ある日うちの息子は突然学校に行かなくなった
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記事:前田尚良(ライティング・ゼミ日曜コース)
子育ては本当に大変だ。
だいたい比率として、手のかかる子と手のかからない子は半々だという。
手のかからない子は放っておくだけで勝手に自立していく。
反対に手のかかる子は散々手を煩わせて親の愛をとことん吸い取っていく。
しかし親孝行をするタイプは手のかからない子の方らしい。
うちの子は手のかかる方だったようだ。
三年ほど前のある冬の日
私たち夫婦はやっと取れた休みを利用し、京都を観光するため朝の早い新幹線に乗った。
ただひとつ気がかりなことがあった。
この日はうちの息子の高校の三学期の定期試験の日でもあったのだ。
「あいつほんとに学校いくのかな」
私たちは心配になってきた。
というのもうちの息子は朝自分から起きてくるタイプではなく親が起こさないと起きてこない子なのだ。
しかし京都観光の新幹線の切符を日時指定の「ぷらっとこだま」にしたため、その便に乗らざるを得ず、新幹線の中から息子の携帯を鳴らした。
「トゥルルル……トゥルルル……ただいま電話に出ることができません……」
私たちは何度も鳴らしたが応答がない。
家の固定電話にかけても出ない。
私たちは焦りだした。
同時にこの日を旅行の日に選んだことを後悔した。
そうこうしているうちに新幹線は京都に着いてしまった。
京都駅に着いた時、自宅に引き返すことも考えた。
なぜここまで狼狽するのか?
三学期の定期試験で単位を落とすと追試であるとか、留年であるとかめんどくさい問題が噴出してくるからだ。
そしてやっと昼ぐらいに連絡が取れるが結局学校には行っていないことが判明。
学校の先生にも連絡し、後の追試等の打ち合わせし、その場はなんとか凌いだが京都観光は気まずいものとなった。
その後なんとか息子は三年に進級したが本当の問題はそこからだった。
高校三年の四月、今まで朝はなかなか起きてこない息子だが朝起こしにいっても学校になかなか行こうとしない。
聞けば朝一のホームルームがある日は特に行きたくないのだという。
「お前、いいかげんにしろよ!」
父親である私は朝無理やり起こそうと力づくで挑んだが、もう高三にもなる息子を力づくで登校させることは不可能である。
だんだん息子の登校は週数回になり、5月にはフェードアウトするようにまったく行かなくなった。
理由を聞いてみた。
いじめではないらしい。
では原因はなんなのか?
担任の先生から呼び出しがかかったのもあって聞いてみた。
若い男性の担任はこう言った。
「うーん、とにかくS君はひとりぼっちなんです」
不登校の原因は「ぼっち」だということが判明した。
本人にそれから直接聞いてみると、部活にも入っていない息子は友達がほぼ一人もおらず、一年生から二年生に進級する時はクラスの入れ替えがあったのでなんとか「ぼっち」は凌いだが、二年生から三年生に進級する時はクラスのメンバーの入れ替えがなく、派閥やグループがそのままの状態で進級したのでとうとう「ぼっち」に耐えれなくなったとのことである。
「お前なあ、休憩の時間でも机にうつ伏せしてるらしいやんか」
「友達ぐらい作れんのかよ」
「コミュ力ねえなあ」
といろいろ私は言ってみたがこれは教育の専門家からみても逆効果らしい。
なぜか?
本来大人でも子供でもいろいろな自信とか友達や親とのつながりであるとかプラスのエネルギーがコップの水に一定の量が溜まっているからこそ、それが糧となって活動できる。
だが10代の子供にはそのコップの水を満たす方法がわからないのだ。
そしてコップの水が枯れてしまうと不登校や引き籠りを起こしてしまうのだそうだ。
本当は子供のいい所を見つけたり、褒めなければいけないのだ。
だがいいところを見つけたとしても、褒めたとしても、コップの水がすぐに溜まるわけではない。
「高校中退」という最悪のパターンが頭をよぎる。
それだけは避けたい。
でもこのままいけばそうなってしまう。
息子はこの状態でも大学進学は夢見ていた。
夏休みに入った頃、私たち夫婦はある決断をした。
ひとつのものを得るにはひとつのものを捨てなければならない。
私たち夫婦は現在息子が通う高校の卒業を断念した。
ではどうするのか?
通信制の高校への転校である。
いろいろ調べてみたのだが、このようなパターンは私たちだけではないようだ。
現在は通信制の高校が発達していてドロップアウトした子供の受け皿になっているらしい。
「そうだ、こういう手段があったんだ」
「今からなら、なんとか卒業にも間に合うし大学受験もできる」
私たち夫婦は子供を説得した。
息子は転校することを最初ためらったが、このまま学校に通うことも自信がなかったようで転校することを決断した。
大人の世界でもやはり「人間関係」というのは悩みの種である。
しかし大人には選択肢がある。
現在でも学校ではいじめで自殺というケースが後を絶たない。
死を選ぶぐらいなら学校に行かなきゃいい。
「コップの水」が溜まるまで家で引き籠ってもいいのだ。
子供にも必ず選択肢があるのだということを大人が教えなければならないのだと思う。
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