「糖質制限ダイエット」の栄光と落とし穴
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:松本 陽子(ライティング・ゼミ平日コース)
「痩せたね!」
久々に顔を合わせるママ友にずいぶんと驚かれていた。
そう、私は1年間かけて「糖質制限ダイエット」ダイエットに成功していたのである。
ずばり、1年で12キロ痩せた。
だいたい1月に1キロのマイナス。皆がうらやむ理想的なペースでの痩せ方だった……。
私はそのつもりでいた。
実際に、芸能人なども同じダイエットをして効果を出している人たちもいるし、
「糖質制限ダイエット」で検索しても、成功者がたくさん独自の糖質制限方法などをブログで紹介していた。
しかし後で聞くと、痩せた私に、「痩せたね」と驚く友人たちは、実は私が何か重い病気なのでは? と思っていたようだ。
服もワンサイズダウンして、楽しんでいたつもりだが、実際の私の頬は痩せこけ今までなかった「ほうれい線」も少し現れはじめていた。
家族や馴染みの整骨院の先生からも
「もうダイエットやめなさい」と言われるほどだった。
「あと1キロ痩せたい、あと1キロ」
痩せることが快感になっていて、中毒のようになっていたその頃の私。
そもそもダイエットを始めたきっかけは……。
2人目を出産した後、なぜか体重の増加がとまらず
過去、自己最高の体重まで増えていた。
実際一度の食事に、うどんなら2杯、おにぎりなら3つは食べられるほどだった。
そんな時、偶然テレビでみかけた「糖質制限ダイエット」。芸能人が2、3ヶ月で成果をだしていることに衝撃をうけた。
さっそく本を買ってきて「その生活」がスタートした。
その「糖質制限ダイエット」とは
ネットで調べた内容を要約すると、
「炭水化物を制限することで、本来最初に糖を燃焼してエネルギーとするところを、糖がないと体内にある中性脂肪が分解され利用されること。
また、糖質を制限することで、血糖値の急激な上昇を抑え……(省略)。結果、糖を脂肪に取り込みにくくなり、太りにくくなるとのこと」
だそうだ。
そして、その「炭水化物」の代表は、米、パン、うどんなど人間が昔から「主食」としてきたものである。
その主食を減らしたり抜いたりして、その代わりに「肉・野菜」などを食べるというダイエットだ。肉やチーズやマヨネーズなどもOKなので、ダイエットの割に美味しいものも食べられる。
育児や家事など忙しい中でも、台所に立つ時間はかろうじて取れたので、
糖質制限となるダイエットメニューを、時間をみつけては作りストックした。
朝昼晩、食べられる時はそれを食べた。
外食でもなるべく糖質を抜いた。
食べ始めて2週間ほどして、さっそく体重に変化がみられた。
増え続けていた体重計の数値がはじめて1キロ下がった。
すごいと思った。
この「明確な結果」が私のダイエットへの情熱を加速させてしまっていた。
糖質を「制限」していたらよかったものの、糖質をほぼ0「ゼロ」まで抜くようになってしまっていった。
パンやお米など、炭水化物を全く摂らない日もあった。
飲み物は水かお茶かブラックコーヒーのみ。スナック菓子など絶対にダメ。
子供がハンバーガーを食べたいと言えば、一緒に行きコーヒーを飲み美味しそうなポテトは我慢した。どうしてもハンバーガーなど食べたくなったらチキンバーガーを選び、パンの部分を捨てたりもした。
人との付き合いで外食になると、食べられるメニューを必死に探した。
大変だったが、この方法だと1ヶ月に1キロ痩せることはほぼ確実だった。
だが、これはやり過ぎると危険なダイエットだったのだ。
その頃、ダイエットのためのメニューを作ること、
そして毎朝、体重計にのり体重をみることが、唯一「自分のための楽しみな時間」だった。
体重計に乗って、目標体重に達すると、
心の底から達成感がこみあげた。
その時期、こんなに爽快なことは他になかった。
忙しい生活の中の唯一の趣味となり、没頭し過ぎてしまっていた。
そして、痩せた私に反応する友人たちに対して優越感さえあった。
しかし、効果が明確になり始めてきたころ、毎年受けている健康診断で初めて「再検査」の通知がきたのだ。
脳ドックでひっかかった。
そのダイエットが原因かはわからないが、きっとそれだと思った。
なぜなら糖は脳を使うときに大事な成分。
それを極度に抑えることで弊害がないわけがない。実際に、その頃仕事中ふらつくことがたまにあった。
先にも書いたが、肌にはしわもでき、気のせいか髪の毛も多く抜け出したように思った。
健康が乱れ始めていた。
最近では専門家は、この「炭水化物抜きダイエット」はやりすぎると危険だと警笛をならしているとのこと。こちらもネット上でたくさん情報が出始めている。
それが原因かははっきりしていないが、糖質を制限しすぎたダイエットをしている人で死人もでているとのことだった。やり過ぎてはいけないのだ。
私がその後受けた脳ドックの再検査は、幸いなことに異常はなかったものの、自分の健康を初めて不安に思い悩んだ数週間を味わった。再検査の結果を聞くまでは、生きた心地がしないほど追い詰められた気持ちになっていた。
そして私は糖質制限ダイエットをやめた。
ゆるやかに、ご飯をもとのように食べるようになった。
白米はおいしかった。
適度な運動と、適度な食生活でダイエットしていくのがやはり一番。
ダイエットに近道などない。
効果が高いダイエットには落とし穴がある。
「ダイエット」は私の永遠のテーマである。
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