人は誰でも優勝できるのか?~人生における優勝の正体~
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:原雄貴(ライティング・ゼミ平日コース)
歓喜の瞬間だった。
遂に、長年応援し続けたプロスポーツチームが優勝した。
世間から優勝には程遠いといわれていた、あのチームが。
そのチームのファンになったのは、僕が高校生の時だった。
夏休みのある日、僕は父に連れられてそのチームの試合を観に行った。
僕がその試合を観た年は、チームの本拠地のスタジアムが新しく建てられたばかりで、場内はきれいに整備され、おいしそうな料理やスイーツを提供するお店もたくさんあった。
そして、何よりも僕を興奮させたのがスタジアムの熱気だった。
当時、リーグ内でチームは下位であったにもかかわらず、スタジアム内は応援するファンでいっぱいだった。応援の仕方も熱狂的で、チームが得点すれば地鳴りのような歓声が耳に飛び込んできた。あれだけでどれだけ耳が興奮しただろうか。
興奮していたのは耳だけではない。目も興奮していた。
次々に飛び込んでくる選手たちのプレーに加えて、一喜一憂するファンの表情。
意識せずとも食い入るように見ていた。
「ああ、おしい!」
「審判、今の判定は間違いじゃないのか」
「やったー!」
気がつけば、体全体が興奮して自分も声を出して応援していた。
このチームの試合を観たのは初めてなのに。
このチームにどんな選手がいるのか、このチームが今何位なのか、とにかくチームのことなんか何も知らないのに。
僕は、その日のうちにチームに一目ぼれしてしまった。
ファンになってからは、チームの歴史から勉強し、選手の名前や背番号なども覚え、暇があれば試合結果もチェックするようになった。
しかし、ファンになるとどうしても欲しいものがでてきた。
それは、チームの優勝だった。
僕が応援していたチームは、当時リーグの下位の常連で、優勝なんて考えられないといわれていたチームだった。実際、僕がライブで観戦した試合のうち、最初の4試合は全て負けていた。実家から試合があるスタジアムまでは遠くて、高校生の頃はライブで試合を観戦できる機会が年に1回しかなかったのに。
観に行く度に負けるチームを数年見続け、ファンを辞めようかと思ったこともあった。
それでも、この思いだけは消えなかった。
「死ぬまでに1度でいいから、このチームが優勝するところをみたい」
すると、ある年を境にチームは徐々に上向きはじめ、数年後にはとうとう優勝するのではないかという噂までたつようになった。
チームの優勝が噂され始めた年、僕は「優勝」という言葉をよく耳にするようになる。
あまりに多くこの言葉を聞くうちに、僕にはある疑問が浮かんできた。
「優勝って、どういう意味だろう」
平たく言ってしまえば、一番になることだ。でも、果たしてそれだけだろうか。
優勝するには、たくさんの練習と苦悩、努力、心の支え、応援してくれる人……。とんでもなくたくさんの要素・要因があり、それらの結晶が優勝なのだろう。
だとすれば、人は誰でも人生の中で優勝を経験しているのではないか。
毎日家のお手伝いをして、何気なく褒めてもらった時。
なかなか分からなかったことが、何かをきっかけに理解できた時。
必死に勉強し続けて試験に受かった時。
何も分からないところから始めて、仕事で成果を出せた時。
これらの「時」を迎えた瞬間、喜びや安堵の大きさは様々だけど、人は優勝するんだと思う。優勝した瞬間の「よっしゃー」という思いやガッツポーズはどんなおいしい料理やお酒にも劣らない味がするだろう。優勝の「時」を迎えるまでには、多かれ少なかれ辛かったことや応援してくれる人などの優勝の要素・要因があるはずだから。
そして、こういった大小の優勝がいくつも積み重なって、人の人生ができていくのだと思う。もっといえば、優勝があるからこそ人は頑張れるし、生きていける。
これは天狼院書店のゼミで教えられている文章を書くコツにも例えられる。
ABCユニットと呼ばれるものだ。
ABCユニットは、文章を面白くする不思議な作用を発揮するものだという。特に文章が長くなれば、このABCユニットはいくつも文章の中に散りばめられ、人が飽きない文章ができあがる。
まさに、人生で経験する優勝はABCユニットともいえる。
何度も優勝という名のABCユニットがやってくることによって、人生は面白くなるし、次を目指して生きていける。
果たして何歳まで生きられるのか皆目見当もつかない人生の中で、僕らはどれほど多くの優勝を味わえるだろうか。それは人によって数が違うだろう。それは当然のことだと思う。
でも、生きてさえいれば優勝は必ずくる。
この優勝の機会だらけの世の中で、無駄になることなんてない。
応援していたチームが優勝した瞬間、他のファンの人たちと歓喜に浸りながら、僕は泣いた。
「応援してきてよかった。生きていて良かった」
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