男だってシンデレラになりたいんだよ。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【9月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:山田ミナ(ライティング・ゼミ日曜コース)
「ごめん、吉野家にひとりで入れる子とはつきあえない」
京都の東の果てにある大学の向かいの吉野家でお一人様牛丼を楽しみながら携帯を見ていると、そんなメールが入ってきた。
先週知り合った社会人の男性からのメールだった。
彼とは友人主催の合コンで知り合った関係で、周りを引かせるほど幕末の話で盛り上がり気が合ったので連絡先を交換したのだ。
着物の問屋さんをしているという彼はとても筆まめな人だった。
「おはよう! 昨日は楽しかったなー! また遊びに行こうな」「車買ったけど乗るヒマがなくてさびしい」「仕事が忙しいと、外食が多くなるんよね。料理はよくする?」「俺、片付け苦手やねん。部屋の掃除とかどうしてる?」「今日も仕事疲れたわ、癒しが欲しい、癒し!」「買い物行きたいなあ、どんな服好き? スカートとかはく?」「いつも藤井大丸行くんやけど、京都で男用に洋服のおしゃれなのって見つけようと思うと大変やんね」「今週末もイベントで忙し過ぎて遊ぶ時間がないわー早く会いたいわー」
一つ答えるとまた次のメール、どう返信しようか考えてる間にどんどん次から次にメールがやってきた。
接客商売しているとこんなにも人に興味を持てるものなんだろうか。『忙しい』と言う割にはずいぶん手をかけてくれているようだが、怒涛のメール履歴にため息をついていると同じゼミの友人が声をかけてきた。
「最近ずいぶん熱心に携帯見てるよねー! メール送ってもなっかなか返してこんと思ったら、その人にはマメなんやな」
なんだと? それを聞いて慌てて受信箱の怒涛のメール履歴をたどり友人からのメールをチェックする。どうやら見逃しているものがあったようである。
「今週末レンタカー借りて福井まで1泊合宿行くねんな? 出席確認今すぐ欲しいんやけど」
もちろんOKの返事を友人にした。忙しい社会人の手間をかけさせては申し訳ない。自分の楽しみは自分で見つけるものだ。
「私の王子はどこで寝ぼけてるのやー!!」
夜中の女子話会である。ネタは『恋したいけど恋ができる環境がない』である。
「周りにいい男がいない」「おしゃれも化粧も頑張る気が起きない」「なんで怒らせてばっかりのことするかな」「優しくしてくれたら優しくするのにさ」「ちゃんと大事にしてほしいよね。女子なんだからさ、男と一緒にしないでほしい」「人のこと“おっさん、おっさん”て言うけど酷くないおっさんにさせてんの自分らやろー!」「男なんやからはっきりリードしろやって」「わたしの可愛さを引き出す王子がほしい」
「お金持っててー、掃除してくれてー、料理してくれてー、かっこよくてー、スーツが似合ってー、仕事ができるけど私を一番大事にしてくれるひと!!」
その場にいる女子メンバー一同、「うん、うん」とうなずいている。
私も「うん、う……?」とうなずきかけて、ふと、頭をかすめた記憶があった。
・掃除ができて
・料理ができて
・性別を引き立たせる服装で
・周りが憧れるような見た目の
・仕事より自分を大事にしてくれる
そんな人を切実に求めている身近な人を。
そうか。もしかしたら彼はこう思っているのかもしれない。
「今の自分は何かがおかしい。何か間違っている。
こんな不得意なことを毎日やり続けるなんて効率が悪い。不得意なことをご機嫌で代わりにやってくれるような、ついでに周りに自慢できる彼女がいれば。自分を一番大事にしてくれるような人がいれば。きっと自分は『本来の良い自分でいられるはず』なのに。なにか自分をここから救い出してくれる一つのきっかけさえあれば、自分は本当の人生を楽しむことができるようになるはずなのに」
どこかのお城で悲しみにくれながら魔法で救い出してもらうお姫様より、お宝ザクザクの冒険に出ていくヒーローの方が絶対かっこいい。自分で旅立つと決めて、手強い摘を倒しながらレベルを上げて、心強い仲間を見つけて、何度もチャレンジを繰り返すストーリー。スリルとトラブルはめんどくさいけど、一緒に乗り越える仲間がいればそれが楽しくなってくる。誰かに何とかしてもらうのを待つより、自分が先にレベルを上げてしまえばできることも増えてくる。自分の楽しみは自分で創り出していくほうがいい。
合宿中もたくさんメールをくれた彼に、吉野家でお一人様を楽しんでいる画像を送ったらフラれた。どうやら彼は一緒に冒険を楽しめる仲間ではなかったらしい。
一緒にスリルとトラブルを味わえる仲間がきっとどこかにいるはず。それまではコツコツレベルを上げて、お一人様を楽しんでいこう。
ニヤニヤしながらメールを消して、次の授業の準備に行った。
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