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南米の合気道事情


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:葉田さつき(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「あれが道場だよ」
サンパウロ中心部から車で約3時間、町の中心部の小高い丘の上にその建物は建っていた。瓦ぶきの白い2階建ての建物。フーン、日本風なんだ、と思って横の壁をみて、どぎもを抜かれた。壁一面大きな筆字で『心』と書いてある。「何、これ、すごい」と思ったら、その合気道時道場の名前は「心(こころ)道場」だった。
 
私は南米旅行が大好きで、かつ合気道も長年やっている。私の先生がアルゼンチンとブラジルの道場に呼ばれて教えに行くと聞いて、即、同行を申し出た。
 
先生に付いて、ブラジル、アルゼンチンと何か所か合気道道場を訪問した。まず、名前にびっくりした。「修行道場」、「道(みち)道場」、「善性道場」、「精神道場」、「天岩戸道場」、「山道場」、「精気道場」等。道場名は日本では地名をつけていることが多いが、南米では、『心を鍛える、整える』意味のものが多いことにびっくりした。
そうか、合気道の中にある『心を鍛える、整える』ことにひかれて、またそれを売りにして合気道をやっているのだなと思った。
 
練習は日本とほぼ同じ。ただ、先生が見本を見せてくれているときには座ってみているのだが、上段者からきちんと順に並ぶ。日本では気にしていないところが多い。合気道歴25年以上、4段を持っている私は道場長より上座に座るように案内されることがあり、戸惑ってしまった。また、終わった後、初段とか2段の人が、競って私の袴をたたみたがって、びっくりしてしまった。私の所属道場では先生も自分でたたんでいるのに。
 
どこの道場にいっても、懇親会が何度も催された。話していて気付いてことがある。弁護士、地主、会社経営者、医師等、若い人もそれなりにハイソサエティの人たちが多いことだ。
「私たち、地位もお金も時間もあるので、肉体だけでなく、精神も鍛える高尚な武道である合気道をやっています」という主張が透けて見えるような感じがした。
 
主張するしないは別にして、純粋に「自然の気」に感動して、それを表してくれた人もいる。リカルトという青年は家のそばの山に生えていた木の生命の大きさを感じ、私の合気道の先生の演武の中に同じものを見たといった。それを表したくて、その木で木刀を作り、たどたどしいひらがなの手紙とともにプレゼントとして持ってきた。私は、手紙と木刀を見たとき、「どれぐらい長い時間と手間がかかったのだろう」感動のあまり、涙ぐんでしまった。
 
北部の都市の道場を訪問した時は、ホームステイさせてもらった。
エデルという30歳の若者とその母が住む高級高層マンションだった。
 
「僕は小さい頃から、サッカーじゃなくて武道が好きだったんだ」
自慢げだった。本当に武道が好きらしい。
 
合気道の他、剣道、弓道、十手術、鎖鎌、手裏剣を習っていた。剣道をやっている人を相手に十手で止めて剣を振り払ったビデオも見せてもらった。剣道、弓道はいいとしても、十手術、鎖鎌、手裏剣は日本でもどこで習えるかよくわからない。
 
「筆で精神統一をして 文字を書くのが魅力的だ」
と日本の書道も習いたいといっていた。
 
 
エデルとその友達は、「宮本武蔵論」とか「黒沢明論」等を日本人で合気道を長くやっている私と語りたがっていた。が、一般的な知識しかない私は、とても彼らの知識についていけなかった。逆に、「犬夜叉」とか「ワンピース」などのアニメ論にはついていけた私は、武道や武士道についてあまり知らないことに情けなくなった。
 
南米のいくつかの道場を回り、わかったことがある。合気道をやっている人たちはみんな、合気道とその精神はもちろん、日本文化、日本の精神文化が好きなのだ。
 
私は、合気道をたまたま体験練習で始め、
「あれ、ここに動いて、このように相手と組めば、相手はバランスを崩して倒れるんだ」
「相手がまっすぐ私に向かって動いてくるから、そのラインから少しずれると、相手は重心を失って勝手に倒れてしまうんだ」
力を使わずに「てこの原理」、「力のバランス」、「遠心力」等を応用したような動きに魅せられて面白くなり続けた。女性でも、歳をとっても続けられるのも魅力的だった。
 
南米に行って、合気道の精神文化が重んじられているのにはびっくりした。アメリカの道場にも行ったことはあるが、日本と同じような感じで、ここまで精神的なものが表面に出てきていなかったと思う。
 
南米では、合気道に精神面が非常に重視されて、それを求める人が合気道をやっている。
最初に合気道を広めた先生がそのような教えをなさり、感銘されて広まったのかもしれない。
 
今、私の練習は、身体の身のこなし、さばき方、相手とのタイミングやバランスのとり方が主な練習になっているが、精神的なもの、関連する本を読み、映画を見る、話を聞く等もしっかりやっていこうと思った。
 
南米で合気道をやっている人たちとはフェイスブックでつながっている。彼らの合気道の練習風景の写真、演武会や日本文化を紹介するイベントでの活躍を見るのはとてもうれしい。私も練習に勉強に励んでいこうと思う。

 
 
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2019-03-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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