君とならどこまでも
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記事:松縄竜弥(ライティング・ゼミ平日コース)
「別れましょう」
そう言われて、ぼくの初恋は、たった2ヶ月で終わってしまった。
高校1年生の3月ごろ、きびしい寒さも越え、ポカポカと暖かくなり、季節の変わり目を感じていた。ぼくの高校では、クラス替えがあり、1年生のときとは違うメンバーと新しいクラスで過ごす。
1年生のとき、仲の良かったYさんとクラス替えで別々のクラスになってしまった。2年生になり、新しいクラスにも馴染み、友達が増えていく一方で、Yさんと話す機会は少しずつ減ってしまっていた。
そんな時、テニス部の友達のK君に彼女ができた。K君とはテニス部に入って最初にできた友達だ。話が合うのもあってよく遊んだ。だからこそ、K君に彼女ができたと聞いた時は、素直に嬉しかった。
しかし、ある日、下校中にK君と彼女がいっしょに帰っているのを見たとき、羨ましいと思ってしまった。そのとき、一度も彼女ができたことがなかったぼくは、漫画やドラマの知識でしか恋愛を知らなかった。現実で、自分の友達がそういう関係になっているのを見て、付き合うということが一気に自分に近づいた。
ぼくも彼女がほしい。ぼくは誰が好きなんだろう。そう考えたとき、ふと頭に浮かんだのが、Yさんだった。一緒にいることが一番想像できた。ぼくは、Yさんが好きだと気付いた。
しかし、だれかに恋愛相談をしようなんて選択肢がまるでなかったぼくは、いまでは想像もできないほどの勢いで、Yさんに「好きです」とメールを送ってしまった。その日は、いつ返信がきてもいいように、マナーモードを解除して、心臓がバクバクしながら寝たのを覚えている。
珍しく目覚ましより早く起きた。すぐに携帯を見たが、返信はなかった。きっとYさんは戸惑ったことだろう。ぼくも戸惑っていた。授業も部活も上の空で、Yさんに会ったらどうしようとビクビクしていた。
返信が来たのは、メールを送ってから二日後の夜だった。Yさんからは、いきなりでびっくりしたと言われた。結局、最初の返信で告白の返事はなかった。そのあと、メールからLINEに変わり、他愛ない会話を続けつつ、ぼくの告白はどうなったのかと不安になっていたら、Yさんから「付き合ってください」ときた。そのときのぼくは間違いなく人生で一番喜んだ。
ついに、彼女ができた。学校に行くのが楽しみになった。夏休みは、花火を見に行き、慣れない人混みの中、漫画やドラマで見たようなデートを自分がしてるのかと夢か現実なのか曖昧だった。帰り道では、Yさんから手を繋いでくれた。充実感に満たされていた。
そう、満たされてしまっていた。
彼女がいるというステータスに甘んじ、彼女に対して何もしなかった。夏休みは、花火を見に行った以外、一度も会うことがなかった。部活を言い訳に会おうとしなかったし、連絡を取らないこともあった。そんな状況で関係が続くわけもなく、夏休みが明け、二学期に入ったある日、YさんからLINEがきた。
「別れましょう。部活が忙しいみたいだし、友達にしか見れなくなった」
なにも言い返せなかった。部活に明け暮れていたのも事実だし、どうやって復縁するのかもさっぱりだった。こうして、ぼくの初恋はあっけなく終わった。
あの頃のぼくにとって、付き合い始めることが、短距離走のゴールになってしまったのだろう。告白が成功するまでは走りづつけるが、成功というゴールを超えてしまってからは、もう全力で走ることもない。
過去の自分に教えたい。恋愛とは、終わらないマラソンであると。告白の成功は、あくまで通過点の一つであり、そこで満足してはいけない。
時にはゆっくり歩いてもいい。疲れたなら、立ち止まってもいい。一つの通過点を超えても、満足せず、さらに先にある通過点に向かって進んで行く。一つ一つの通過点を目標に見据えて、進む意思を持ち続ければいい。
ぼくは進み続けた。大学生になってからも、なかなか彼女はできなかった。サークルに入ったはいいものの、先輩、同期、さらには後輩にも先を越され、悔しい思いも何度もした。
しかし、諦めたくなかった。もう彼女がいるというステータスに囚われているわけじゃない。次にできた彼女を大切にしたい。その一心で走り続けた。そして、四年の冬、ついに彼女を作ることができた。
もうすぐその彼女とは、1年半の記念日を迎える。まだまだ先は長い。同棲、結婚、子供など、たくさんの通過点はある。でも、もうひとりで走っているわけじゃない。彼女とともに、ぼくはこれからも走り続けるだろう。
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