メディアグランプリ

ネガティブなシシカバブーに、つまづく。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中 眞理(ライティング・ゼミ朝コース)

 
「ネガティブ・ケイパビリティ」
新聞でこの文字を見かけたとき、反射的に「ネガティブ・シシカバブー」という言葉が頭をよぎった。
ときどき、意味のわからないことが起こる。
自分のくだらなさに苦笑する。
脳って不思議。そう思うことにしている。
 
「ネガティブ・ケイパビリティ」
一度ひっかかってしまった言葉、その記事は素通りできない。
 
直訳すると「負の力」。
「答えの出ない事態に耐える力」。
精神科医であり、作家である帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)氏の著書のタイトル。
著者自身の言葉では「問題を性急に措定せず、生半可な意味づけや知識でもって、未解決の問題にせっかちに帳尻を合わせず、宙ぶらりんの状態を持ちこたえる」能力という意味。
医療界だけではなく、教育の現場でも注目されている言葉である。
 
「ネガティブ・ケイパビリティ」
「持ちこたえる能力」
あくまでも、「私なりに」ですが、
めちゃくちゃがんばって生きているのです。
よく働く、というより、よく動く。
パン屋は作業が多い。営業日の前日から作業はスタートし、15時間くらい連続で立ち仕事。
家族がいる。食事の支度は自分でやるけれど、掃除、洗濯、ゴミ捨て、あらゆる家事を適度に家族にふりわけ、滞らないよう、指示する。家族はいつも協力的だ。
ふたりの下宿生の食事。
PTAの副会長。会議、学校行事、研修会への参加。気が進まないが、今年1年限りのこと、積極的に参加。
「月刊『なう』」編集会議。地元の仲間と発行する読み物をつくる。
勉強会への参加。異業種ワークショップ・百年企業研究会・製パン製菓講習会など、定期的なものから、単発のものまで各種。
趣味の寄席通い。寄席の企画。読書。大人女子ソフトボール部の練習。
やったことがほったらかしにならぬよう、日記に記録する作業。
おざなりになりがちではあるが、隙間時間に整理整頓。
やめればいいのに、撮りだめしたドラマを視聴する癖。
「若女将は小学生」、いい加減にしろよと思うけれど、観たい映画も目白押し。
 
最近では通院にサポートが必要になってきた夫の両親、自分の両親の送迎や、買い物業務も追加されてきた。入院騒動もあり、これからますます増えてきそうな介護に関わる時間。
 
24時間をどのように使うのか?
全部全力でやりとげ、睡眠時間の短縮でつじつまをあわせようとしている。
 
そして今、1日1.5時間から、4時間の睡眠で、何とか1週間をやりくりする、という事態に陥っている。翌日が定休日の夜は一番やばく、いつ眠りに落ちたのか記憶にないことが多い。
 
やばいことは目に見えている。
親からもらって、自分で育ててきた体力と気力で、今のところなんとかしている。
でも、自分も年齢を重ねていくのだ。いつまでもこの睡眠時間はやばい。
少しずつ、寝起きが悪くなってきている。アラーム聴こえないこともある。小さなきざしに、大きな恐怖が生まれる。もう、この生活、無理なのではないか?
ボディケアの先生にも、「脳をきちんとリラックスさせてやる時間をつくらないと、ある日突然うつになる可能性ありますよ」と注意された。
 
しかも困ったことに。
「やらねばならぬ」と思って、自分を奮い立たせて無理やりやっているのはPTA活動だけで、後のことは好きまたはやることが苦にならないのだ。むしろやることによって、自身の内面が充実したり、誰かに喜んでもらえる、ということばかりで、気が付けば一生懸命やってしまっている。
嫌いなはずのPTAさえも、やってみると、今まで接点のなかった保護者と知り合えたり、親しくすることなどなかった校長先生や担当の先生たちと、顔見知りになり、学校のことをいろいろ話せたりする、楽しい時間になっているではないか。
 
「ネガティブ・ケイパビリティ」
「持ちこたえる能力」
自分を振り返っているうちに、どうやら、使い方を間違っていることに、気づいてきた。
私の現状を肯定してくれる、力強い言葉である、と思いたかったのだ。
書いてみたら、バレバレではないか。方向性もないままに、自分の興味の赴くままに、あれもこれもとやっている、「欲張りすぎてくたびれてきた女」ではないか。何らかの成長または回復の方向に向かっていく途中の、「持ちこたえる能力」には程遠い気がしてきた。
 
あー
また、自分を「何者かである」と勘違いするところだった。
「ネガティブ・シシカバブー」この言葉が再び脳をよぎる。
その程度だよ。
 
健康の浪費。
誰かの役に立ちたいのなら、気持ちよく人生を終わりたいのなら、まずは自分を大切にしなさいよ。
「ネガティブ・ケイパビリティ」も、「ネガティブ・シシカバブー」も、
日々足元を見ないで走っていく私に向けられた、小さな段差だった。
けつまづいて、転んだ。膝をすりむいた。少し血がにじんでいる。
立ち止まろう。
足を洗おう。
ヒリヒリする。
 
今なら、まだ間に合うだろうか。
欲張りすぎてくたびれてきた私、擦り傷の痛みをしっかり受け止めなさい。
私の伴走をしている、もう一人の私、共倒れになる前に、今すぐ自分会議をひらきなさい。
 
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2018-11-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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