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自分の「夢」が、サンタクロースだとしたら


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記事:原雄貴(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
「あなたの夢は何ですか」
そう問われたら、あなたの答えは何だろうか。
明確に答えられる人もいれば、困った顔をする人もいるだろう。
でも、こう聞かれたらどうだろう。
「夢を見るために、必要なことって何ですか」
 
 
「夢を見る世の中ではなくなりました」
結構、心に刺さった一言だった。
ある企業の就職説明会でのこと。
僕は、その企業の代表取締役の方が放った一言に、言葉が出なかった。
「夢を見る世の中ではなくなった?」
よくよく聞くと、アメリカンドリームに象徴されるような、壮大な夢を描きにくくなったという。
近年、景気はなかなか好転せず、個人的に見ても、企業レベルで見ても、あまり大きな投資ができなくなった。
失敗もやりにくくなり、人々は大きな夢を持って全く知らない世界へ飛び込むよりも、安定した生活を選択するようになった。
ごもっともな話だ。
誰だって何が起こるか分からない状況は、不安で仕方ない。
明日の仕事や食事の有無を考えるのに精一杯な人にとって、壮大な夢を見ることなんて考えもしないだろう。
 
でも、僕は「夢を見る世の中ではない」ということに結構なショックを受けていた。
別に、全ての夢を見ることを否定されたわけでもない。
でも、僕は、もうこの世の中に見てもいい夢が残っていないような感覚に包まれた。
この企業だって、色々な新規事業を開拓して、どこかに活路を見出そうとしている。
その企業の代表取締役の方が、「夢を見る世の中ではない」なんて言わなければならない。
就職説明会が終わっても、僕の中には「夢を見る世の中ではない」がずっしりと居座った。
「本当に夢ってなくなってしまったのだろうか」
 
夢なんてない。
そう考えている人は少なくないのではないか。
近年、大人だけでなく、子どもも夢を持てずにいる。
小学生の頃、「あなたの将来の夢は何ですか」と聞かれることが一度はあっただろう。
でも、最近は「パイロットになりたい」とか「プロスポーツ選手になりたい」というような、いわゆる大きな夢を素直に答える小学生が少なくなったような気がする。
「サラリーマンになる」
「特にない」
さらに衝撃的な答えは、
「フリーターになるしかない」
小学生のうちから、これである。
子どもは大人たちをよく見ている。
子どもたちの将来の夢の答えは、確実に今の世の中を映し出している。
確かに、大きな夢を描きにくい世の中になったのかもしれない。
 
あの就職説明会が終わってしばらくすると、就職先が決まった。
でも、「夢を見る世の中ではなくなりました」は頭の片隅に健在なままだった。
「夢のない世の中」に抵抗感を抱きながらも、自分だってやりたいことがあるわけではない。
そんな自分に煮え切らないでいた、年末のことだった。
町中を歩いていると、あるお店の窓に、赤い服を着たご老人が立っているのが目に入った。
人形のサンタクロースだ。
「もうクリスマスか」
サンタクロースを中心として、窓にはいろいろなイルミネーションやプレゼントの箱が飾られている。
昔からクリスマスが大好きな僕は、しばらく立ち止まって、「夢」がいっぱいの窓を眺めていた。
こんなクリスマスの光景をみると、僕はいつも思い出す映画がある。
 
そのタイトルは、「ポーラーエクスプレス」
 
クリスマスイブの夜に、主人公の少年が自分の部屋で寝ていると、突然、家の前に汽車が轟音をたててやってくる。
少年はその汽車に乗って、他の国や地域から来た子ども達と北極へ行く。
そして、少年は汽車に乗ってきた子ども達の中で1人しかもらえない「クリスマス最初のプレゼント」をもらうという話だ。
この映画の中でも、印象的なセリフがあった。
 
「疑り深いんだ」
 
見聞きしたことをすぐに疑ってしまう主人公の少年に、汽車の中で出会った男性が放ったものだ。
主人公の少年は、ものごとを信じられない性格だった。
特に、サンタクロースの存在については、かなり疑っていた。
ニセのサンタクロースが住居侵入で捕まったニュースが流れる。
サンタクロースの正体が、自分の親なのかもしれないという疑念も出てくる。
少年は、ますますサンタクロースを信じられなかった。
そんな少年は、北極の広場でサンタクロースが現れても、最初は見ることができなかった。
サンタクロースは、その存在を信じている人にしか見えないからだ。
これは、サンタクロースがトナカイにつける鈴の音についても同じ。
サンタクロースを信じている人にしか、鈴の音は聞こえない。
広場に現れたサンタクロースを見たくなった少年は、サンタクロースを信じることにした。
この改心の甲斐あって、少年は無事に鈴の音を聞き、サンタクロースの姿を見ることができたのだった。
 
ここまでのストーリーを思い出した時だった。
ふと、一つの考えが浮かんだ。
 
「もしかしたら、夢も同じかもしれない」
 
夢は、「本当に夢が見つかる」と信じた人にしか見られないものだ。
もちろん、自分の夢がいつ見つかるかなんて、誰にも分からない。
夢を見つけたところで、それが叶うという保証はない。
でも、「夢を見つけたい!」という強い気持ちがなければ、見つかる夢も見つからないだろう。
「夢がない」と言えるのであれば、それは夢の存在を信じていないということだろう。
逆に、夢の存在を信じれば、夢が自分に訪れたときに、その姿を見ることができる。
「この夢は叶う」と信じれば、本当に夢が叶った瞬間を見られる可能性は高まる。
その夢が苦心の末に叶ったら、それは最高のプレゼントだ。
そのプレゼントは、他の人が何と言おうと、自分のかけがえのない宝になるだろう。
信じた人にしか見られないサンタクロースがくれる、プレゼントのように。
夢を見つけるために必要なのは、「信じる」ことだ。
 
「夢、探してみようか」
窓の中からやさしく微笑むサンタクロースを見ながら、僕はつぶやいた。
これから先、夢に出会えるかどうかは分からない。
でも、もしあるんだとしたら会いたい。
「よし、行こう!」
寒い北風が吹きだした道を、僕は明るく歩み始めた。
 
あなたにも、かけがえのない「夢」が訪れますように。
 
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2018-12-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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