メディアグランプリ

定期的に不幸中の幸いがやってくる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:mayu(ライティング・ゼミ土曜コース)
 
 
「健康診断責任者のAです。すぐに病院に行った方が良いので、お電話いたしました」
 
知らない人から会社に電話がかかってきたのは、健康診断を受診した数時間後、定時を少し過ぎた頃だった。どうやら、健康診断のオプションで付けたエコー検査で何かが出ており、私の分だけ特別に、すぐ先生に診てもらい、書類を用意したから明日取りに来てほしい。ということらしい。
 
 
この時の健康診断は2年ぶりだったため、オプションを全部付けて、全身をチェックしようと決めていた。人生初のエコー検査は、やたらグリグリされ、終わったかなと思ったら、カラーのエコーがあるので、もう一回診させてくださいと言われた。今思えば多分、ダブルチェックをしていたのだと思う。
 
正直、状況がよく理解できなかった。
私は、小学校・中学校・高校と無遅刻無欠席の超健康優良児で、病気とは無縁。
中学校・高校は部活動に明け暮れていて、特に中学校は、ほぼ週7+部活の後、大人に混じって夜にも練習をするくらいだったし、体力にも自信があった。
しいて言えば、高校からは健康診断で貧血が引っかかるようになり、社会人になるとDやF判定が出たこともあるが、鉄剤を飲んでイッキに治したし、その後は比較的落ち着いていた。
そんな健康体なはずの私に、とにかく早く病院に行けと言うのだ。
 
 
翌朝、書類を受け取りに行くと、昨日電話で会話をした責任者の方が出てきて、こう言った。
 
「落ち着いて聞いてくださいね。昨日のエコー検査で腫瘍が見つかりました」
 
 
それを聞いた私の感想は、
「そうかー、何か見つかったかー」
ただそれだけだった。
 
現在地から一番近い大きい病院はどこか、午後外来受付しているのか、今日は仕事で無理そうなので明日は土曜日だけれど診てもらえるだろうかなど質問をしていたら、その場にいた健康診断のスタッフのみなさんがすごく親身になって答えてくれ、励ましの言葉までかけてくれて、不思議な感じだった。
 
職場に戻り、リーダーに状況を報告すると、明日ではなく、今から病院に行った方がいいと言われたため、お言葉に甘えて急遽お休みを頂き、病院へ向かうことにした。
 
 
病院では、エコー検査をした。腫瘍があることはすぐに確認ができたが、正確なことは細胞を採取し検査をしないとわからないらしい。生検(私の場合は、背中から針を刺して腫瘍の細胞をほんの少し取り、良性か悪性か調べる1日入院の検査)のメリットとデメリットを説明され、私は手術前に生検をすることを決めた。
入院に無縁の生活をしてきたので、予行練習になるかも。
そんな思考もちょっと働いていたように思う。
 
数日後に検査をし、その約一週間後に生検と血液検査の結果を聞いた。
 
 
「単刀直入に言うと、悪性でした。癌です。ただ、血液検査の結果を見る限り、現時点では全身に転移している可能性は低そうです。不幸中の幸いです。腫瘍が大きいので、全摘出しないと転移のリスクが高いと思います」
 
先生にそう言われた。
そして、健康診断の時からあまり時間が経っていないにも関わらず、腫瘍が少し大きくなっているということも判り、直近で手術が可能な日(健康診断当日の電話を受けてから11日後)の手術が決まった。
 
 
手術は麻酔で眠っていることもあり、あっけなかった。
麻酔が出ているマスクのようなものを口のあたりにつけられて、「今から5つ数えるので合わせて大きく深呼吸をしてくださいねー。いーちー、にーいー、さーんー……」とカウントの途中で記憶が無くなり、体を揺すられて目を開けると、もう病室のベッドの上だったのだ。
摘出した癌はステージⅡでその場に留まって大きくなるタイプだったため、比較的予後がよいと言われるものだった。
 
癌になった原因は不明。
ただ、食事に関しては、塩分のとりすぎには注意するようにと言われたため、退院後は食生活と生活リズムを見直そうと思った。
 
24時前就寝を目標に早めに帰宅するようにし、今まで夕飯代わりにほぼ毎日食べていたお菓子を止めた。そうやって自分の身体に気を使って過ごしていたはずなのに、できれば手術後の痛みはもう二度と味わいたくないと思っていたはずなのに、数年経つとどうだろうか、すっかり元通りなのである。
 
元に戻った生活を続けて数回目の経過観察で、今度は「子宮周辺に増大傾向の腫瘤を認める」という検査結果が出た。運良くその日に婦人科の先生に診てもらえることになり、ちょうど今日キャンセルが出たという数日後にMRI検査することが決まった。検査結果は子宮内膜症のステージ1。
初期の初期だし、今は5人に1人がなるもの。早く見つかって良かった。不幸中の幸いだと言われた。
最悪の事態にはならないだろうとは思っていたが、良いのか悪いのか、また不幸中の幸いを引き寄せてしまった。
 
 
現在、癌摘出後と子宮内膜症の経過観察中だが、今のところ運が良く、再発や悪化は無い。
 
ただ、最近また食生活や生活リズムが乱れ、身体に良くないことを続けているという自覚があるため、こういう生活をしていると、私に気づきを与えるためなのか、三度目の不幸中の幸いが来てしまいそうで、少し気を引き締めなければと思っているところである。
 
願わくは、不幸中で強運を発揮するのではなく、普通の時に強運を引き寄せ、幸せに過ごしたい。そう思う。
 
 
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2019-02-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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