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尿管結石の石が、ぼくに教えてくれたもの


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:鈴木伸貴喜(ライティングゼミ木曜コース)
 

——なにこれ。
朝、目が覚めるとすぐに、自分の左わき腹から下腹部にかけて、なんとも形容しがたい強い痛みがあることに気づく。周期的なリズムとともに、どんどん強い痛みに変わっていく。
 

——尋常じゃない。
 

すぐにタクシーを呼び、なんとか近くの大きな病院の救急外来に駆け込んだ。この頃には一人で立っていることがやっとの状態だった。
激痛と嘔吐を繰り返しながら、なんとか診察や検査を受けて、出された診断は、尿管結石。
 

皆さんは、尿管結石という病気をご存じだろうか。
さまざまな病気のなかでも「3大激痛」と呼ばれている病気の一つであり、「七転八倒の苦しみ」と表現されるほどの強い痛みが特徴である。
 

その強い痛みは、病名からやや想像できるが、尿を作る臓器である腎臓から尿道までの尿の通り道に石ができることによって、引き起こされる。
 

このように説明すると、まるで石が臓器や尿道内を移動するときや、組織にぶつかるときに痛みが起きるように思われるかもしれないが、さにあらず。
 

石により尿の通り道が塞がれ、尿が腎臓に逆流することによって、腎臓が膨張することで起きると言われている。
鋭い痛みではないのだが、モヤモヤした感じの、しかしどうしようもない程に強い痛みなのだ。
 

「はぁ……はぁ……、あ~いたい!」
人目もはばからず声が出てしまう。病院の待合室のベンチに普通に座っていることができず、一人のたうちまわるぼくの様子をみて、近くに座っていた他の患者さんがそっと離れたベンチに移ったことを、おぼろげながら覚えている。
 

診察室で医師から「これは石がおしっこと一緒に外に出るのを待つしかないんです。だから食事管理と適度な運動、あとたくさんお水を飲んで下さい、1日2リットルくらい」と言われ、尿管結石についての小冊子を渡された。
 

「え、そんなに不摂生してないよ……体脂肪率11%ですけど。まぁ少し運動不足かもしれないけど。水2リットルは無理……」
帰りのタクシーのなかで、そんなことを思った。坐薬で痛みをしのぎながらも、時折り左わき腹が痛んだ。
 

自宅に帰って、妻と話をした。
医師から言われたことを妻に話すと、意外にも妻は意に介さないような態度で「そうかもしれないけどさ、体質だってあるよ。わたしの知り合いで、すっごいこだわって無農薬野菜を作ってる農家さんがいるんだけど、尿管結石になったらしいよ」
 

「えーそうなの!!」
あの野郎、と心の中でさっきの医師にツッコミを入れたくなった。
緊急外来で診察してくれた医師も、渡された小冊子にも、判を押したように医学的な見解を言われた。もちろん治療は必要だし、専門家の意見や生活習慣を放棄しようと思っているわけではない。
 

しかし調べてみると、尿管結石の原因はほとんど分かっていないことも事実だった。
不摂生かもしれない。運動不足かもしれない。体質かもしれない。そして、そのどれでもないのかもしれない。
 

尿管結石の痛みから解放された翌日、布団の中でふと考えてみた。
ぼくが尿管結石になった理由は何だろう?
 

心と体の専門家、カウンセラーとして有名なおのころ心平さんは、このように言っていた。
病気には、そうならざるを得なかった理由があります。
その理由を丁寧に探り、自らの病気と対峙し、克服していくと、病気が治ってしまうだけではなく、その人本来の自分らしさを取り戻していくんです。
 

尿管結石の石は、ぼくにどんなことを伝えたいのだろう?
 

そのとき、ふと思った。ぼくはいま、人生の岐路に立っている。
育休を取り、妻や子供たちとの育児・家事がメインの生活をしていると、これまでのバリバリ働く会社員生活が当たり前だと思っていたことも、思い込みだったことに気づく。環境が変われば、見える世界も変わる。
 

ぼくは本当は、どう生きたいのだろう?
 

育児の合間、自分が気になったセミナーや学びの場に行ってみると、これまで出会ったこともない、さまざまな価値観を持っている人や、大好きなことをして生きている人とも出会った。
そんな仲間たちとときに悩み、ときに励まし合い、ときに夢を語り合う時間が宝物のようだった。
 

少しずつ、自分の内側にある意思や欲求が形づくられてきていると感じた。
 

そしてそのとき、気づいた。
 

そうか。
尿管結石の石は、ぼくを悩ませる諸悪の根源じゃない。
ぼくの中から生まれてきた、意思なんだ。
そして、本来の自分でいたいという欲求そのものなんだ。
 

すすむ道を変えたいのかい?
 

尿管結石の石は、ぼくにそんなふうに語りかけて、教えてくれたような気がした。
 

誤魔化しはきかない。
ならば、これからは自分に正直に生きよう。
 

自分の内側で少しずつ形づくられてきている、やりたいこと、なりたいものに向かって、すすんでいこう。
 

***

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2018-09-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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