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映画「ボヘミアン・ラプソディ」から、少し強引に生き方を学ぶ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中 眞理(ライティング・ゼミ朝コース)
 
「ボヘミアン・ラプソディ見るべきだよね」
Facebookのタイムラインで、そんな投稿を見た。
 
先輩や恩師、好きな作家さんが「読んだ方がいいよ」と言ってくれると、素直に心が受け入れる。「そうか、読んでみよう」
 
でも、同年代の同性とか、後輩から、「読んだほうがいいっす」と言われると、その場では「へえ、そうなんだ」と言いつつも、無意識に心が反発する。「絶対に読まないし」
 
物心ついたころから、自分の中に確かにある、この感じが好きではない。
同年代や、年下よりも、優れていたい、または優れている、と根っこのところで思っている自分。嫌いだわ。
 
とりわけ同年代の女子。自分と似たふるまいをする人がどうしても好きになれなかった。
似た思考回路の人が、嫌いだった。自分のオリジナリティを否定されているような気がするのだ。
たくさんいるわけではない。古くからの知り合いだったり、同級生だったり、初対面だったりするのだけれど、一瞬で「この人無理」と思ってしまう。
そして、そのネガティブな感情を出さない努力は怠らない。だってその人よりもいい人でいたい、いい人と思われたい、そんないやらしい気持ちが、いろんな場面で私を支配していた。
 
書いてしまうと、あほらしいほどに、稚拙な感情だ。おバカな自我だ。
「書く生活」は、こうやって私の化けの皮をはいでいく。気分悪く、そして気持ちいい。
 
いやになった。こんな自分がめんどうくさくなった。
こんな時間のロス、あかんやん、と強く思った。
 
自分から飛び込むことにした。
自分のこの感情は、持っておくに値しないとものすごく思ったから。
 
Facebookのタイムラインは、チェックすべきだといったその人は、まさに「この人無理」な人だった。
なんでもよかった。Facebookのタイムラインを見ることがいいことなのかどうでもいいことなのか、そんなことはどうでもよくて、「この人無理」な人にアドバイスされたことを、素直に実行してみようと思ったのだ。
 
「ボヘミアン・ラプソディ見るべきだよね」そんな投稿を見た。
「ああ、これは見たいと思っていた映画です」投稿者にそんなコメントをすると、「無理してでも、見た方がよい映画です」と返ってきた。
 
偶然は重なった。
その日、12月6日は私の誕生日だった。
「おはよう朝日です」では、いて座が第1位だった。
定休日だったその日は、3か月に1度の、歯の定期健診の予約日だった。歯医者は、二条駅の映画館のすぐ近くにあった。
Happy birthday to me.
これほどのそろった条件は、そんなにあるものではない。
 
まるで前から、予定していたかのように、11時に歯医者に到着して、12時過ぎに映画館につき、鑑賞用軽食を仕入れて、12時50分から上映の、「ボヘミアン・ラプソディ」のチケットを購入した。
 
「伝説の英ロックバンド・クイーンの成功物語を、ボーカルの故フレディ・マーキュリーの生き様とともに描く」。
流れる楽曲の数々。洋楽をかじりはじめて、生意気盛りだった高校時代がよみがえる。それだけで涙がこぼれた。
世界的なヒット曲を連発。栄光の架け橋を渡りながら、フレディの苦悩が描かれる。
家族との不和。パキスタン出身の少数民族としての自分。同性愛者としての自分。
自分に向き合うことを避けるかのように、お酒、愛人、パーティに溺れていく姿。そしてソロ活動を始めて、さらなる孤独の世界へさまよう姿。
 
かつての恋人の励ましで、彼は目覚めていった。
自分に、素直になったんだと思う。しっかり、自分に向き合ったんだと思う。
バンドのメンバーに謝罪した。家族へのカミングアウトと和解。
そしてアフリカ難民を救済するための「ライブ・エイド」への出演。クイーンはここでロックバンドとして復活した。フレディは自分の熱いこころを、歌に思い切りこめることができたのだ。ハスキーでそしてどこまでも伸びていく歌声と、力強いパフォーマンス、やさしいピアノのタッチ、心臓に鳥肌がたった。涙はもう、止まらなかった。
 
自分と向き合うことのできない自分をごまかすために、そのもやもやとした感情をバンドメンバーに、恋人に、家族にぶつけ、お金にものを言わせてド派手なふるまいをする。マスコミにたたかれる。
そんなフレディが、自分に向き合い、自分を受け入れた。その瞬間、彼の存在する世界は変わったのだと思う。
 
規模もレベルも、かけ離れていて、ほぼ、共通点はないのだけれども、
そこにうっすらと自分の姿を重ねた。
嫉妬にまみれたいやらしい自分。人よりも、優れていたい自分。
そんな自分にフタをして、なにもなかったようにふるまう自分。
まぎれもなく、それは自分。
 
そんな自分と伴走しながら、「素直になる」ということを実践してみた。
偶然が重なって、同じように人生に苦悩するフレディに出会えた。
エンターテイメントの世界は、現実とは違うだろう。この際、思い込みでもいい。
「素直になる」「向き合う」ことによって、人生の迷路から、確実に一歩、正しい道へ踏み出せる。
フレディと一緒にそんな体験をしたような気持ちになった。
涙を流しながら、映画館を後にした。
素直になろう。それが、自分の住む世界を居心地よくする近道なのだ。
 
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2018-12-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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