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メディアグランプリ

思い込みは、夏風邪みたいなもの


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:古川 馨(ライティング・ゼミ平日コース)
 
何かを買うときは値段が安い方がいい。100円でも200円でも安く買いたいものだ。誰でも値段が安いものを欲しがっているはず。コーヒーだって、スタバにいかなくてもコンビニで十分。服だって無理して高いショップで買わなくてもユニクロで事足りる。ネットでものを買うときだって、Amazonや価格ドットコムでの価格比較は欠かせないはずだ。テレビを見れば、安売りスーパーの特集。安く買ったことを自慢する人たち。安いものを買うためなら、何処へだって出かけていく。そういう人ばかりで世の中は溢れている。それが僕の考えだった。値段の安いもの。お買い得なもの。セール品。つまり安いものを購入することで、誰もが満足すると思い込んでいたのだ。しかし、それは勘違いだった。何の役にも立ちはしない。それどころか、邪魔にしかならない考えだ。そんな思い込みはセールスにとって夏風邪みたいなものだった。
 
今から2年ほど前のことだった。当時務めていたメガネ店の主力商品は5,000円。1万円や上は5万円の商品もある。もちろん、5,000円のものより5万円の商品の方が作りも良い。素材も違うが、磨きなどの細かい部分にこだわりがあるのだ。例えば、プラスチックフレームの引っ掛かりがない触り心地。メッキの仕上がり。そしてフレームのカラーリング。およそマニアックな人しか気づかない仕様だ。だからお客さんに「いやぁ、ここの磨き具合が違いまして」と告げたところで、キョトン顔をされて終わりだろう。「ほら、ここスベスベでしょ」なんて接客していたら、ちょっとやばい店員だと思われてしまうかに違いない。「ここの部分なんてウットリするような仕上がりですよ」などと言ってしまった日には、お客さんも超ドン引き。そそくさと店を立ち去るに違いない。
 
オススメする機会も少ないので高額商品はあまり売れない。そして、多くの人は5,000円の商品を求めてやってくる。だから、「うちに来るお客さんは安いものを求めている」という考えが頭の中を占めていた。こだわるお客さんには、もちろん高額商品も紹介する。でも普通のお客さんには、お買い得な商品をオススメして終わり。それが僕の接客スタイルだった。
 
「メガネ買いに来たんだけど。安いのどれ? 」60代くらいの男性がお店にやってきた第一声だ。いつものようにお客さんを5,000円コーナーへと案内し、「こちらがお買い得ですよ」と告げる。すると、そのお客さんは並んでいる商品に手を触れるでもなく、じっとメガネを見つめている。どうしたのだろうか。気に入ったものがないのか。少し困惑したような表情を浮かべているようにも見える。「気になるものがあれば、どうぞ、お試しください」と声をかけるが、反応がない。しばらく、してその男性がボソッとつぶやいた。「いや、こんなオモチャみたいなものじゃなくてさ」確かに、年配の方がかけるには少し頼りなく見えたのだろう。デザインも若向きのものが多い。違うものをオススメしようかと思った矢先。お客さんは僕に向かってこう言った。「いや、2万くらいの安いやつでいいんだけど。もうちょっとフレームの大きいのはないのかな」その言葉は衝撃だった。なんと、このお客さんにとって2万円は安いのだ。詳細を聞くと、前のメガネが壊れてしまったそうだ。しかも、それは1本6万円で購入したものだったらしい。「それよりも安く買いたい」というのがお客さんの主張だった。結局、予備のメガネも含めて2万円の商品を3本購入。「前と同じ値段でメガネが3本も買えた」と満足そうに帰っていった。
 
価値観は人それぞれだ。2万円が安いと感じる人もいれば、高いと思う人もいる。何がその人にとって高いのか。聞いてみるしか答えは出ない。だから、その日から僕は接客スタイルを変えた。とにかく質問をすることにした。安さが値段ではないと知ったからだ。その結果、お店の売り上げが変わった。高額商品の販売本数も増えた。夏風邪のようにこじらせていた、僕の思い込みはあっという間になくなった。そして世界が変わった。
 
誰だって、思い込みはある。ついつい自分の価値観にとらわれてしまうのだ。そして、勝手に相手も自分と同じだと思い込む。だけど、そうじゃない。性格が違うように、価値観も違う。そこに気づけば世界は大きく変わるんだ。上手くいかないことや楽しくないこと。もしかしたら、つらいことだって自分の思い込みかもしれない。
 
思い込みは夏風邪みたいなものだ。変にこじらせる前に、治してしまった方がいいんじゃない?
 
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2018-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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