食卓という贈り物
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:鈴木宙夢(ライティングゼミ・平日コース)
「食卓」と聞いて何を思い浮かぶだろうか。
日常の食事かも知れないし、特別な記念日を連想する人もいるだろう。
また、誰かとともに囲むこともあれば、1人で食事を取ることもあるかもしれない。
でも、そんな「食卓」において大切なことはなんなのだろうか。きっと、美味しい料理があることだけではない気がする。
様様な答えがあると思うが、
私は、「食卓」とは贈り物だと思う。
今回は、そんなことを感じたある出来事を綴ることにする。
先日、私は島根県の離島にいた。
離島に流れる日常は、都会であくせく生活している僕らにとっては非日常だ。
ただ、島で歩いているだけでも、いろんなイベントが発生する。
「そこの兄ちゃん! ちょっと寄ってきな!」
島を散歩していたら、見知らぬおばあちゃんが縁側から声をかけてくる。気づいたら一緒にお菓子とコーヒーを頂いている。あと、朝取ってきたと思われるなまこももらっている。
「よお、若造。夕飯に食べなさい」
お世話になったおじさんが、とりたての魚や野菜をくれる。スーパーでは見かけないBIGなサザエやアワビ。東京で買ったらいくらするんだろう。
「ちょっと、手あいてる〜??」
立ち寄ったカフェのお母さんと一緒にジャム作りをする。なんなら、子供達の子守もさせられいる。労働だったはずだけど、こんなに感謝されるし、働いたみたいな感覚は全くない。
島の人たちは、心地よく僕らに踏み込んで来てくれる。
都会では、街ですれ違う人々はどんなに頑張っても他人であるはずなのに、島では見返りをもとめない優しさで溢れている。なぜ、このような事が出来るのか。島の文化やその人たちの性格は、大きくあるだろうが、私はあることに気がついた。
それは、「食」が人を繋いでいるという事だ。
「食」は、日常的に触れるものだし、住んでいる地域や、年齢、性別問わず、自分の中で好みの味や、食にまつわるエピソードを持っている。食の場というのは、初対面の人やよそ者に対しても関わりしろを生んでくれる。
なんという発見だろう。今まで、食事なんて健康に三食食べらればいいやくらいに思っていたものだったが、食に対する可能性に気がついたのだ。たしかに、仲良くなりたい人、関係性を良くしたいひとに対して、食事を誘うという口実を作るのは一般的だ。
だから僕らは、島の人たちの優しさに恩返しをしたいと思い、最終日の夜に手作りの料理を振る舞って「食卓」をつくることにした。ただ、いざ振る舞おうと思っても、普段料理をしない僕にとっては、挑戦の連続だった。
献立作りから、買い物、調理、不慣れながらも食べてくれる人に喜んでもらえるよう一生懸命作った。この食卓に対してどんな想いがあるのか。食卓の中でどんな会話が生まれると嬉しいか、味だけじゃなくて、彩りや、場の雰囲気など、喜んでもらえるように心を込めた。
僕は子供がたくさんいる家族に向けて食卓を作ることにした。
そんな家族に喜んでもらえるよう、なるべく手を使いながら楽しく食べれらるように、チーズフォンデュを作ったり、野菜を星型など、色んな形に切ったりしてみた。
そんな努力が功を奏したのか、食卓は和気あいあいと子供達もたくさん飽きずに楽しんで食べてくれたし、美味しいと言ってくれたその言葉で胸がいっぱいだった。
それに、「食卓」を作ることで、一緒につくった仲間との関係性も構築されてくる。このプロセスこそが、互いにとってのギフトである。
きっと、この食卓は家族にとってもなかなかない経験だったと思うし、記憶に残ってくれると嬉しい。そして何より僕らにとって誰かを思って食事を作ることは、本当に楽しい経験だった。このことはまるで、誰かに贈り物をするときの感覚と似ていると思う。その人の好みや喜ぶ姿を想像し、心を込めてものや体験を贈るからだ。
そして自分は、人に対して食卓を作ってみることで、これまで自分を思って作ってくれた食卓に対しての心からの感謝が芽生えた。
誕生日、受験前日の夕飯、季節の行事での食事、ピクニックに持っていったお弁当など。
それらは全て当たり前ではない、作ってくれた人の想いと労力でできている。「食卓」を作るというのは、食べてくれる人を想像し、食を通してその人との自分との間を良くしていくための場だ。「食卓」を見つめ直すことは、「食卓」を共にする人との関係性を見直すこと。
毎日三食ある食事。そこに想いを込めれば、毎日人に贈り物ができる。作ってくれた人に想いを馳せれば、毎日贈り物を受け取れる。
これからは、食卓に込められた想いに目を向けてはいかがだろうか。
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