メディアグランプリ

浮気者から積ん読本たちへの謝罪


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記事:slowman(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
 
この師走の、もうすぐ年も越そうかというこの時期に、視界に入れたくないものがボンヤリと目に入って来た。今年になって購入したものを含めてずっと積まれっぱなしの本たち。
 
購入時には「あぁ、これ必要だよなあ」と本屋やオンラインで購入し、部屋で包装から取り出すまでには至っている。
 
しかし、その後が続かない。
積まれ続けて早数年。
私の中では、出来るなら見ずに過ごしたいものになりつつある。なのに、本屋やオンラインで少しでも気になるとついつい購入してしまって本たちは徐々に確実に大きくなっていく。
 
今から20年近く前、いわゆる積ん読本として部屋の片隅に置かれた本たちが巨大化し、いよいよもってどうにかせざるを得なくなった恐ろしい記憶が頭の中をよぎった。
 
その当時は結局、おおよそ8割、9割方の本たちを、斜め読みだか、何読みだかわからないただ目を通すだけのような形で無理やり読んだことにし、残りの目を通すことすら出来な買った本や、購入当時は欲しかったんだろうが読んだ後となっては要らないと思う本は、古本屋さんへ行って二束三文で換金した記憶がある。
 
今、視界に映る本たちは、購入した当時も、そして今も必要な本たちばかりだ。ただ、目を通すところまでは至らないだけなのだ。
 
一旦目につくと、どうしても横目でチラチラ見てしまう。あの本たちのページを早くめくらないといけない。
 
「まだ放っておく気なの?」
 
読まれない本たちが積まれていく度に無言の圧力が大きくなる。
 
さて、これらの本を読む時間は無いものか?
というと、もう実はいくらでもある、とまではいかないが、一日一時間くらいなら捻出できるはずである。
 
昔は、夜の寝る前に小説を読むのが好きだった。寝る一時間ほど前から、寝たまま、スタンドの光だけで読むことで、なんだかその世界に浸れるのが楽しかったのだが、ここ数年は全くと言っていいほど寝る前に読むこともなくなった。
 
なぜか?
理由は目がショボショボしてきたとか、仕事が忙しくなったとか、色んな言い訳が浮かんだが、結局はネットで動画を見るようになったからである。
なんで動画を見るようになったのかは分からない。ただ見ているとあっという間に時間は過ぎていく。時計を見れば深夜となっていて、「ヤバい、もう寝ないと朝起きれない」とスマホを閉じるなんてこともしばしばある。
 
本たちと動画を比べてみると、本を読み終わるのには何時間もかかる。特に私は読むのが遅い。が、動画は1本あたりせいぜい数分。
購入した本たちは、ほとんどがビジネス書だったり実用書だったりとすぐに読み終えられるものはない。しかし、動画の方はお手軽だし、頭も使わない。役に立つものがゼロではないが、おおよそ刹那の楽しみである。
 
本気で少しでも改めようと思うなら、動画をみるのを制限して積ん読本を読むような対策でも取れば良いのにとは思ってはいるのだ。
思ってはいるのだが「人は易きにつくものなのだ」と、自分を正当化しながら、簡単に楽しめる動画のトリコになってしまっている。
 
 
「どうやってこの状態から切りぬけようか? まずは動画を見ないようにするには、スマホに触らないようにしようではないか」
その気もないのに建前だけ話す男のような呟きが頭の中に響く。
 
すると
「スマホに触らないですって? そんなの無理に決まってるじゃない。仕事のやり取りで電話だの、チャットだの、使わない日などないじゃない」
と、どこからか悪魔のような囁きが聞こえてくる。
 
「では、夜10時には、スマホの電源を切ってしまおう」
 
「あら、朝寝坊するからってタイマーつけてるのにタイマー無くて起きれるのかしら?」
 
「で、では動画アプリを削除するか……」
 
「もう、動画を見るの終わりにしたいの? できないクセに」
 
無為に動画を見続ける怠惰な習慣からそう簡単には逃れられそうにない。
まるでその魅力から離れられなくなるのを知っている小悪魔的な女性に翻弄されているような気分。
 
そう考えると積ん読となった本たちは、さながら旦那の浮気を家でじっと耐えて待つ古風な妻のようなものだろうか。
 
積ん読された本たちよ、今まで放っておいてすまない。でも、読む気がなくて購入した訳ではないのだ。どこかでいつも読もう、読もうとしているのだ。ただ少し、少しだけ、面倒だと思ってしまって手に取ることが億劫になっていただけなのだ。君たちが与えてくれる知識は、私の今後に本当に役立つと分かっている。だから、もうしばらく待ってくれ。動画を見る回数は減らすから。いや、見ないようにするから。少しずつでも君たちを読むように改めるから。だから許してちょうだい。
 
なんだか、旦那にもなったことがなければ、浮気の経験もないのに、浮気した旦那が妻に頭を下げて謝っている気分になってきた。
 
せっかく読みたいと思って買った本たちである。ここ数年は動画にうつつをぬかしてきたが、もう年末。新しい年に変わることだし、来年はこの積ん読状態から抜け出そう。
少しの時間でも読書に当てていこうではないか。来年の今頃は、積ん読本たちは完読されているに違いない。あぁ、そうとも。そうだとも。
よし。そう決めたら、今年一杯動画を楽しもうではないか。
 
……ん?
……こういうの、やっぱり浮気グセなのだろうか? 

***

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2018-12-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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