メディアグランプリ

社長的コンサルティングは大道芸


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記事:slowman(仮名)(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
「一緒に観に行かないですか?」
仕事でお世話になっている社長から声がかかり、国内でも珍しいと言われる大道芸人が集まった催し物に向かった。
社長は小さな娘さん二人を連れて、子守がてらに訪れたようだった。もしかしたら子守が大変だから、私に手伝って欲しかったのかもしれないと思ったりした。
 
そういえば、この社長、最近興味深いことを言われていた。私たちが一緒にしている仕事は一種のコンサルティング業務なのだが、社長は「売り込みしなくていいですよ。こちらが提供することは既に実績にあることを提示しているので価値があるのだから、まずは相手にその価値を認識してもらうことが最初です」と言われる。
とは言っても、こちらも商売としてやっているのだから収入につながらないのはまずいと思ったが、その後に「価値を提供した相手から契約が取れなくても、自然とよそから契約が回ってきたりするもんだから、あまり気にしなくていいですよ」と言われた。
 
そうか、そう言われるのなら社長の子守の手伝いをすれば、よそから良いことがやってくるかもしれない、と邪な気持ちで子守の手伝いを始めた。
 
人混みの中、お子達を看ながら歩くのは気を使うことが多くて、迷子にならないかとか、大人にぶつかって怪我などしないか、とか日頃一人暮らししている自分が感じることがない思いをしながら歩くのはある意味新鮮であった。
 
大道芸はいくつもの種類があるので時間と場所によって色々開催されるものがあったのだが、時間的に合うのは金粉ショーという全身に金粉に塗り込んで踊り続けるというもので、皮膚呼吸が出来ない状態で踊るというのが売りのようだった。
 
開演場所は、小さなお寺の境内の中で、日頃人がお参りに来てもこんなにたくさんの人が集まることはないだろうというくらいに人がひしめき合っていた。一見、男性客が前の席を陣取っている印象。
 
踊りが始まるまで、座るところも立って観る場所すら見つけることもできなかったのだが、開催のスタッフの人が、子連れだからというので特別に観られるところまで案内してくれた。お子達のおかげである……お子達から私の子守の対価が支払われたということか。
 
さて、金粉を身にまとったダンサーが境内に入ってきた。男性2名、女性4名の人数構成。
金粉まみれの身体をBGMに合わせてしなやかにゆっくりと動かしたり、激しく動いたり。
途中に白塗りの顔に金色と黒の服を着て白いタイツという格好の女性が歌を歌い、それに合わせて踊る演目もあった。
果たして、この女性が歌を歌う必要性があったのか?という疑問があったのは脇に置き、そのまま6人の男女が踊り続けるのを観続けた。金粉越しから汗が吹き出している。皮膚呼吸がしにくい分、踊るのも大変なのか?
汗を飛び散らして踊る彼らをみながら思った。おそらく私は生涯、全身金粉姿になることはないだろうから、金粉姿の彼らがどれほどハードなのかは一生わからないだろう。
 
そういえば、でゴールドフィンガーという007の映画の中で全身金粉塗られて皮膚呼吸できずに女性が死んでいるシーンがあったのをおぼろげながら思い出し、やっぱりハードなんだろうな、などとつらつら思いながら観ているうちに踊りは終了して、「投げ銭をお願いします」と、先程歌を歌っていた女性が投げ銭箱を持って回ってきたので、手元にあるだけの小銭を入れた。
 
よくよく考えると局部は隠しているものの全裸に金粉塗り込んで踊っていた訳なので、金粉がなければ裸踊りになってしまう。そう考えると刺激的だなと後から思った。そうか、それで男性客が多かったのか、と合点がいったのだが既に踊りは終わってしまっている。もっと早く気付くべきだった。
 
金粉ショーが終わって帰ろうとした途中で、中国雑技団の男性が積み上げた椅子に、片手で逆立ちしている姿が目に入った。セーフティネットがないところで。観ているだけでハラハラするような高さで静止。これは、怖い。
普通出来ないことを、目の前でしてしまうから観客は驚いて観てしまうんだよな、と当たり前のことを思ったのだが。
 
……そう。これも社長の言う価値の提供だ。常人ができないことをやってのけることに価値があるわけだ。しかも彼らは、芸を見せるのはわずかな時間。その時間内で観客を驚かせたり感動させたりすることで価値が生まれて収入となるわけだ。
 
社長が、私たちの仕事ではまずは価値の提供からすればよい、という話もこの大道芸と一緒だ。最初に人を驚かせたり感動させたり喜ばせておいて価値を感じてもらってから投げ銭を出す人から収入を得ているのだから。
一見当たり前のことなのだろうが、やはり商売は相手に与えることから始まるということが、全く違う業種からも分かる。まずは、周りの誰かに価値を提供しよう。邪な気持ちを持たずに。

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2018-10-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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