メディアグランプリ

女同士の共依存から抜け出す心得


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記事:林絵梨佳(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
 
「あなたが彼と別れないなら絶交します」
電話口で高校時代からの親友にそう告げられ、絶句した。
かれこれ10年近く前の話だ。
 
彼女とはそれ以来一度も会っていない。
どこで何をしているかも知らないし、知ろうとは思わない。
 
私と元親友、Aは本当に仲が良かった。服の趣味が合うのでよく一緒に買い物に出かけた。しかしお互い他人の買い物に付き合うのは苦手だった。
なので私たちは店ごとに集合時間と場所を決めて、別行動で店内を自由に見て回った。集合したらまた別の店へ。
趣味は合うので行きたい店はだいたい一緒。でも欲しいものはいつも少しだけ違った。
その後、ファミレスやカラオケに行き、お互いの買った物が変だと笑い合ったり、いつまでもぐだぐだと話をした。
その遊び方はとても楽だし楽しかった。
 
社会人になってからも頻繁に会っていた。たむろする場所はファミレスから居酒屋へ変わった。彼女と飲みに行くのを楽しみに仕事も頑張れた。
 
高校からの私の恋愛遍歴は全て彼女に話した。
いつも理性的な意見をくれる彼女のことを尊敬していた。
私は恋をすると周りが見えなくなってしまうタイプなので、彼女の客観的な意見をとても頼りにしていた。
彼女が「その男はやめておけ」と言うならあっさりその恋を諦めた。
 
ある時、同じ職場の男性と付き合うことになった。
見た目も中身も私にはもったいないぐらいのイケメンで、私は舞い上がっていた。
 
付き合う前から彼のことはAに相談していたので、すぐ彼女に報告した。
それまで彼とのことを応援してくれていた彼女が、ある話題になって態度を一変させた。
彼の家柄の話だった。
「その人と一緒にいても幸せにはなれない。親を悲しませるよ。そんな子どもみたいな恋愛してどうすんの」
Aは電話口で憤慨しながらまくし立て、舞い上がっていた私に突然冷や水を浴びせた。
 
一つ断っておくが彼は既婚者でも犯罪者でもない。善良な好青年である。
Aが矢継ぎ早に繰り出す非難に、反論する私の声はか細くかき消された。彼の人となりなどは何も聞いてもらえない。家柄のダメ出しの一辺倒だ。
私は彼女にそんなに否定されるとは思っていなくて、ただただ呆然としてしまった。そこに追い討ちをかけるように彼女は言い放った。
 
「あなたが何故その彼のことを私以外に話してないのか当ててあげようか? こういう風に否定されるのが怖かったからでしょう? みんなから否定されるってこと、あなたはわかってたんでしょう?」
 
そう言われ、初めて私は気付いた。
全然わかってなかった。他の友人に相談するという発想がそもそもなかった。
彼女の想像以上に私は馬鹿だった。
 
私は彼女に依存していた。
聡明で、私の幸せを本当に考えてくれている彼女の意見だけ聞ければ良い。他の人の意見は聞くまでもないと思っていた。
私の考えより彼女の考えが優れているというのを口実に、自ら考えることをサボっていた。
 
Aにそう言われて初めて、なるべく多くの友人に相談した。
一人も私の恋愛を否定する人はいなかった。皆、親身になって話を聞いて応援してくれた。
それでようやく、Aの意見が全てではないと知った。
 
「彼とは別れません」
「わかりました」
初めてAの意見を取り入れないことを表明した。私の声は震えていた。ずっと彼女に依存してきた。これからは彼女なしで立っていかなければならない。
 
それ以降、Aとはメールでのやり取りのみとなった。
「言うことを聞かない人と会話をするのが苦痛」とのことだった。
 
Aと私の絶交が成立した。
 
Aは本当に私の幸せを心から考えてくれていたと思う。
でも私が彼女に依存することによって、いつしか私が彼女の言うことを聞くのが当たり前になってしまった。
彼女は理想の幸せを私に押し付けるようになってしまった。
私は彼女の意見が完全に間違っているとは思っていない。そして彼女に悪意があったとも思わない。愛ゆえの厳しさだった筈だ。しかし私の恋愛において彼女はあくまで第三者である。彼女は友人の恋愛に介入できる範囲を間違えた。
「言うことを聞かなければ絶交」する関係は友人関係ではない。支配関係だ。そしてその関係に両者とも甘んじているのは共依存である。
 
そもそも「親友に言われたので別れる」なんて恋愛があるか。そんなものは恋ではない(ちなみにAに「やめとけ」と言われて本当にやめてしまった男性たちは私の恋愛遍歴からは抹消されている)。別れるにしても自分で考え自分で答えを出すべきである。本当の友人ならどんなに焦れったくても本人が答えを出せるまで見守るものではないだろうか。
 
それからは「友達を選ぶ」ということを心がけている。
 
Aとばかり遊んでいたのでしばらくはぽっかりと穴が空いたように寂しかった。
しかし幸い私には他の友達や気の合う同僚がいて支えてくれた。
自分の考えをしっかり持っているが強要はせず、違いを認めてくれる人達。そして自分もそうあることを極力気を付けている。自分が気を付けることで自然に周りもそういう人達ばかりになっていく。
 
女ともだちに、好みじゃないTシャツを「お揃いにしよ!」と強く言われたら距離を置くのがベストである。
女ともだちとは、お互いの買い物がどんなにくだらない物に見えても、それを良い意味で笑い合える仲でありたい。

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2018-10-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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