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メディアグランプリ

恩師の言葉は、人生に迷ったときの方位磁針


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:與十田喜絵 (ライティング・ゼミGW特講)
 
 
「あきらめたら、そこで試合終了ですよ?」
 
あまりに有名な、スラムダンクの名言だ。
スラムダンクという漫画を読んだことがない私ですら、その言葉を知っている。バスケットボール部顧問である安西先生の言葉だ。
 
この言葉が名言として有名なのは、漫画の主人公が安西先生の言葉に奮い立たされ、苦境を乗り越えるというストーリーが感動的だからなのは間違いない。だが、それに加えて、自分自身がこの言葉に励まされ、あきらめそうになった時にこの言葉を思い出して乗り切ることができた経験を持つ読者が多くいるからではないだろうか。その中には、自分の人生を支える大切な言葉として、友人に語りたくなる読者もいるだろう。スラムダンクを読んだことのない私がこの言葉を知っているのも、教えてくれた友人がいたからだ。
 
高校1年生の時に担任だったN先生は、私が恩師とあおぐ存在だ。私だけでなく、先生と出会った生徒の多くが、N先生の言葉を心に大切にしまって人生を送り、ことあるごとに先生の言葉を思い出して励まされているのではないかと思う。その証拠に、数年前に開催されたN先生の還暦お祝いパーティには、先生が過去に在籍された複数の高校の卒業生が80名ほども集まった。N先生がいかに多くの生徒と向きってきたか、その生徒にいかに慕われているかが伝わってくる、熱い会だった。
 
N先生はクールで辛口なコメントが有名だった。ロシア系の血筋ではないかと勘繰るような色の白さと大きな体。仕立てのよいスーツに眼鏡。めったなことで感情的にならず、ニコリともしない。ひげははやしていないものの、安西先生と少し似ているかもしれない。
 
私の通う高校は、平成元年に新設された特色ある都立高校だった。「個性豊か」という言葉にはおさまらない、おそらく教師にとって扱いづらい生徒がクラスに何人もいる学校だった。(のちにN先生から、あの学校には「規格外」の生徒が集まっていたと聞いたときは、なんというピッタリな表現! と膝を打つ思いだった。)
 
そんなひと癖もふた癖もある生徒たちと正面から向き合い、時に苦い顔で首をかしげ、時に大きく頷き、本人にとってベストなタイミングで短く声をかけてくれる。忙しい中でも、一人ひとりの生徒のことをよく観察している。それがN先生だった。
 
N先生とは卒業してからも不定期にお会いする機会がある。同窓会のように大勢で集まることもあれば、少人数で食事をすることもある。メールで相談にのっていただいたことも、ある。その時々にかけてもらった言葉は、どちらに進めばいいか迷子になってしまったときに立ち返る、方位磁針のような役割を果たして私を導いてくれる。
 
「どちらが正しい道かの正解なんて無い。選んだ道を正しい道にしていくだけだよ」
 
「(その仕事を)ぶん投げられたと思うか、任されたと思うか。どうせやるなら任されたと思ってやったほうがいいんじゃない」
 
「あきらめるのは簡単だけど、きっとできると信じて、あきらめない姿勢でがんばっていると空気が変わる瞬間がある。空気が変わると、協力してくれる人が現れる」
 
N先生の名言はたくさんあるが、私がことあるごとに思い出して心の励みにしているベスト・スリーがこちらだ。
 
私たちの生活は、日々ちょっとした選択の連続だ。その積み重ねが、人生になる。
見えていたはずの目標がぼやけてしまい、迷子になって足がすくんでしまうことがある。自分にとって何が大切で、どこに行きたいのか、何をしたいのか。
 
そんなとき、N先生のことを思い出し、「今だったらN先生は私にどう声をかけてくれるだろうか? 」と想像する。「この状況を見て、N先生は苦い顔で首をかしげるだろうか? それとも大きく頷いてくれるだろうか?」
 
不惑とよばれる40代になってなお、心の中の方位磁針であるN先生の言葉を頼り、導いていただき続けている。「もういい加減にそんなに迷うなよ」と、苦い顔で首をかしげるN先生の顔が思い浮かぶが……。
 
N先生は今も現役で都立高校の教壇に立っている。
去年、また1年生の担任を受け持つことになったそうだ。
「還暦を過ぎて、もう担任は持たされないと思っていたのに…… 」とぼやいていた。
 
数年前に入院されたN先生の体調が心配ではあるが、N先生と出会うことができた生徒の皆さんは本当に幸運だなと思わずにはいられない。
 
N先生を恩師と呼ぶことになるであろう生徒は、まだまだ増え続けている。
 
 
 
 
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2019-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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