メディアグランプリ

自信、という名の必殺技。


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記事:Misaki(ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
「やりたいのなら、できます。やらない人は、わかっていても面倒くさがってすぐに動けないんですよ」
 
グサリ。私の胸に深く突き刺さった一言だった。
 
それは、まさに、私のことだった。
 
 
その日私は、あるwebデザインスクールの先生である斎藤さんと、個別面談をしていた。
その前に説明会にも参加はしていて、話を聞く中で「ここで学びたい!」という気持ちは強まっていた。
しかし、現時点で私には、貯金はおろか払える学費もなかった。
十分な金額を稼ぐには、あと5カ月はかかる。
 
「すぐに入学したいんですが、金銭的に厳しくて……入学は4・5カ月後になりそうなんです……」
 
そう伝えると、斎藤さんは少し考えこんだ。
 
「金銭面のことはあるとは思いますが、5カ月も先になると、今のやる気を維持するのは難しいかと思うんですね」
 
そうですよね……そうなんですよね……。
私は、何かに対して気持ちを強く持ち続けられる自信がなかった。
 
 
でも、と斎藤さんは続けた。
 
「本当にやりたいのであれば、どうやったら出来るか、その方法を探してみましょうか」
 
「なるべく早くスクールに入学するためには」と考えながら、一つひとつ今できることを挙げていく。
 
例えば、私は先日アルバイトを辞めたばかりだったので、今日すぐにでも次のバイトを探すこと。
一人暮らしを辞めて、一旦実家に戻ること。バイトをしながらスクールに通うこと。
両親に、学費代を貸してもらえないか頼むこと。バイト先を決めて、本気であることを伝えること。
よく考えていくと、今すぐに行動に移せることは、いくつもあった。
 
 
「一番大切なのは、自分を信じることです。やりたいのなら、できる、と意識を変えてください」
 
「自分を信じる」この言葉は、私の胸に深く刺さった。
 
これまでの人生のなかで、私は自分を信じることができていなかったのだと気が付いた。
自分は、慎重で考えすぎてしまうところがある。それは、そういう性格なんだ、と思っていた。でも、思い返すといつも私は、自分の選択を信じられていなかったのだ。
 
「大丈夫です。絶対できます。自分を信じてください」
 
斎藤さんのまっすぐなその言葉に、ぐわーっと胸が熱くなったのが分かった。
はい! と返事をして、私は何回も頷いていた。
さっきまで悩んでいたモヤモヤした気持ちが、軽くなっていく。
 
 
その後、斎藤さんとの面談を終えて、私はさっそくバイトを探し始めた。
やる気にあふれていて、5カ月後ではなく2カ月後に入学するのだ! と意気込んでいた。
そして、家の解約について調べて、スクールに通う計画書も作って、それらすべてを持って実家へ帰った。
その日の夜、父と母に「大事な話がある」と伝えた。
夕食の後、静まった台所で、私は話し始めた。
スクールに通う理由や、自分の気持ち、かかる学費について少しの間借りたいということ、2カ月後にはスクールに通い始めたいこと……。
 
こんなに真剣に話したことはなかったから、とても緊張していた。
10分近く話した後、黙っていた父が口を開いた。
 
「悪いけど、信じられない」
 
本当にバイトをしてお金を稼ぐ気持ちがあるのか?
今まで何事も中途半端だったのに、新しくスクールに通っても続かないんじゃないのか?
 
今までの私の姿を見ていたら、そりゃあそう思うよなあ。
普段から、適当なことばかりやっていたのだ。意志は弱かったし、すぐ諦めるタイプだった。
 
でも、今回は、違う。
やりたいのだ。やるのだ。
 
「1カ月ください。1カ月でとにかくお金を貯めるから、それからまた、考えてもらえないですか」
 
少し間を置いて、分かった、と父は言った。
 
両親は、私を信じたいのだろうと感じた。
ここで、私が本気になって約束を守ることは、ものすごく大きな意味を持つ気がした。
 
私は、末っ子として生まれて、今まで両親に優しく育ててもらってきた。
お金の面でも生活の面でも困ったことはほとんどなかった。
私は、その環境に甘えていたことを痛感して、恥ずかしくなった。
 
話し合いの後、実家を後にして、一人暮らしの自宅へ戻った。
帰り際に、母親が果物を持たせてくれた。
 
「お父さん、ああは言ってるけど、お金のことがどうこうじゃなくてMisakiの本気の姿勢が見たいのよ」
 
帰り際に駅の改札まで母は来てくれた。
 
わかってる。私もずっと、自分自身の本気の姿を見たかったのだ。
1カ月したら、報告しにくるね、と伝えて母と別れた。
 
「自分を信じる」
 
私は、できる。大丈夫だ。
繰り返すうちに、私はどんどんやる気が湧いてきて、ワクワクしてきた。
ゲームのように、派手な効果音とともに、じゃーん! とレベルアップした自分のイメージが浮かんだ。
ゲームだと、レベルアップをすると、使える技が増えて強くなれる。ときには、ゲームの中で会った師匠から技を授けられることもあったりする。
私は斎藤さんから、信じる、という名の「必殺技」をもらったような気分だった。
これまでの私では歯が立たなかった問題も、この技を使えば乗り越えられる気がしている。
なんだか、もっと遠くに冒険できそうな予感だ。
 
まずは1カ月後の約束のため。
そこを目指して、私は必殺技を胸に、歩き始めたばかりだ。
 
 
***

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2018-10-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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