メディアグランプリ

明日、世界が終わるとしたら何をする?


 
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記事:與十田喜絵(ライティング・ゼミGW特講コース)
 
「明日、世界が終わるとしたら何をする?」
 
先生の問いかけに対して、生徒たちはこんなふうに答えた。
 
「けんかしていた〇〇ちゃんにごめんね、ってあやまる」
「好きな人に、好きだよって言う」
「お母さんに、いつもありがとうって伝える」
 
などなど、色々な意見がでたところで先生はこう言った。
 
「なんで待ってるの?」
 
「??」
 
先生の言葉の意味が分からない様子の生徒たちに、先生は説明を加えた。
 
「なんで、世界が終わるって時まで待ってるの?
なにもそんな瞬間まで待ってる必要ないじゃない。
ごめんね、ってあやまったらいい。
好きだよって、伝えたらいい。
ありがとうって、今すぐ伝えたらいいじゃない。
なんで、待ってるの?」
 
これは、とあるアメリカの小学校での先生の生徒のやりとりだ。
歌手の宇多田ヒカルさんがラジオ番組で、自分が通っていた小学校でのエピソードを紹介していたのだ。
 
今から20年ほど前の番組での紹介だったにもかかわらず、よく覚えている。
 
私は中学生のころからよくラジオを聴いていた。高校に入ってから、洋楽好きの友人から教えてもらったJ-WAVEをよく聴くようになった。
 
1999年10月、J-WAVEでスタートした宇多田ヒカルさんの番組、「トレビアン・ボヘミアン」の初回放送を聴いたときの衝撃は大きかった。
 
当時まだテレビにほとんど出ずミステリアスな雰囲気を漂わせていた宇多田ヒカルさんが、ラジオだと個性全開で喋り倒していたのだ。
 
「うわっ、宇多田ヒカルってこんな感じの子なんだー! へぇぇぇ」
 
というのが私の第一印象だった。
 
毎週土曜夜に放送されたこの番組を通して、私の中で彼女の存在が「宇多田ヒカル」というイチ芸能人から、魅力的な個性をと才能を持つ1人の女性アーティストに変わった。そして、CDを購入し、コンサート会場に足を運ぶファンになった。
 
ラジオはテレビのように映像から見る情報がない分、耳から入ってくる情報を自分の頭の中で想像力をふくらませながら楽しむことができる。
 
編集されたのちに放送される番組もあるが、生放送番組が多いのもラジオの特徴で、それゆえ、良くも悪くも声の主の人柄や性格、本音感が現れやすいメディアでもある。自分の言葉で語っていることか、放送作家さんの用意したコンテンツをとりあえず紹介しているだけなのか、といったことも伝わってきてしまう。
 
「トレビアン・ボヘミアン」は、宇多田ヒカルさんが、自身の言葉で、自身の世界観を語っている番組だと感じていた。
 
冒頭のアメリカでの学校の先生とのやりとりは、彼女にとって忘れないエピソードとして紹介されていたが、私にとってもなぜか心に残り続け、20年ほど経った今でも覚えているのが不思議だ。
 
誰かに伝えたいことがあるのなら、世界の終わりが来るのを待っている必要は、ない。
 
宇多田ヒカルさんは、番組内でお母さんとのエピソードも話していた。
ある日、急に日本からアメリカに引っ越しをすることになり、数年たったまたある日、今度は突然アメリカから日本に帰国することを母親から告げられ、従うしかなかったこと。仲良しの友人に最後にお別れをしに行きたいと言っても、聞き入れられなかったこと。
 
目の前の世界を受け入れるのが辛かったとき、ヘッドフォンでまわりの音を遮断して、日本の漫画を読み漁っていたことや、太宰治などの小説を読んで日本語の美しさに驚いたこと、日本語で話すときはなぜかテンション高く面白いことを話そうとしてしまうが、英語で話すと真面目な話をじっくりできるような気がすること。
 
彼女がラジオ番組で語っていたエピソードの数々を、いま改めて思い出すにつけ、明るく話すトーンとは裏腹に、年齢よりも大人びた詩をかけるのも納得してしまうほど、「世界の終わり」と思えるよう経験をしてきたのだなと感じる。
 
「トレビアン・ボヘミアン」の番組最後は、決まってこのセリフだった。
 
DON’T WASTE YOUR TIME! (時間を無駄にしちゃダメだよ)
 
「いつかやろうと思っていることがあるなら、いつまでも待ってちゃだめ。
世界の終わりは、急にやってきてしまうかもしれないよ」
 
宇多田ヒカルさんからの、そんなメッセージが込められているような気がする。
 
元号が平成から令和へと移る記念すべき10連休も、いよいよあと2日で終わってしまう。
時間を無駄に浪費してしまわずに、いまできることを頑張らなければ。
 
世界の終わりがやってきてしまわないうちに。
 
 
 
 
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2019-05-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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