fbpx
メディアグランプリ

小さな親切が巡っていく


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:宮嶋周一郎(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
「疲れた……」
そんな言葉が、よくiPhoneのlineにメッセージが入ってくるのは、私の友人からだ。
その友人は、なんとなくの愚痴を気楽に送ってくる。知り合った当初から、こういう内容を頻繁に送ってくるので、今では全く気にならない。慣れたもので、適当な返事を出して終わりだ。こちらが適当に出しても気にしないので、これは挨拶のようなものとなっている。
この友人はともかく、社会で生きていれば、大抵はこの一言は言いたくなるだろう。この疲れたという言葉は、もはや生きていることに疲れたという意味でもある。
テレビを見れば、殺人、不倫、詐欺、悪いニュースのオンパレード、格差社会は増し、生きているだけで疲労が高まるような社会である。
その友人が思わず、ネガティブな内容を送ってくるのは、無理ないことかもしれない。
ただ、そんなニュースを見ていると思うことがある。
そんなに世界は、生きづらいのだろうか?
生活は、圧倒的に便利になっている。自由に国内、海外も行けるようになっているし、パソコンで部屋にいながら世界中の人たちと繋がることもできる。考えてみれば、この世界は大変革を遂げているのだ。それらがあまりにも当たり前になっているから、実感がわかないのかもしれない。
便利になっているからこそ、事件も起きている。
だからこそ、次から次に事件も起きている。
テレビで事件ばかりが放送されていると、まるで世界が悪人ばかりなのではないかとも思えてしまう。
だが、そうそう最悪なことばかりでもない。
先日のことだ。私は職場まで、電車通勤をしている。電車通勤なので、定期券を持っている。普段は、定期券入れにいれてあるのだが、それをどこにしまっておくかは人それぞれだろう。私は取りやすさを重視して、尻ポケットの中にしまっている。
職場の最寄り駅の改札口を出た際に、知らない男性に声をかけられた。
最初は自分に声をかけられていたことも、気づかなかった。
朝から、怪しい勧誘で声でもかけてきたのだろうかと疑った。
振り向いてみると、30代前後くらいのサラリーマンの方だった。
「これ、落としましたよ」
そう言われて、差し出されたものを見ても、朝で思考回路が鈍っていたせいか、なかなか状況がつかめず、差し出されたものをじっくりと見つめる。
そして、それが自分の定期券入れであることに気づく。
「あ、ありがとうございます!」
すぐにお礼を言うと、言われたサラリーマンの方も、少し照れ臭そうに笑って立ち去った。
朝から、人の親切に触れられて、良い気分だった。
小さな親切だが、非常に助かった。そして、こういう光景も街では、時折見かけるのだ。
親切に道案内をする人、電車内の席を譲る人、ベビーカーを階段に上げるのを手伝って上げる人、色々な小さな親切も見かけることがある。
テレビでは、不幸や哀しい事件ばかりが流されてしまう。もちろん、それは必要な情報だ。こういう小さい親切は事件ではないので、取り上げられることはまずない。ただ、個人にとっては定期券を落とすことは事件だ。
だからこそ、そういう光景を見ると、私たちはホッとして、安堵感が出る。
そう、まるでひと時のコーヒーを飲んで、気持ちが落ち着くような心境になる。
そして、この親切は人を通して、さらに広がっていく。
私も親切を受けたことで、人に親切にしたくなる。
人は攻撃されれば、反撃したくなる。
親切を受ければ、恩返しをしたくなる。
やられたことは、巡り巡って返ってくる。
当たり前のことだが、忙しない現代を生きていると、つい忘れがちになってしまう。
そして、こう思う。
ああ、まだまだ世の中捨てたものではないなと。
視点の違いで、私たちは見る世界が変わる。
どこに目を向けるかで、入ってくる情報が変わる。
ならば、物事の良い面と悪い面の両方を上手に見ていくことが、現代では特に求められることかもしれない。
嫌なことが続くと、なにもかも放り投げてしまいたくなるときもある。
ただ、ほんのささやかな親切心に、人は救われることもある。
自宅に招いたお客様をコーヒーでもてなすように、ちょっとした親切が人に安心感を与えてくれる。
大きな出来事ではなかったかもしれないが、私にとって色々考えさせてくれた出来事だった。
見知らぬ方だけれども、改めてありがとうとお礼を言いたい。
そして、またlineで、友人から仕事の愚痴や疲れたメッセージが入ってくる。
優しいメッセージを返すことも、親切が巡るのかもしれない。今度から、五回に一回ぐらいは、ちゃんとした励ましの返信を出してみよう。
でも、相手はそんなことは求めていないだろう。
気楽に愚痴を言いたいだけだ。
じゃあ、やはりこちらも気楽に返そう。
そんな、適当なやり取りも楽しいものだ。
ああ、なんだかんだ今日も平和なのかもしれない。
まだまだ、世の中捨てたものじゃない。
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《11/4までの早期特典あり!》

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2018-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事