メディアグランプリ

フラッと占いの館に入ってみた


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記事:Misaki(ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
「農業がやりたい? やめなさい! 今じゃない」
 
がーん!
 
なんとなく入った占いの館で、私は占いを受けていた。
そして、ショックを受けてフリーズしていた。なんなら泣き出しそうなくらいだった。
占い師のおじさんは、さっきまでジョーク交じりで占ってくれていて楽しかったのだが、
私が「農業がやりたいと思っている」と話したら、キッパリとこう言ったのだ。
 
いやいや、そんなに即答しなくてもいいじゃん!? 
あまりにキッパリと、しかも即答されて、もっと優しい先生がいい……と私の心は折れそうになった。
 
 
春に仕事を辞めてから、自分を振り返る中で、やっと見えてきたものが「農業」だった。
次に目指したいものが見つかったことに、私はワクワクしていて、それからずっとあたためていた言葉でもあった。それだけに、先生の容赦ない「切り」に、私は振り出しに戻されたような気持になった。
 
 
でも……と、私は何か言い訳を探す様に続けようとした。
そのとき、先生は続けて、こう言った。
 
「あなたは制作畑の人です。何かものづくりやデザインに関することに携わったほうがいい」
 
がーん!
 
な、なんだって……! さらにショックを受ける。
でもこのショックは、さっきと違って、後ろ向きなものではなかった。
 
私は昔から絵や音楽や詩が好きだった。
デザインにも興味があって、街を歩いて色んなものをみるのが好きだった。
ものづくりにも興味があった。
そういえば、高校三年生の頃、進路で迷ったときにデザイン関係の学校に行きたいと思っていたんだった、と思い出す。
大学へ進学してからも、卒業して就職してからも、今も、
考えてみればいつもデザインやものづくりをしたいと思っていた。
でも「自分には無理だ」といつも思っていた。
 
実のところ、農業というワードが浮かんできてからも、なかなか思い切れずにいた自分がいたのだった。
すぐにでも就農する道もあったし、友人から就職先の紹介も受けられる状況にあった。
やろうと思えばできたのに、それでも私はずっと迷って「農業」への道を決められずにいたのだ。
その迷いの理由は、「好きだったデザインを一度ちゃんと勉強してみたい」という気持ちだった。
 
まさか、気まぐれで入った占いの館で、こんな形で知ることになるとは……。
私は、自分の本当の気持ちを見透かされたような気持ちになり、落ち着かなかった。
 
「さっきも言ったけど、あなたには芸術の神様がついているんですよ」
 
はじめに、手相、生年月日、姓名を見てもらった結果、私には変な神様が付いていると先生は言っていた。
変な神様ってなによ? と一瞬不安になったがよくよく聞いてみると、それは「サラスバティ―」というインドのヒンドゥー教の神様らしい。日本では七福神の一人「弁財天様」にあたるらしい。
 
私はソワソワしながら、先生に伝えた。
 
「私、昔からデザインとか好きなんです。それと最近……ライティングゼミっていうものに通い始めたんですが……」
 
「グッジョブ!」
 
グーグーですよ、と先生は笑顔に戻り、穏やかな口調に戻って言った。
 
「素晴らしい。文章もまたものづくりの一つですからね」
 
嬉しかった。
好きなことをしていいと、言われたようだった。
この半年、先が見えずにもやもやしていたものが一気に晴れたように、心が軽くなったように感じた。
口角が上がって、自分がニヤケているのが分かった。
 
「あなたはまだ若い。これから十分時間はあります。がんばって!」
先生にそう励まされて、高揚した気持ちでお店を後にした。
 
外に出ると、空は暗くなっていた。
秋の風に吹かれて、歩き出す。
ワクワクして、仕方がなかった。
 
 
その出来事から二週間ほど経った今、振り返って考えている。
あの占い師おじさんの言葉は、どうしてあんなに響いたのか。
見ず知らずの人だし、私は最初は胡散臭いかもなあと、失礼ながら疑いつつ占いを受けていたのだ。
 
芸術神様の話をされても、「へ~そうなんだ。知らなかった」とその場で済ませることもできた。それでも自分は農業をやるのだ! と言うことだってできた。
でも、しなかった。
その代わりに私は、デザインを学び始めよう、と決めた。
 
今思うと、先生の言葉は、私が望んでいたものだったのだと気が付く。
私は、自分で自分に「それをやっていいんだよ」と言うことができていなかったのだ。
無理だと思い込んでいた。でもどこかで諦めきれずに悩んでいた。
 
そんな時だったからこそ「誰かに背中を押してもらいたかった」のだろうと思う。
フラッと占いをしに行ったのも、本当はたまたまなんかじゃない気がしてくる。
 
先生の言葉を私は受け取って、これからの道を決めた。
もらった言葉は、風のようだった。
今の私は、追い風に背中を押されているような気分でいる。
私はこれまで、風に身を任せて進むことを、ずっと怖がっていたように思う。
たとえ追い風が吹いていても、考えて考えて、悩んで立ち止まり、ずっと前に進めずにいた。
 
でも今は、この風に思い切って乗ってみようと思っている。
 
そして、そんな風に思っていたら、つい先日ライティングゼミで知り合った方から、オススメのwebデザインの学校やサイトを教えてもらったことで、次のスモールステップが見えてきた。
もっともっとこの風に乗って、行けるとこまで行ってみたい。
占いの館にフラッと入ったら、私は背中を押されて進み出していた。

 
 
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2018-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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