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ペアダンスにおける男性は鮭


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:YS(ライティング・ゼミGW特講)
 
 
サルサは、男女が手を取り合って踊るペアダンスだ。
酒場でちょろっと踊って何なら夜の街に消えていく…。サルサを踊る男性にナンパなイメージを持つ人もいるかもしれない。わたしもそのひとりだったけれど、2年ほど続けるうちに全く違うと気づいた。
 
ペアダンスにおける男性は鮭。
 
鮭は産卵のために生まれた川まで戻るが、その生存率は0.4%。過酷な旅だ。
遡上シーズンは雨期で、川の水量が増しているので体力がいる。だけど遡上する間、鮭は食べることなく進むので体力は落ちるばかり。さらには、クマをはじめとした肉食動物に狙われる。タスクの負荷は大きいのに使える体力は有限で、しかも外敵までいる。
不利すぎる条件で目的地を目指すのだから、生き残る可能性は低いよね……。
 
サルサ界における男性と鮭の共通点は、高負荷タスクと外敵という条件にめげずに目的に向かっていくところだ。
 
まず負荷の大きさ。
サルサはリーダーとフォロワーで役割がはっきり分かれている。たいていの場合、男性がリーダーと呼ばれる役割を担い、100%主導権を握って曲のすべてを進行する。
リーダーとしてサルサを踊りたいと思ったら、まず基本のステップを覚える。そして1曲3分間とぎれないだけのワザのバリエーションを貯める。そして曲に合わせてワザをつなぎ合わられるようにならねばらない。
ダンス経験のない初心者が、1曲を踊れるようになるにはだいたい3ヵ月は必要だ。
 
1曲踊れるだけのワザを蓄えてダンスフロアにデビューすると、鮭にとってのクマ、リーダーにとってのフォロワーが待っている。
自分がかけたリードが通じず、フォロワーがまったく動かない、間違った方向に力をかけてフォロワーから痛いといわれる、といった恥ずかしく感じる場面は当たり前に何度も起こる。
たいていのフォロワーが1回は踊ってくれるが、2回目はそうはいかない。上手なリーダーと踊りたい気持ちがあって、初心者と2回も3回も快く踊ってくれる人はそう多くない。
 
事実、経験ゼロでダンスを始めて、ステップが覚えられない、フォロワーに冷たくされて心が折れたといって挫折する人も多い。
その結果、ダンスフロアで挨拶のようにする会話といえば、「リーダーが少ない。そして上手なリーダーはもっと少ない」のだ。
 
だけど、ダンスは鮭の世界よりやさしい。
 
遡上中に食事を取らない鮭の体力は減る一方だが、ダンスは練習という食事を取り続ければスキル‐体力は上がっていく。
スキルがついて余裕が出てくると、殺しにかかってくるクマかのように見えたフォロワーが実はリーダーを応援してくれていたと気付くときが来る。
リードがかからないときにフォロワーが動かないのは、リードの改善点を伝える行為だ。そのフォロワーが彼のしたい動きを予想して動いてあげても、ほかのフォロワーがそうするとは限らない。自分のリードの何がおかしいか知る機会がなければ、上達する機会は永遠に来ない。もし痛みを与えるようなリードだと本人が知らないままだったら、いつかけがをさせてしまうだろう。もし危険なリードをする人だとフォロワー同士で共有されたら、彼と踊るフォロワーは激減する。間違いを知らされずに放置されることは、彼にとってデメリットでしかなかったのだ。
 
そして、鮭は産卵したら死んでしまうが、リーダーは死なない。
むしろ地上の楽園ともいえる環境が待っている。上手になればフォロワーは喜んで何曲も踊ってくれる。誘って断られることなんてなくなる。フォロワーが過剰なダンスフロアで、自分が踊りたいフォロワーを選ぶことができる。初心者だったころ、踊ってもらえなかったような憧れのフォロワーから逆に声をかけられるなんて、ちょっと想像しただけでニヤッとしてしまうじゃないか。
 
あれ? ここで初めに想像したようなナンパ男になる可能性が出てきてしまった。
うっとりするようなダンスを踊って夜の闇に消えていく……。もちろん大人同士だから色んなことが起こりえる。だけど、期待した男性諸氏に残念なお知らせをしよう。ここで調子に乗った行動をとり続けると、瞬く間にその行状はフォロワーの間に広まるのだ。「あいつは危険だ」と。それは死を宣告されたのと同じだ。
 
最後の関門‐甘い誘惑を振りきって踊り続けるリーダーたちに、安直なモテを越えた人間としてのモテを見る。技術を獲得するための練習をいとわず、指摘を受け入れられる寛容さを持ち、節度のある社交ができるリーダーたちが、硬派で真面目な紳士だということは間違いない。年齢も容姿も関係なく、彼らとは踊っても話をしても楽しい。
 
‐だから上手なリーダーの大半は既婚者である。
 
 
 
 
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2019-04-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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