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まゆ毛からまなぶ、完璧主義の罪と教え


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:縞隈 千代子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「縞隈さんは完璧主義者だからなぁ」
職場でこう言われるたびに、いつもチクッと胸にささるような感じを覚えていた。だって自分で「そうだ!」って全然思ってなかったんだもの。
 
わたしが考える「完璧主義」とは、身のこなしから仕事のクオリティまですべてにおいて100%完全な人を目指し、相手にもそれを強要するひと。
 
でもわたしは相手には「きちんと」や「完璧」なんて求めないし、じぶんの身の周りの世話だって、どちらかというと穴だらけのコンプレックスだらけ。
 
シャツを裏返してきているのに気が付かず、電車の中で「あの、タグが外にでてますよ」と声をかけられたり。仕事の資料作成時。熱中して作ったパワーポイントは、フォントがバラバラだったり、描いた図形の角の線がくっついていなかったり。
 
そんなことがしょっちゅうなわたしが、どこが完璧主義なのだ!? と反論したくなるのもわかっていただけるであろう。
 
まあ、しいて言えば少し凝り性なところはある、とは思っていたけれど、それはプロとして当たり前で、完璧主義とは違うと思っていた。
何度も提案書を書き直すのも、アイデアを練り直すのも当たり前。だって、クライアントには最高のアイデアを出したいから。もっと自分の考える最高に近づける。時間がかかるのは最高に近づくためのコストではなく、投資。
そして、そうはいっても間違いをおかしてしまう、自分の罪滅ぼしだと。
 
でも、今は、わたしの完璧主義な一面を受け入れている。
それを教えたのは、まゆげだ。
 
それはある日のこと。
「おうぅ、やっちまったー」
鏡にうつる自分のかおをみて、声にだしていってしまった。
 
わたしはまゆ毛にこっそりコンプレックスがあった。それは、まゆ山が高く、立派な山型を描いていること。左と右がそろえばそれはまさに山脈。そのまゆげと目がセットになると「めぢからが強い」と言われ、だまっていても「怖い」と言われる印象を作っていた。
 
だから少しでも優しい印象になるように、毎晩鏡に向かってまゆげを整えるのは、コンプレックスを忘れるおまじないそのもの。
 
だがそのときは、魔がさした。ふと「まゆげの全体の形を変えればもう少し優しい印象になるかな」と思い、思い切ってまゆ山を削ってみようと思ったのだ。
 
さあ手入れだ。と思って取り組んだ瞬間。手元がくるい、まゆげの後半が一部刈り込まれたようになってしまった。
 
いやいやいや。
あたしがなりたい印象は「もっと柔らかい」印象だったのに、なんで「ボクシングで打ちこまれました」みたいなまゆ毛になってるのだ。ああ、直さなきゃ直さなきゃ……、と右眉も左眉に合わせて手入れをしていたら、山脈まゆげから福岡のにわかせんべいみたいな立派な下がり眉ができてしまった。
 
そのまゆ毛とともにうつるわたしの顔は「困った」ような、「不幸そうな」顔。
 
メイクでごまかすことはできたものの、下がり眉への違和感が消えなかった。会う人すべてに、「あたし、まゆ毛失敗しちゃったよぅ」と自分から言いわけしていた。誰も、わたしのまゆ毛に対して何もいっていないのに。
 
まゆ毛整え失敗から10日ぐらいたった頃だろうか。20年来の友人と飲む機会があり、そのときも「やさしい顔つきに変わりたかったのに、まゆげがー」と会ってそうそう自分の失敗談を告白した。
 
友達は「あはは」と笑って聞きながらも、わたしに衝撃的なことをいった。
「でもさ、まゆげのかたちが変わっても、あんたの顔も印象もなにも変わってないからね、残念なぐらい」
 
え? といったら、友人は続けた。
「まゆげにどんだけこだわったからといって、力いれたからといって、あんたがほしいやさしい印象に到達するわけではないよね。優しい印象で見られたいっていうゴールと、自分の小さな美意識に執着するのは別のはなし」
 
まああんたは完璧主義者だからね、とビールを飲みながら友人は続けた。
 
完璧主義?! また出た! と思ったが、この友達のセリフは飲み会が終わっても心にひっかかり、一人帰り道もずっと考えていた。
 
たしかに、わたしがほんとに優しい顔つきになりたいんだったら、それこそ髪型や服装、顔の整形、ふるまいかたも必要になるだろう。
でも、そこまでしたいっておもっていない。まゆ毛で自分の顔、印象、ひょっとして人生すべてが変わったらラッキーともと思っていた程度。それなのに、まゆ毛という小さなパーツにこだわって、それさえクリアできれば自分のゴールに到達できるのだと思っていたんだなぁ。
 
ああ、これがわたしの完璧主義だよね、と言われたのと同じだ。
本当のゴールは「クライアントから許可をもらう」それだけ。でも、わたしのゴールは「自分の理想像である、プロと認められる」が本当のゴールと違ってたから、わたしがこだわるポイントに対して「そこ、力入れるポイントじゃなくて大丈夫だよ」といってくれていたんだなぁと。
 
だとしたら? 仕事で小さなことに全力投球しそうになったら、その小さなことが本当にゴールに到達するものなのか。そもそも、設定したゴールがほんとに目指しているものかを考えばいいのかぁ。
 
自分が間違っていたこと、これからどうすればいいかということがすとんと胸に落ちた瞬間だった。
 
まゆげは必ずまた生えてくる。メイク道具もある。何も怖いものはないのにまゆげのせいにしていた。わたしは思わずまゆげをなでた。こだわりすぎてごめん、でもありがとうと。
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2018-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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