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だって気圧のせいだから


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:藤村薫(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
ああ、またやってしまった。
日付が変わる直前になって、油と糖の塊であるコンビニ菓子を一気にひと袋食べ切ってから、私はがっくりとうなだれる。
明日の朝、胃が重くて顔がべたべたになって、絶対に後悔すると分かっているのに。
体重が増えてげんなりすることも分かっているのに。
どうしても手が止まらなくて、完食してしまった。
私はなんて意志が弱いのだろう、と自分を責めながら、空き袋をゴミ箱に捨てに行く。
どうしても、どうしても食べたくて、後悔すると分かっているのに耐えられなくて、わざわざ一度うちの前を通り過ぎてまでコンビニに行って買ってきた菓子。
食べ終わってしまった今となっては、どうしてそこまで食べたかったのか、もう分からない。
 
別の日は、会社に着いた頃から異様に眠かった。
寝不足どころか、前の晩は早めに寝落ちしたから、いつも以上に寝ているはずなのに、徹夜したか、睡眠薬でも飲んだ後のように眠気が襲ってきて、濃いコーヒーをがぶ飲みしようが重いものを持ってうろうろ歩き回ろうが冷水で顔を洗おうがガムを噛もうが、まったく目が覚めなかった。
目の辺りから上が妙に温かくて気持ち悪く、なにかを一生懸命に見ていても、すぐ視界がぼやけてくる。
なにか取り返しのつかないミスをしそうで緊張していたのと、常に眠気と戦っていたのとで、その日はどうしようもなく疲れた。
 
他にも、身体に優しいものしか食べていないはずなのに急に胃が痛くて気持ち悪くなるとか、他は一切問題ないのに突然吐き気がするほど頭が痛くなるとか、ほんの些細なことで自分でもドン引きするくらい腹が立つとか、どうしてそうなるのか理由や原因がまったく分からない、小さな異常のようなものが時々起きる。
発生するのは本当に気まぐれで、毎月定期的に起こるわけでもないし、頻度も不調の強さもバラバラで、どれだけ考えても心当たりがない。
規則正しい生活をするとかバランスのとれた食事をするとか身体を冷やさないようにするといった、もう言われ過ぎて聞き飽きた生活を試してみるけれど、まったく効果がない。
あまりに辛かった時には病院に行ったこともあるが、特に胃腸や脳に病気は見つからず、ちょっとした鎮痛薬と「お大事に」という言葉を持たされて帰ってきた。
なにか対策を講じようと思っても原因が分からないままなので、結局は不調になってから薬を飲むとか、諦めて寝るといった方法しか選べない。
病気ではないのなら治ることもないのだろうから、このままずっと共存していくしかないのかな、と諦めながら、異常と付き合っていた。
 
またもや身体がいつもの倍くらい重く感じられたある日。
休日なのをいいことに、昼間からベッドにゴロゴロ転がりながらスマホで何かを検索していた。
すると、どこかの薬局のツイートが目に留まった。
「気圧が大幅に変化するので、頭痛がしたりイライラしたり眠くなったり、つらいかもしれないけれど、気圧のせいなので乗り切りましょう!」
詳細は覚えていないが、要約するとそんな内容だった。
 
なんだこれは。
今まで私がずっと悩んでいた症状が書いてあるけれど、それが全部、気圧のせい?
 
何を言っているのかと思ったが、正式な病名ではないものの「気象病」などとも呼ばれ、気圧の変化で自律神経のバランスが崩れて、もともとの体調不良や持病が悪化したり、思いもよらない影響が出る人は相当数いるらしい。
自分自身は鈍感なほうだと思っていたが、知らないうちに影響を受けていたようだ。
私は効果がないと思っていたが、やはり睡眠をきちんと取るとか暴飲暴食を避けるとか、そういったことで症状が軽くなる人が多いという。
 
それを知って、なにが解決したわけでもないが、少し気持ちが軽くなった。
今までの私は、不調になった時、原因が分からないために自分を責めていた。
イライラしやすい自分、食欲が抑えられない自分、眠くなってしまう自分……すべては精神的に未熟だったり、怠けているせいなのかと思っていた。
だが、気圧のせいなのであれば、むやみに自分を責めなくていい。
まずは、それだけでも非常に助かった。
 
また、とりあえず「気圧のせいだから仕方ない!」と割り切ったうえで、ではどうしようか、と対策を考えることができるようになった。
より一層、普段の生活に気を配るとか、ダメージを受けている自分をいたわるとか。
そういう方向にシフトすると、やはり症状が早く和らぐようになり、結果、周囲への影響や、自己嫌悪に陥る時間も減るようになった。
 
気になっていた症状は、今でも出ることがある。
季節の変わり目や、台風が来る秋などは、相当につらい。
けれど、原因が分かった今は「気圧のせいだから」をおまじないのように唱えながら、乗り切っていけそうな気がしている。
 
 
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2019-03-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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