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メディアグランプリ

女子高校生から座席を譲られて


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:冨田洋也(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「今日は、朝から部長へのプレゼンに始まり、事後の資料改修で大変だったなぁ。明日の役員向けプレゼンの手番はどうだっけかなぁ?」
福岡の地下鉄は、関東のそれにくらべて、混雑していない。
仕事の事務所が、中心街から外れていることもあり、帰宅の地下鉄座席は満席ではあるものの、空いてるつり革は半分以上ある。
 
 
「お席どうぞ」
前触れも無く、前に座ってた女子高校生が立ち上がりざまに言う。
一瞬、両脇に人がいないことを確認し、「えっ! 私です?」
うなずく女子高校生。
衝撃である。
「いや、大丈夫ですよ」
 
丁重に断り、そそくさと扉付近に移動する。
何を考えていたのか、すっかり頭から吹っ飛んでしまった。
 
次の駅で女子高校生は、一礼して電車を降りていった。
 
マンションの子供に、初めて「おじさん」呼ばわりされた時以上のダメージである。
知り合いでもない第三者からの、評価はシビアに効く。
昔、コンビニのレジ打ちバイトが、レジ精算の時に年齢と性別をチェックしていた。
若い世代に見られると、少しウキウキしてたっけ。
後で聞くと、若く評価入れるのにお客さんが気づくとリピート率が上がるとかの裏技とかも言ってたな。その情報も怪しいもんだけれど。
 
少し落ち着いてきて、何が起きたのか振り返ってみる。
今日の格好は、現役サラリーマンの標準スーツ&いかにもな通勤コート姿である。だらしなく着ているわけでも無い。
頭頂部は寂しくなってきてるし、生え際もじわじわ後退してきているが、まだまだに思える。
仕事がハードな一日だったし思いのほか疲れが見えてしまい、具合が悪そうに見えたのだろうか?
変質者に思われたか? 女子高校生の視線は覚えていないが、こちらは考え事をしていたし、ジロジロ見ていたわけでは無いから、その線もないかなぁ。
今となっては確認のしようも無いこと。
 
今回は、結局座らなかった。いや、座れなかった。
あまりにも頭に無い事で、反射的に拒否してしまった。まさに想定外。考え及ばず。
「座席を譲られる」という引き出しは無かった。
女子高校生には申し訳ない事をした。
素直に座ってから、周辺の視線には具合悪そうな演技でもして対応すればよかった。
褒められる事では無いものの、大混雑でも無かったし、譲る方もそれなりに勇気が必要な事だもの。大抵の事は受け入れてから考える主義なのに、反省しきりである。
 
いつもは逆の立場の方が多い。
以前は、地下鉄では座席が空いてても座ることは、ほぼ無かったのに、最近は座ってしまう事が多い。そんな時でも座席周辺が同世代だと、席を譲る状況が生じる場合がある。
座席を譲れる権利は一回だけ。
若い方々の反応が早い場合が多いので、行使できる機会はあまり無いけれど、電車内で苦労されそうな方が乗ってくることはある。周りの状況次第ながら立ち上がれる事が多い。断られる場合も、たまにはあるがあまり気にならない。
譲る場合は、何故あまり気にならないのか?
 
座席を譲る側の引き出しには、「受け入れられる/受け入れられない」の、どちらも入っているからだ。長時間乗るなら、そのまま座り直すし、降りる駅ちかければ扉付近に行けば良い。
譲る想定もあり、何度も経験があるからだと思う。
 
人生もたぶん後半戦に突入した。
孫ができた同級生もいる。ようやく子供が小学生になったばかりの者もいる。結婚歴なしもいるし、バツ2もいる。病気になって不自由してる者もいる。
有名人なら、松田聖子、IKKO、トムクルーズあたりが同世代。
「今まで過ごしてきた人生が顔に出る世代になったよね」とか、この前酒飲み話もしたっけか。
「同じ時間を過ごしてるはずなのに、経験も皺の数もいろいろ差がでてくるもんだ」って、ありきたりな事に納まったんだった。
それなりに、多くの事を経験してきたつもりではいたけれど、空っぽの引き出しは多い。
10代、20代、……60代。各年代にならないと出来ないこともある。
今までの経験からで出来る事は、これからも続けられるのだろう。
しかし、周りに助けてもらう事柄は増えていくのかもしれない。
家庭内や社会で、今 実施していることが、いつサービスを受ける側になるか判らない。
それを考えるときに、想定してないことだらけだ。
 
一回だけとはいえ、席を譲られたことで新たな引き出しが一つ開いた。
帰宅してから、久々に後ろ頭をチェックしてみると白髪が、かなり目立つようになっていた。
私は翌日、初めて白髪染めを購入した。
 
***

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2018-12-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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