魔法の目覚ましは、いつもここにある
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:なつむ(ライティング・ゼミ日曜コース)
「わっ、また!? もう1時間経ってる!」
私は布団から飛び起きた。
今日こそ早起きしようと思ったのに、ダメだった。
今は6時半。5時半に目覚まし時計が鳴った後、スヌーズを止め続けて、結果1時間もグダグダしてしまった。
一日の始まりが台無しだ。
私は、大きくため息をつき、急いで出かける用意を始めた。
私は、寝起きが悪い。
今に始まったことでもない。
記憶をたどれば保育所の頃から、母は私を起こすのに毎朝苦心していたし、小、中、高と、朝から何度、母を怒鳴らせたかわからない。
大学に入ると母が起きる頃には家を出るのでようやく自分で起きるようにはなったが、それでも毎朝バタバタだった。
就職して一人暮らしをしても基本的に変わらない。
「朝活」ブームの頃か、数年前、「4時起き」にチャレンジしたこともある。あれこれ手を尽くして起きていたものの、結局リズムを作りきれず、何かの拍子に体調を崩した。その後も何度か、早起きを習慣化しようと試みては、失敗。
朝からスッキリ起きたい、朝の時間を有効に使えるようになりたいという憧れはありつつ、相変わらず「起きたい」「起きられない」の綱引きを続けている。
それが、この冬、意外な形で、転機は訪れた。
はじめ、起きて鏡を見て、我ながら、朝から不機嫌そうな顔だなと思った。でもそれ以上気に留めなかった。
別の日の朝、ふと、眉間が気になった。うっすら、シワが残っていた。
原因は分かっている。起き抜けに顔をしかめているせいだ。
顔が老けて見えた。
たかがシワ一本、されどシワ一本。元の顔のいかんによらず、印象の破壊力は、甚大だ。
シワが癖になると困ると思い、いつもより念入りに肌のお手入れをした。
時間が経つとおよそ元に戻ったように思い、ホッとして、家を出た。
その後も、たまに機嫌良く起きる日もあったが、ほぼ毎朝、起き抜けの私は渋い顔をしていた。
とびきり寝起きの悪かった、ある朝。
眠気にイライラしながら鏡を見て、私はショックを受けた。やや絶望的な気分だ。
眉間のシワが、今まで以上に、濃かったのだ。表情を緩めても、まだ少し残っている。
まずい。状況の悪さに、更に表情が険しくなる。
自分をなだめ、大きくため息をついた。
おそらく、アラームのスヌーズが鳴るたびに、私は眉間にシワを寄せている。
このままでは、消えないシワになるのは時間の問題かもしれない。
そうなる前に、寝起きの悪さそのものをどうにかしなければいけない。
とはいえ、である。
日中、意識があるときには自分の表情を意識できるが、まどろみの中の、あの時間。
意識はあるようで、ないような。表情のコントロールなんて、できるだろうか。
真剣に、私は考えた。
まず、とにかく、アラームがなった直後にスキッと起きれば、解決である。
本や雑誌にも、朝起きる方法はいろいろと載っていた。
ご褒美スイーツ。「起きる!」と自己暗示。タイマー式ライト。なるほどねとは思うがピンとこない。
発想を元に戻すことにした。
まどろんだままでも、険しい顔にならない方法はないか。
そういえば。毎日当たり前のように険しい顔をして起きているが、そもそもどうして、そんな険しい顔をしているのだろう。
寒くて布団が恋しい? それなら暖房をつければ解決しそうだ。
眠い時に起きるのが辛い? それ自体はわからなくもないが。
起きたら最悪な一日が待っているとでも言うのか? これが、自分で引っかかった。
そうなのだ。朝起きるとき、なぜか、この世の終わりのような気分の自分がいる。
でも、真面目に考えると、何の根拠もない。
だとすると。
これはただただ、「その時の気分」の問題なのではないか。
「どんな気分で新しい一日を迎えようとしているか」それだけのことではないのか。
だったら、やり方はありそうだ。
たとえば、朝だから「新しい一日にワクワクしてみる」のはどうか。
思いついた瞬間から、これは良さそうだと思った。
雰囲気だけでも良いが、何か言葉があるとやりやすい。
試しに、心の中で、こう言ってみた。
「あ~超~楽しみ!!」
悪くない。今日一日を、未来を楽しみにするのは、自由で、自然な感じがする。
その夜から、実験してみた。布団に入り、心の中で唱えてみる。
「あ~超~楽しみ!!」
根拠はなくとも、とにかく明日を楽しみにして寝ることを意識した。
果たして。
翌朝、私はやはり、目覚ましのアラームを止めて、もう一度眠りに落ちようとしていた。
その時、寝ぼけながらも、私の心は唱えた。
「あ~楽しみ……」
すると。
面白いことに、自分の顔がほころぶのがわかった。気分も、いつもより軽くなった。
起きていないけれど、少なくとも昨日までとは違う表情をしている。
手で額を触り、眉間にシワが寄っていない、ということを確かめた。
そのままウトウトと、二度寝に落ちていった。
次のスヌーズが鳴ったときだ。
いつもと違うことが起きた。
いつもならこの瞬間、この世の終わりのような、苦々しい気持ちになるのだ。
それが。
「あー、はい、知らせてくれてありがとう」
あの憎きスヌーズ相手に、ふわりと、そう思ったのだ。
そして、むくっと起きた。
眠くて目は開いていないが、顔は笑っていた。
「え、そんなに効くの?」我ながら驚いた。
それと同時に、ガッツポーズをしたい気分だった。
「あ~超~楽しみ!!」ただ、それだけだ。
昨日まで眉間のシワが消えないくらい顔をしかめて唸っていた人が、穏やかな顔をしてひょいと起きた。
これは、まるで、魔法の目覚ましだ。
私は面白くなって、それから毎日のように、試してみた。
「あ~超~楽しみ!!」
夜意識するのを忘れても、朝、そうだった、と、思うようになった。
すっと起きられない日もあるが、眉間にシワが深く刻まれることはない。
調子が良ければ以前より早めに、まどろみから抜け出すことができるようになった。
この調子でちょっとずつ早めて行くと、もしかしたら、早起きが習慣化するかもしれない。
今度こそ、行けるかもしれない。
私は今、それ自体が、「あ~超~楽しみ!!」になっている。
意識さえすれば、魔法の目覚ましはいつでもここにあるのだ。
もし、朝起きる時の自分の機嫌に手を焼いている方がいらっしゃったら、ぜひ、ご一緒にどうぞ。
「あ~超~楽しみ!!」
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