平成令和をまたぐ大型連休、私は読書で旅に出る。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:獅子崎 りさ(ライティング・ゼミGW特講)
皆さん、こんにちは。
平成の時代の最後に、そして令和の時代の初めにやってきた超大型連休、どのように過ごされていますか?
多い人で10日間の連休。国内旅行はもとより、海外にまで旅立った方も多いのではないでしょうか。
さて私はというと、10連休にもかかわらず特に外出する予定をたてるでもなく、家にいます。私はもともと土日の休日も家で過ごすことが多く、特段旅行もしない人間です。そして10連休を迎えても、いつもどおりの休日を過ごしている、というわけです。
「せっかくの10連休なのに、もったいない」
「こんなときぐらいしか旅行とか行けないんだよ?」
そんな声が聞こえてきそうですね。
でも、この10連休、私は家にいながらにして旅に出る手段を確保しているのです。もし、あなたも連休なのに特に外出する予定がない、でもどこかに行ってみたいというのであれば、ぜひ試してみてほしいです。
その旅に出る手段とは、本です。
私は何冊かの小説を、連休中の読書用に用意しました。
小説とは、不思議なものです。
文字を並べ、言葉を連ねただけの物なのに、自由に私の心をどこにでも飛んでいかせてくれます。それはまるで、ドラえもんの「どこでもドア」のようです。
行きたい場所、見てみたい所に、文字だけで連れて行ってくれる。
そんな本は、昔から私の大切な旅の手段でした。
小説がもつその性質を私が初めてはっきりと認識したのは、中学2年生の夏休みのことでした。
8月になったばかりで、天気は快晴。暑い日ざしが照りつけ、セミがじゃんじゃんと鳴いている。そんな夏休みのある一日に、私は部屋で吉本ばなな氏の「TUGUMI」という小説を読んでいました。これは、「つぐみ」という少女をとりまく港町でのひと夏を描いたストーリーで、少年少女たちの夏の情景が瑞々しく描かれています。小説の終盤では、夏という季節が静かに終わっていく様子が書かれていました。
そして、「TUGUMI」を読み終えた私の頭に最初に浮かんだのは、「ああ、もう夏が終わるのか……」ということでした。
そして、夏の終わりをかみしめながらほうっとため息を一つつきました。
そして一瞬の間を置いた後、じゃんじゃんとうるさく鳴くセミの鳴き声で現実に引き戻されました。今がまだ気温30度を超える真夏だったことを思い出したのです。
今思い出しても、あの時の感覚は強烈な物でした。
私は部屋の中にいました。でも、確かにあの時私は、港町の潮風を、過ぎていく夏の空気を感じていました。
「TUGUMI」という小説が、私を港町に運び、そしてそこでの時間を体験させてくれたのです。
そうして私は、本が持つ力を知ったのです。
本は私をどこへでも連れて行ってくれると。
本が持つこの力は、いったいどこから来るのでしょうか。
答えは私が言うまでもないことなのでしょうけれども、本が文字で構成されているシンプルなものだから、ということに尽きるのでしょう。
文字で構成されているというシンプルさが、読者である私の想像力をどこまでも刺激してくるのです。
本の中に「それは雪がふきつける日のことだった」と書いてあれば、たとえ現実が夏の真っただ中であっても、私は寒い冬の日の中にいます。
「それはオリオン大星雲第7太陽系第4惑星のある街で起こった事件だ」と書いてあれば、私の心は見たことのない宇宙の果てへと飛んでいきます。
文字だけで構成されているからこそ、私の想像力は自由にどこまでも広がっていくことができます。
紙に印刷された文字。それしかないからこそ、読み手は自由であるということ。それが、文字が持っている力でしょう。文字は、それだけでもって、自動的に私たち読者の想像力を働かせるようにできています。
逆にいえば、本は、読者である私の想像力を試してきているとも言えます。
本を読んでいる時、そこでは文字と私の想像力の戦いが繰り広げられているのです。書かれたひとつふたつの言葉から、私がどこまで自由に想像力を飛ばしていけるのか。本は、いつもそんな挑戦を私にふっかけてきているのです。
そうした戦いが繰り広げられているからこそ、本を読み終わった時に、私は心地よい疲労感を感じます。本からの挑戦を受け、自分の持てる想像力を働かせ、そして本の中の旅を終えた後の疲労感です。
外出予定はないけど、なんとなくどこかへ行ってみたい。そんな気持ちを持っているあなたには、ぜひ、本からの挑戦を受けてみてほしいと思うのです。
本からの挑戦を受け、想像力を働かせたとき、私たちは自由にどこへでも行くことができます。
知らなかった場所、出会ったことのない人、見たことのない時代。
そんなところへ自由に行くことができます。
この大型連休。私はしばらくの間、本のページを開いて旅に出ようと思います。
あなたも一緒にいかがですか?
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