メディアグランプリ

ゲーマーは最高にクールなのだ


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記事:岡筋耕平(ライティング・ゼミ木曜コース)

とある打ち上げの席で先輩は僕にこう言った。

 

「岡筋君ってゲーマーみたいやもんな」

 

正直先輩のその一言はショックだった。

その理由というと実際に僕は子供のころゲーマーだった事と、それにコンプレックスを抱いていたからだ。

 

その場が空手道場の飲み会だったことも理由の一つである。

 

人は痛いところを付かれると、図星だからか屈辱感と嫌悪感を抱いてしまうと思う。

ゲーマーみたいに見えている空手家なんて全然カッコよくないじゃないか。

 

道場の中ではそこそこの腕前だったし、自分でいうのも何だけど道場の中の組み稽古

では負ける気がしなかった。組み稽古は実際の試合ではないので勝ち負けは付かないが、勝負事である以上、勝つか負けるかのゲームのような感覚は確かにある。

 

今でこそ、ユーチューバーやスマートフォンで誰でも気軽にゲームが出来るのでオタクなイメージはないかもしれないが、今から10数年前はまだゲーマー=ダサい、みたいなイメージがあった。

 

そう思われるのが嫌だったし、抵抗していた。

小さいころゲーマーだったのは事実で、小さい頃は周りの目線なんて何も気にせずにただただゲームが好きで仕方がなく楽しくて仕方がなかった。

 

厳格な父親が小学2年生になった時にいきなりスーパーファミコンを買っていたのには正直驚いた。その後買ってきた張本人が一番後悔したことは間違いない。

僕は学校の勉強も宿題もそれ以降、全くせずにゲームばっかりやっていた。

 

時には親が呆れてスーパーファミコンを隠した時があったが、住宅街の隣の隣のそのまた隣の家まで聞こえるくらいに怒りまくった。

 

学校から帰ってくると真っ先にスーパーファミコンに噛り付くわけだから、ほとんど友達と外では遊ばなかった。たまに呼ばれて遊ぶ程度で、周りの子供は野球やサッカーのチームに所属していたりしていたけど、小学校を卒業するまで一度もクラブなどには参加したことがなかった。唯一、クラブと言えるとすれば将棋倶楽部か卓球倶楽部。卓球はアウトドアっぽいけど、最底辺の腕前だった。

 

「好きこそものの上手なれ」とはよく言ったものだが、小学校の頃の僕のゲームの腕前は相当な物だったと思う。特にマリオカートでドンキーコングを操れば、全国レベルだっただろう。

 

宿題は出さないし、先生からはしょっちゅう怒られていたので周りから見れば劣等生そのものだったかもしれないけど、僕の小学生時代はとても明るかったし、毎日楽しくて仕方がなかった。

小学校低学年の頃はゲームばっかりやっていたのに、それなりの成績だったのは不思だが、高学年になると次第に勉強についていけなくなりテストの日が来るのが苦痛だった。

 

そんなだったからか、小学6年生の頃はぶくぶくと太ってしかもチビだった。

何の取り柄もないように見えても、学校から家に帰るとそこにはスーパーファミコンのパワフルプロ野球が僕を待っていた。そしてパワフルプロ野球の中では毎日僕はMVPだった。

 

中学に入るとゲームの世界じゃ飽き足らず、実際に野球部に入った。

 

問題はそこからだ。

 

周りの子たちは、小学生の時からリトルリーグなどに所属して野球経験もあるし運動神経も良い。それに比べ僕はバーチャルの中での野球しか知らない。しかもチビでデブだ。

例外なく先輩からはいじめられた。その先輩が引退した年に、次は同級生からもいじめにあったので僕の中学時代はもう目も当てられない日々だった。

 

そんなことがあったので、いつの間にか自分がゲーマーだった小学校時代を恥じるようになった。記憶の中の闇に葬ったといったら良いのだろうか。

 

その後、僕はいじめっ子を見返すために毎日体を鍛え、喧嘩術を学び、煙草を吸い始め、眉毛を剃り髪の毛を染めて、世の中に唾を吐きながら毎日を生きた。

 

それは過去の自分への反抗でもあった。だけど、いくら過去の自分を否定しても過去は消えなかった。

 

成人してからも、自分の過去は思い出したくなかった。あのバカにされた先輩の声。罵られた同級生の声が自分の過去に鍵をかけていた。

 

だから、ゲーマーと言われるのが嫌だった。

 

気が付いたら僕は30を過ぎてもう中盤を超えようとしている。その間に時代は変わってゲーマー=クールだと言われるような風潮に変わって来たと思う。

昔、ゲームに夢中になっていた世代が次の時代のゲーム機を作り、次のゲームソフトを開発する。ゲーマーは最高にクールだ。

 

僕が子供のころ、

 

「ゲームなんてやめなさい」

 

と言っていた世代が、今やポケモンGOにハマっていてデータが消えると一大事だったりするのだから可笑しなものだ。

 

電車に乗ると通勤電車の中でスマートフォンでゲームをやっていない車両を見つけるほうが難しい。

 

時代は変わる。時代が変われば立場も変わる。

あの日、先輩からゲーマーだと言われたのは、僕がそう思わなかっただけで実は称賛だったのかもしれない。

 

人生に無駄なんてない。

 

絶対に。

 

今はゲーマーだと呼ばれたことや、ゲームに夢中だった過去は僕の誇りだ。

世の中で今は笑われていることも、十年後にはひっくり返っているかもしれない。

人の価値観なんてものは時代と共に変わっていくものなのだ。

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2018-12-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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