズで手のひらを上に向けてシャバアーサナという安らぎのポーズをとる。深呼吸をしながら体を緩めていく。暑かった室温もインストラクターが少し下げてくれてリラックスしやすい状態に環境を整えてくれる。
5分程度リラックスした後はインストラクターよりヨガの教えや、ポーズのポイントなどの話があり、両手を合唱してインドの言葉でありがとう、「ナマステ」といいレッスンが終了する。
 
終了後今後について考えた。継続してこられないとお金もったいないしな……。どうしようかな……。
 
なんて思ったものの、終わった後の爽快感はたまらなく、契約を結んでいた。
 
うん、始めてよかった。頑張ろうと思っていた。体力つけて代謝をよくして素敵な30代女性になるつもりだったのだ。その時までは。
 
東京にはおいしいラーメン屋さんがたくさんある。いやもちろん全国においしいラーメン屋さんはたくさんある。しかし数は東京にはかなわないだろう。
各駅にいくつもラーメン屋さんを見つけることができる。ヨガのスタジオ近くも例外ではない。
 
ホットヨガのレッスンを受ける前に注意点として、食事は2時間前までに済ませましょう、というものがある。内臓に負担がかかってしまい、気分不快となってしまう可能性があるからだ。一度食後にレッスンを受けてしまったのだが、やはり足を持ち上げたりするポーズによっては少し気分が悪くなった。そのため食事はせずにレッスンに向かうことにしていた。
 
ある平日の昼過ぎのレッスン終了後、普段休日には行列のできるラーメン店がすごく空いているのを目にした。
「エ、なにあんなに空いてるの……」
休日に食べようと思ったら30分は待たなくてはいけないだろう。
 
お昼軽めだったし……、久しぶりに入っちゃおうかな。
 
食券を購入するとカウンター席に案内され、キンキンに冷えたお茶が出された。ヨガマットやら着替えやら荷物は多かったが何しろ平日、ランチタイムも少し外した時間でお客さんを気にする必要もない。半分ほどお茶を飲んでコップを置く。 
 
「はーい、お待ちどうさま」
 
豚骨ベースのスープが見えなくなるくらいもやしやニラなどの野菜がたっぷり炒めてのせてある。そこにぶ厚いチャーシューが添えてあって……。
まずはスープを一口。
 
「う、うまい……。し、染みわたる……」
&nsp;
さっきまで多量の汗をかいていたのだ。水分はミネラルウォーターで補給しているが、塩分までは到底補えていないはず。どんどん飲んでしまう。染みる、染みる、染みわたりすぎる。
まるで乾いたスポンジのように体中に染みわたった。こんなに体がスープを欲したことがいまだかつてあっただろうか。
そして麺と野菜をからめて時々チャーシュー。
あっという間に食べてしまった。それはもう、至福の時間だった。
 
美味しかった……。あ、やってしまった……。
 
ホットヨガの後の食事にも注意点がある。
ヨガの後は吸収が良くなっているため、栄養分がしっかりと吸収されるため太りやすくなるらしい。
 
さっき、とてつもなく体中に染みていった感じがした。吸収したってことだろうか。
まあ、今回はご褒美。次からは食事は軽めにしよーっと、とはいかなかった。
次のレッスン後も、体が覚えているのだ、あのとてつもなく美味しいスープを。
 
レッスンが終わると、パブロフの犬のごとくじゅるり……。とよだれが出てくる……ような気がした。
 
そして私はヨガの後ラーメン屋に行くことが常になった。
 
また、通っていたホットヨガのコースは全国のスタジオを使えるというのだ。気分やレッスンに合わせて最寄駅から、なじみのある駅などのスタジオでレッスンを受けた。
 
先述した通り、東京にはたくさんの美味しいラーメン屋さんがある。駅の近くならなおさら見つけやすい。私はいつしかラーメンハンターになってしまった。トマトベース、北海道のみそベース、あっさりしお、つけ麺。どれも私の体を隅々まで満たしてくれる。最高の1杯。
 
ラーメン屋さん、30代の女性のお客さんが少なくて困っていたら、スタジオ近くに出店してみるのはどうだろうか。いや、みんな意識高いだろうから、ヨガ後にすぐラーメンはしないかな……。
 
ラーメンのせい、とは言わないが、このような自分への甘さからか、私は1年で7㎏増えてしまった。スタジオの鏡には、ヨガを始めた当初より明らかにむっちりとした体つきの自分が写る。
しかし、私は後悔などしていない。もともとそんなに太っていたわけではない、はず。
きっとちょうどよくなったのだ。中庸だ。以前より元気になった気もしている。
 
何より1杯のラーメンにあんなに感謝の気持ちがわくなんて。本当に満たされた時間であった。そして1年以上たった今、ゆるゆるとレッスンを続けているが、ラーメンも我慢できるようになってきている。ヨガとラーメン、本当に至福の時間であった。ありがとう。
ナマステ。
 
こうして絞っては吸い、絞っては吸い、を繰り返した私の心と身体は替え時が来たようだ。
ホットヨガを始めたあの時も、自分の中のスポンジを替えた時だったのかもしれない。
使い古して新しいもの変えた時には、少し色や形が変わっていたりするように、私は新たにライティング、というものに夢中になっている。

 
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

http://tenro-in.com/zemi/57289

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2018-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事