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メディアグランプリ

弘法は筆を選ぶ、もちろん単語カードも選ぶ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:臼井裕之(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「あんなもの、何のためにあるんだろう」
あなたにもそう思ったものがあるだろうか。無用の長物と思われて仕方がないもの。私にはあった。
 
「これに英単語を書き込んで覚えなさい」
中学校に入ったとき、先生にこういわれて買った単語カードである。私はこの単語カードとの相性が悪かったようだ。
 
素直にいわれた通り、単語カードを買って単語をいくつか書き込んでみたが、その後はほったらかし。どうも私がずぼらなせいで、使いこなせなかったらしい。
 
後付けの理由がないわけではない。例えば「語学に上達するには、単語だけを覚えていてはダメだ」とよくいう。その心は、単語は孤立した単語としてではなく、一つの文という塊として覚えなければ役に立たないというところにある。いうまでもなく、単語カードはかなり小さいから、一文を全部書き込むことは難しい……。しかし要は相性の問題のような気がする。
 
私は自称「語学オタク」でいろんな言語をかじってきたが、そんなわけで単語カードは使わないでなんとかしてきた。
 
その風向きが変わってきたのは、昨年3月末に6年間滞在した中国から帰って来てからである。
 
単語カードは自分には合わないと知っていたはずなのに、なぜか日本へ帰ってまもなく、伝統的な単語カードを買っている。自分でも理解できない。おそらく、中学生の頃の刷り込みのせいだろう。
 
しかし結局、中国にいてもなかなか上達しなかった中国語の単語を、数個書き込んだだけで、投げ出してしまった。
 
ところが、転機は5月に訪れた。
 
ある日、京都河原町にある丸善に行った。丸善はもちろん本屋だが、地下1階のかなりのスペースが文房具売り場になっている。
 
そこで、素敵な大人に成長した単語カードを見つけたのである。
 
紙の大きさが、中学生の頃に買わされた単語カードの3倍くらいある。表紙の色は黒か茶色が選べ、金色で「CARD MEMO」と刻まれている。「大人のためのカードメモ」という名前で売られていた。
 
思わず買ってしまった。
 
ちょうどその時、外国人に日本語を教える先生を養成する講座に通っていた。最初の3か月は言語学や日本語学の理論を学ぶ期間で、科目ごとに小テストがあった。
 
早速このテスト対策に使ってみた。
 
カードの表に概念を書く。もう裏にその概念の定義を書く。大きめの「カードメモ」だからこそできることだ。
 
しかも授業中にすぐカードに覚えるべき概念やその定義を書き込んで、授業が終わったらすぐに暗記ができるようにした。これは10代の頃の苦い反省に立脚している。ずぼらな私は、授業が終わったらカード作成などしないからだ。
 
その結果、アップグレードした単語カード=「大人のためのカードメモ」は、嘘のように役に立った。
 
7月になると、日本語教師の養成講座は実習に入り、もう暗記の必要はなくなった。
 
そこで次に私は、少年の日の見果てぬ夢に、この「大人のためのカードメモ」で再チャレンジしてみることにした。
 
中学2年生の頃、図書館にラテン語の独習書があったので、ラテン語を覚えようとしたことがあった。しかし、まだ英語もろくにできない頃だったから、すぐに挫折した。
 
ラテン語はかなり習得が難しいことで知られている。例えば名詞は6つの格を持ち、しかもそれが単数と複数で異なっている。
 
格というのは、英語でも代名詞には残っている。I, my, meというやつだ。主語=「私は」は主格Iとなり、所有=「私の」は属格my、そして目的語=「私を」は対格meになる。
 
この格が、ラテン語の名詞には6つもあるわけだ。例えば「薔薇は」はローサrosa、「薔薇の」はローサエrosae、「薔薇に」はローサエrosae、「薔薇を」はローサムrosam、「薔薇から」はローサーrosā、「薔薇よ」はローサrosaといった具合。
 
ちなみに、かつての私を含め、大抵の人が「ローサ、ローサエ、ローサエ、ローサム」あたりで嫌になって、挫折することになっている。
 
このラテン語に「大人のためのカードメモ」で挑戦した。挑戦を始めて半年余り、ラテン語がペラペラにはもちろんなっていない。
 
しかし、rosaを含めてだいたい5種類ある名詞の変化を、あらかた覚えてしまった。ラテン語の文章を見ると、なんとなく意味が分かる。
 
なんでもっと早く出会わなかったのだろう、この「大人のためのカードメモ」。
大人になりすぎてから出会ってしまった。
 
「弘法は筆を選ばず」という。しかし実際には弘法大師、つまり空海はそんなことを言っていないそうだ。それどころか、「能書は必ず好筆をもちう」(優れた書家は必ずいい筆を使う)と書き残されているという。つまり、書道に上達したければ、自分にあった筆を探しなさい、とアドバイスしているようなものだ。
 
弘法様は中国語も、梵語(サンスクリット)もおできになったというから、語学オタクの仲間である。自分に合った筆を選ぶべきなら、もちろん単語カードも自分に合ったものを選ぶべきだろう。
 
私のように単語カードを使いこなせなかった過去がある人がいたら、ぜひ「大人のためのカードメモ」を試してみてほしい。若いころには思いもつかなかった、新しいフロンティアが開けてくるかもしれない。
 
この文は広告ではないので、「大人のためのカードメモ」の発売元は明かさない。大きな文房具店で探していただければと思う。
 
 
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2019-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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