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メディアグランプリ

「変なこと」でお客様に評価されていた私


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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ライティング・ゼミ火曜日コース 横山信弘
 
「なんか、冷めてますね」
 
相手が発した言葉に、なぜか違和感を覚えました。だから瞬間的に、
 
「冷めてるとは違う、と思います」
 
と言い返しました。
 
目の前にいる彼は、日立製作所にいるころ、一緒にプロジェクトを組んだパートナー企業の方です。同じ会社ではなかったが、同僚以上に気の許せる相手でした。
 
その彼が3年後、見違えるような姿になって、私の前にあらわれたのです。
 
「3年で、マザーズ上場だなんて、すごい」
 
ベンチャー企業に転職した彼は、社長の右腕として人事を統括。名刺には「取締役人事部長」の文字がありました。
 
「横山さんもセミナー講師をやってると聞いてます。今度、一緒にビジネスやりませんか」
 
彼は自信にあふれた表情で声をかけてくれました。戸惑ってしまったのでしょう。「新しいビジネスなんて、余裕がない」と私が返すと、冒頭の「なんか、冷めてますね」という言葉となって返ってきたのです。
 
日立を辞め、コンサルティング会社に勤めたものの、当時の私は何をやってもダメの状態でした。喉から手が出るほど仕事が欲しかったのに、まるで自信がなかったのです。
 
とっさに「冷めてるとは違う」と反論したものの、適当な言葉が浮かびません。そこで絞りだすように、言ったのが、
 
「くすぶってるんだと、思います」
 
でした。
 
コンサルティング会社に入ってから2年。仕事は会社から与えられるものではなく、自分でとってくるもの。そう教えられた私は、当時、必死の思いでセミナーを開催しつづけました。しかし参加者は増えても、コンサルティングの相談が増えません。行き詰まりを感じていました。
 
妻はとても記憶力がいい人です。そのことを話したら、「ああ、あの人ね!」とすぐに思い出したようでした。
 
「あの人が、そんなに活躍できるんだから、あなたも大丈夫。がんばって」
 
事もなげに言います。私は、小さな声で言い返しました。
 
「セミナーをやっても、相談が増えないんだ」
 
「評価はされてるんでしょ」
 
「変なことで評価されるんだよ」
 
「変なこと?」
 
日ごろから疑問に感じていることを、思い切って妻に言ってみました。私は以前、システムエンジニアだったので、どのように営業プロセスを管理すべきか。システムを使った方法をセミナーで解説していたのです。
 
ところが……。
 
「熱いところがいい?」
 
「そうなんだ」
 
セミナーのアンケートには、テーマである営業の管理手法についてではなく、「講師が熱い」「情熱的な話し方がよかった」などと書かれるのです。
 
「こんなことを評価されても、お金にならない」
 
私はそう投げやりに言いました。しかし、妻は違います。
 
「熱いのを全面に出せばいいのに」
 
「何を言ってんだ」
 
私は聞く耳を持ちません。もともとシステムエンジニアだったのだから、自分の強みで勝負しろと先輩コンサルタントから助言されていたからです。
 
その後も、セミナーを続けますが、いっこうに仕事は増えません。気分転換に日帰り旅行でも行こうと、妻に言われて温泉へ出かけました。1時間で行ける岐阜の恵那市です。生後8か月の息子を風呂に入れながら、
 
「冷めてるとは違う、と思います。くすぶってる、だけです」
 
という言葉を思い出しました。息子は熱い風呂が好きじゃないようで、すぐに出ていこうとします。息子の小さな背中を追いかけながら、ふと、思いました。
 
そういえば、「くすぶっている」とは、どういう意味なのか、と。
 
温泉に入ったあと、薪ストーブの店に足を向けました。温泉宿に併設された店です。
 
「薪って、どんな木でもいいの?」
 
妻が聞くと、店員が答えます。
 
「木を選ばないと、火をつけても煙ばかり出てしまいます」
 
「そうなんですね」
 
妻がそう答えたあと、何かひらめくものがありました。煙ばかり出てたんじゃ、薪として機能しない――。
 
そうか、わかった気がする。
 
妻に「帰ろう。すぐに」と言って、車に乗りました。帰宅したあと「くすぶる」という言葉を辞書で引いてみます。想像どおり。そこに大きなヒントが書かれていました。
 
「くすぶる」とは、ついている火が炎を立てずに、煙ばかりを出している状態のこと。そうだ。私は冷めているわけじゃない。セミナー参加者たちが書いてくれたように、私は熱いんだ。ただ、熱さが中途半端なんだ。炎を立てず、煙ばかり出している……。だから、お客様を惹きつけられない。
 
くすぶってちゃ、いけないんだ。
 
それからというもの、私は妻の言う通り、セミナーに「熱」を取り入れてみました。炎が出るような熱いセミナーを実施しはじめたのです。先輩コンサルタントから「型破りだ」と指摘されても、つづけました。結果は大当たり。講義内容はロジカルなのに、講師がやたらと熱く語るスタイルが評判となって、口コミで参加者が増えていったのです。
 
それから1年後には、すぐ定員に達するほど私のセミナーは人気となりました。仕事もドンドンとれるようになったのです。この経験でハッキリとわかったことがあります。それは、人を動かすのは理屈じゃない、情熱なんだ、ということです。そして、その情熱が、私と同じようにくすぶっている人のハートに火をつけることで、私の仕事は増えていったんだと。
 
 
 
 
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2019-04-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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