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メディアグランプリ

明日の私はミランダ・カーかもしれない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:河野裕美子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 高校に入学して早々に、靴箱が壊された。
 明らかに故意に破壊されていて、壊されたのはその靴箱一つだけであった。
 私の靴箱ではない。私の中学からの友人、なっちゃんの靴箱だった。
 入学早々なのだ。そう思いたくはなかったが、考えられる原因は「なっちゃんが超絶かわいいから」しかなかった……。
 
 「こんな子この世にいるもんかしら?」なっちゃんに初めて会った時の感想だ。
 色白で、髪の毛の地毛が茶色がかっていて、大きくはないけど、つぶらで黒目がちの瞳の少女。「お人形さんみたい」とはこのことだったのか! と、もはや感動した。
 幼なじみが派手目の友達だったようで、小学校の頃からちょっと有名だったらしい。
 私も初めは近寄り難かった。
 とは言え、本人は至って真面目だったので、同じ部活に入ってからは、友達と言える仲になった。
 なっちゃんは、超絶かわいいばかりではなく、スタイルも良かった。細身なのに胸が大きかった。
 性格も、話してみればさばさばしてるし、付き合いやすかった。
 一人っ子だったので、両親にも溺愛されていた。
 運動神経もよい方で、足も速かったし、勉強はトップクラスだった。
 要するに、完全無欠の美少女だったのだ。こんな子この世にいるもんかしら?
 私はなっちゃんが大好きだった。
 かわいい子が好きなこともあるけど、嫌いになる理由がなかった。
 表向き、なっちゃんがいじめられることはなかった。
 いじめたら、100パーセント妬みなのがばれるし、年上のヤンキーお兄さん達から絶大な支持を得ていたなっちゃんに手を出すことは、大変度胸がいることだからである。
 でもこうして、ちょっとした嫌がらせはあったのだ。
 
 ひどい時は、なっちゃんが援助交際をしているとさえ噂された。
 本人の耳にまで入るほど噂が広められたが、当の本人は、それが自分のこととは思わずに、「援交してる子いるんだってー」とのほほんと教えてくれた。
 それを聞いて、私は、すごくすごく憤ったのだった。
 
 なっちゃんがかわいいのは、なっちゃんが悪いのではない!
 なっちゃんが両親に溺愛されているのは、なっちゃんが生まれる前に、お母さんが二度も流産しているからだ。
 私は、なっちゃんが、スタイルを保つために姿勢に気をつけたりしていることも知っていたし、試験の2週間も前から、夜遅くまで勉強をしていることも知っていた。
 なっちゃんは、何もしなくて完璧なわけじゃないのだ!
 なっちゃんを貶めたからって、自分がかわいくなるとでも思っているのかー!
 
 でも、なっちゃんの靴箱を壊した子は、そんなこと分かってたのかもしれない。
 
 多少本人の努力があるにせよ、能力の格差は生まれながらのもの。
 なぜ天はあの子に二物も三物も与えるのに、私には何もないのか。
 人それぞれとか、誰にでも良いところはあるだとか、そんなの気休めでしょう?
 付き合う人を選ぶなら、顔か? スタイルか? 性格か? どれにしたってかなわないじゃないか。
 薄暗いところで隠してきたそんな気持ち。私にも、ないわけじゃない。
 なっちゃんがうらやましかった。ただそれ以上に、彼女が好きだっただけで。
 
 書店で出会った話題の一冊。
 この私は、「人間スーツ」なのだそうだ。
 この世界観に納得できたら、もう誰もなっちゃんの靴箱を壊さなくていいのだ。
 いやもう、あなたはすでに「なっちゃん」かもしれないのだ!
 
 物理学の世界では、「あの世」があるのは常識だそうである。
 別世界があるのは分かってる。でもそこへの入り口が見つかっていないのだそうだ。
 アインシュタインが「相対性理論」をとなえるまで、いや、今だって多くの人が「時間は平等だ」と思っている。
 そして、その流れは過去から未来へ向かって一方通行だと思っている。
 でも、物理学からしたら、そうではないというのが、前述の話題の一冊「悪魔とのおしゃべり」に記してある。
 詳しい内容は省略するが、実は時間の流れは一方通行ではなく、小間切れの層なのだという。だから、「昨日」が昨日あったのかも、今日の続きの未来があるのかもわからないのだ。
 人間の体は、人型のスーツのようなもので、そこに記憶だとか性格だとかが刻まれ、中身の魂は、入れ替わることができるという。
 つまりは、中の魂は、いろいろな人間を経験できるけれど、その記憶は人間スーツに刻まれるので、次のスーツに入った時は、覚えていないということだ。
 しかし、「何だか懐かしい感じがする」とか「こんな光景、前もなかったかな?」というような感覚を、誰しも持ったことがあるのではないだろうか。
 それこそが、スーツに刻み切れずに魂に残ってしまった記憶というわけだ。
 そんなSFみたいなこと、と思うだろうが、それが真実だとすると、物理学的にも説明可能だし、そういう内容の宗教は古くからあるし、レゲエの精神もそうらしい。
 だとすると、今私というスーツに入っている魂は、昨日もこの中にいたとは限らない(そもそも昨日という日が昨日あったのかも……ややこしいからここは割愛)。
 昨日の私(の中の魂)は、ミランダ・カーだったかもしれないのだ! うん、そんな感じするし。
 なっちゃんに意地悪した魂は、明日はなっちゃんというスーツに入ってるかも知れないのだ。そして、なっちゃんのスーツに刻まれたままに、遅くまで勉強するかも知れないのだ。
 だったら、何も羨ましくはない。
 いつだってその人になれるんだから。
 
 これが真実かどうかは大したことじゃなく、そう信じた方が、人生豊かだと思うのだ。
 今日目覚めた私は、私になりたくてやってきたのだから。
 明日の私は私ではないかもしれないから。
 でも明日もこのままかもしれないから、スーツは粗末にしてはいけないよね。
 だから、今日の私を楽しんで、一日一日を大事に過ごそう。
 
 明日は私、東野圭吾になろうかな。
***

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2018-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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