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飲みニュケーションに参加しない私を、勝手な人と思いますか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:佐々木さおり(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
「今日の飲み会は、いつもの居酒屋で19時からです」
朝礼が終わるタイミングで聞こえる、終業後の飲み会のアナウンス。
一般社員はにこやかに会話を交わす中、私にはこれほどにはないくらい苦痛感じてしまう。
 
私は、子供が生まれてこのかた、会社の飲み会に参加したことがない。
もう5年以上にもなる。
はじめの頃は、社員も気を使って誘ってくれていたが、私が絶対に来れないことを知って、ここ数年は誘われることもなくなった。
行きたくないのではない。
夫の帰りも遅く、実家にも預けられない私は、平日の夜に一人外出することは到底無理という理由で、泣く泣く諦めるしかない、それだけだ。
でも、他人から見たら、行きたくないから調整しないだけのようにみえているようだ。
日々時間内で仕事を処理するために、脇目も振らず業務をこなす私の姿は、取っ付きにくく、気難しい人に見えているようだ。
飲みニュケーションに参加しない、業務の最中も無駄に喋らない私は、日を追うごとに、周りとの疎外感を抱くようになってしまった。
 
本当は、いつも寂しいと思っている。
寂しい思いを表に出さないように、悟られないようにと、余計に心を閉ざし続けている。
 
そんな中、私の勤める会社の業績が悪化してきた。
毎日の朝礼で部長が発する言葉からも、苛立ちが感じられるようになった。
朝礼後、部長がいなくなった社内の会話はいつも
「また、今日も長かったよね……」
「また、部長の小言が始まったよ……」
「はいはい、って感じだよねー」
どこか、他人事のようだ。
 
はじめは私も、同調しようとうなづき、微笑んでいたが、毎日繰り返される他人事のような会話のあと、
「何やってるんだろう、自分」
と、ふと感じている自分がいた。
毎日毎日、小さな文句を聞いている自分が、
微笑んで同調している自分が、
大きなストレスを感じていることに、その時気がついた。
 
5年間の社内コミュニケーションがうまく取れないストレスに、日々の小さな文句のストレス。
この2つのストレスは、知らず知らずのうちに私の体をむしばんでいたようで、気がつけば体重もすっかり落ちていた。
 
「もう辞めようかな……」
帰りの車を運転しながら、涙が溢れた。
ただ、今辞めると、悔しい気もしていた。
その時ふとある日の言葉を思い出した。
私の尊敬する人が、上司にこう言われたそうだ。
「会社はそうそうクビにしないから、好きなようにやってみろ」
 
「そうだ! 辞めてもいいと思うんだから、クビになったっていいんだ!」
 
それに気づいた瞬間、吹っ切れた自分がいた。
そこからの行動は早かった。
 
まずやったのは「いい人になるのをやめる事」
 
気分の乗らない会話に参加することをやめた。
ネガティブなことばかり口にする人、他人の悪いところばかり指摘する人と会話をすることを極力避けた。
女同士でよくある「どうする〜? え〜、決めらんないよね〜」 という譲り合いのような、一種の腹の探り合いもやめた。
 
私は「自分勝手な人」を演じるという道を、歩もうと決意した。
 
実際にやってみると、はじめは周りの人が自分のことを影で何か言っているのも聴こえて、嫌な気分にもなったが、あの日のストレスに比べたら、全然我慢できる程度だった。
ときに、女子同士の会話に入りたい気持ちも出るが、下手に会話に入ると、空気が凍りつくのも目に見えているので、入ることは極力避けた。
 
業務についても、みんなで仲良く上司の文句を言いながら、という、自分にとっての利益しか考えない業務の進め方をやめた。
 
だんだん、自分勝手な人として定着し始めると、無駄なストレスがどんどん減っている自分に気がついた。
業務も、本来進めるべき方向に進み始めた。
本来は、同僚に向けての自分勝手な人の予定だったが、気がつけば上司に向けても「自分勝手な人」を演じ始めていた。
上司に意見するようになりはじめた。
はじめは上司も、今まで影に潜んでいた私のことを「大したこともできないだろう」と思っていたので、聞く耳を持たなかったが、試しに行った策で業績が改善され始めてしまったので、聞くしかなくなってしまったようだ。
 
私は日々、明日クビになってもいい、そう思っているので、自分の利益は度返しで発言し、業務の範囲外のことも、会社にとって良いと思えば引き受ける。
業績が下がれば、リストラも始まるだろう。
少しでも社員が辞めなくて済むように、企業を存続させる手段を考え、企業と社員にとって良いか、悪いか、それだけを考えている。
 
そこでまた、ふと気がついた。
「自分勝手な人」になるつもりだったのに、気がつけば誰よりも自分以外のことを大事に思う人になっていた。
それに気がついた私は、ひとりクスッと笑ってしまった。
今までの自分は、他人に嫌われる勇気がない、それこそが自分勝手な人だったのではないろうか、と。
 
勝手そうに見える人の多くは、自分正直に、それでいて人一倍優しさを兼ね備えているのかもしれない。
私が目指していた自分勝手な人は、悪役を自ら引き受けるだけの強さのある、本当の悪人ではない人だという事が、自分自身経験して見えてしまったと同時に、自分のことが少し好きになった気がした。
 
さあ、明日からも私は、飲みニュケーションにも参加しない、勝手なことをいう人に徹しようじゃないか。

 
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2018-12-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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