北海道地震と人気のコーンパン
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記事:古川 馨(ライティング・ゼミ特講)
早朝の新千歳空港。
「繁忙期は過ぎているとはいえ、今日は人が少ないな」
駅から出発ロビーへと向かうエスカレーターに乗りながら、そんなことを考えていた。
エスカレーターを上りきると、ロビーへは行かずにまっすぐ、とあるお店へと向かった。
お店の名前は「美瑛選果」。
北海道土産として有名なコーンパンと豆パンで評判のお店だ。
前回買いに来たときは買えなかった。
早朝の開店前だというのにすでに20人近く並んでいて、コーンパンは売り切れ。
豆パンだけギリギリ購入することができたのだった。
私の後に来た人は、
「もう10回以上来ているけど、まだ一回も買えたことがない」
と悔しがっている。
まさにタッチの差だ。
焼き上がりの時間とタイミングが合わないと買えない。
お土産としては超激レアアイテムとなっている。
そんな「美瑛選果」だが、今日は店の近くに来ても行列は見えない。
あれ?今日やってないのか?
と思って正面に回り込んで見ると列はある。
しかし、たった2名だった。
珍しい。
1番目に並んでいたご婦人も、
「普段はもっとたくさん並んでいるのに……地震の影響かしらねぇ」
と驚いていた。
北海道に来る人が少なくなっているのだろう。
焼きたてのコーンの甘い香りがする。
うーん、美味しそうだ。
激レアのコーンパンをまんまとゲットしてウキウキしながら空港内を歩くと、黄色いシャッターが目立つのに気がついた。
ここって何があったっけ?
そう思いながら、3階のラウンジへ続く中央のエスカレーターへ向かう。
吹き抜けになっているホールから3階を見上げるとここでも黄色いシャッターが見えた。
お店をしめているところが多いのだろうか。
いや、もしかして3階全体、シャッターが閉まってる?
エスカレーターに近づくとロープパテーションがしてあるのがわかった。
やはり3階は封鎖しているようだ。
張り紙がしてある。
地震の影響によりスプリンクラーが故障。
復旧の目処が立っていないようだ。
3階の飲食店フロアが全滅。
そして同じ階にあるラウンジも使えないことがわかった。
「あらら、行くとこなくなった」
ここにも地震は爪痕を残しているらしい。
9月6日に起こった北海道地震。
地震によって発生した全道規模の大停電は、震災から2週間近く経った今でも街の至る所に影響を及ぼしている。
コンビニは空きが目立つドリンクの冷蔵ケースが並び、これまで見かけなかったパンで商品棚が埋め尽くされている。
牛乳などの乳製品は姿を消し、卵や納豆も品薄状態だ。
電気店やホームセンターでは電池や懐中電灯、モバイルバッテリーなどを抱え、レジに並ぶ人が目立つ。
他にもオーディオコーナーで、手回し充電式のラジオが売り切れ続出。
防災関連コーナーが大きく設置され、人々の関心を寄せている。
そして、ネットでも防災関連グッズの完売が続いているようだ。
北海道全体が停電すると言うインパクトは大きかった。
東日本大震災を経験してさえ、防災意識がそれほど高まっていなかったと感じる。
ある意味対岸の火事だった。
自分自身が被害にあっていないだけに深く考えていなかったのだ。
時間が経つと忘れてしまい、備えることをおろそかにする。
ニュースやネットで、大きな被害が報じられれば、その時は「大変だ」と思う。
それでもどこか他人事なのだ。
いつか自分にも降りかかるかもしれないとは、一ミリも考えていない。
心のどこかで自分には関係ない。
自分だけは被害にあわないはずだ。
きっと自分は大丈夫。
そんな風に考えてしまっていたと思う。
ビジネスでだってそうだ。
同僚が大きなミスを犯した。
プロジェクトが失敗した。
お客さんとトラブルになった。
本来なら、どれもいい教訓になるはずだ。
でも直接関わっていなければ、気にしないに違いない。
あーあ、やっちゃったね。
そう思うだけで、後日、自分も同じような目に会うかもしれないからと
注意を払うことをしない。
ちょっと意識するだけ、想定しておくだけできっと結果は変わったはずなのに。
自分が体験したことだけでなく、見聞きしたことも自分ごととして捉えることができたなら、もっと自分の世界は広がるのかもしれない。
そんなことを考えていたら、焼きたてのコーンパンの香りが食欲を刺激したらしい。
ぐうぅぅぅ
とお腹がなった。
閑散とした空港ロビーに、お腹の音が響いた気がした。
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