メディアグランプリ

京都天狼院から贈り物


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小林祥子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
4月に入って仕事が加速度的に忙しくなった。
夜遅くまで仕事が終わらず、土日もバタバタしており、月に何度か足を運んでいた天狼院に、なかなか行くことができない。
昼ごはんも夜ご飯もオフィスから一番近いコンビニに頼りがち。こんな感じであるのだから、部屋の片付けもままならず、私の生活はすさんでいく一方だった。
 
4月、次の年号が「令和」に決まったその日、会社の指針を決める大きなプロジェクトが始まろうとしていた。
もともと上司とアシスタント含み、わずか5人の部署だったが、3月、4月と立て続けに人が増え、気づいたら14人という大所帯になっていた。
ちょうど私は35歳になろうとしている。その大所帯の半数以上が年下であり、私より年上のメンバーも今の部署や今回のプロジェクトについて全く知らず、色々な面で私がサポートする必要があった。
 
もともと、人一倍周りのことが気になる性格である。色々なところで話されていることや、やりかけの仕事など、あれもこれも気になって仕方がない。
誰かが、「これ、やってみたのだけどできなくて……」なんて話していたら、すぐに口を挟んでしまう。そして、結局私自身がその仕事を引き受けてしまうこともある。
打ち合わせで誰も手を挙げなければ、「じゃあ、私がやりましょうか」なんて言ってしまう。
まだまだ、自分の仕事が残っているというに……。
そんなこんなで、4月は全く身動きがとれないまま、時間が過ぎ去ってしまった。
 
4月11-12日の木、金曜日に予定されていた集中会議が終わった後、疲れからか、なんとも言えない吐き気に襲われた。同僚と一緒に帰りの電車に揺られるその間も、立っているのさえも辛かった。本当は座り込んでしまいたいぐらいだった。
でも、ここで倒れてはいけない。
何食わぬ顔をしつつ、できる限りの笑顔で話すよう頑張った。
家についたその瞬間、私は着替ることもなく、そのままベッドの上に倒れ込んだ。
 
その週末は何も予定を入れないよう空けておいた。
本当は桜を見に公園でも行きたい気分だが、身体が全く動かなかった。
「このまま、ずっと寝てるのか……」
 
ふと、先月末に参加した京都天狼院主催、秘トリップのことを思い出した。
その日は雨が降ったりやんだりとパッとしないお天気だった。予定していた京都散策の雲行きが怪しくなりかけていたその時、店長の池田さんがお店の中でできるアクティビティを提案してくれた。それは、「書店の本棚を作ろう」だった。
せっかくの提案だったのだが、実際参加した方に最近読んでる本を聞いたところ、ビジネス書や雑誌ばかり、夢いっぱいの書店の本棚作りは、お蔵入りになってしまった。
 
そんなことを思い出しつつ、ある本を手にとった。
それは、秘トリップの最後にお土産にと渡してくれた本だった。
「初代京都天狼院秘本」
物語が大好きだと語る池田さん。私達が最近本を読んでいないことに驚いた様子だった。
そして、それは、そんな私達にピッタリに感じた。
「たまには、いつもと違う本も読んでいただければ」
そう言って渡していただいたような記憶がある。
 
改めて、黒いカバーがかけられた本を手にとってみる。
妙にしっくりくる。それは、今この時を予期して私のもとに訪れたようだった。
疲れた。しんどい。たまにはゆっくりしたい。現実とは違う世界に行きたい。
その本は、私のそんな無茶な願いを聞いてくれるようだった。
 
冷蔵庫から、秘トリップの道中で手に入れた桜の葛ゼリーを取り出し、温かいお茶を入れて……。私は今日のこの時間をその本と過ごすことにした。
 
黒い本のドアを開けると、そこには想像していなかった世界が広がっていた。
なんとも懐かしい、優しい、でも少し悲しい。そんな気持ちが胸いっぱいに広がった。
第一章を読み終えたとき、ふいに涙が頬を伝った。
なぜだか止める気にならない涙。手で拭っても涙が溢れてくる。
悲しみなのか、痛みなのか、辛さなのか、良くわからない気持ちが胸いっぱいに広がる。
その涙は、私が日々感じていた疲れを洗い流すようだった。
ボロボロ泣いたら、少しすっきりして、次の章を読み進めた。
 
私の手許にやってきた黒いカバーをかぶった物語。
それは、日々クタクタになるまで働く私達現代人を癒やしてくれる薬なのかもしれない。
もし、あなたが毎日の日常に疲れ果ててしまったら、ぜひ、初代京都天狼院秘本と呼ばれる黒いカバーのかぶった特効薬を手にとってもらいたい。
一呼吸をおいて読んでみる。
きっと、その特効薬はあなたの5月病にも効くはずだから。
 
 
 
 
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2019-04-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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