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ガリガリさんのためのぽっちゃり本


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記事:奥村まなみ(ライティング・ゼミ火曜コース)
 
 
今から、世の中の多くの女性が、腹の立つことを言います。
 
「私は細くて、やせています」
「どれだけ食べても太れません」
「ダイエット? したことありませんし、やろうと思ったこともありません」
 
どうでしょうか? 腹が立ったでしょうか?
しかし、その、腹の立つ理由って、一体なんなのでしょうか?
 
私は、子どもの頃から痩せていて、いつも周りからは「ガリガリ」「骨が痛々しい」「ご飯ちゃんと食べてる?」そんな風に言われて育ってきた。そんな言葉は、大人になった今でも変わらず、浴び続けている。
 
洋服は、いつもウエストを細く仕立て直ししないと着られない。
「細いとなんでも着られていいわね~」
そんな風に言われ、
「そんなことないですよ、細すぎてガバガバで……」
なんてことを言えば、あからさまに嫌な顔をされ、何か自分が重い罪でも犯したような、そんな気分になる。
 
子どもの頃に、そんな「罪」を犯してしまったら、それはいじめの対象にさえなる。
自己防衛からか、いつしか、私は自分の体を隠すようになった。
なるべく体のラインが見えにくい服を選ぶようになった。
写真を撮られる時も、自分の細さが少しでも強調されないような体勢を考えていた。
友人と、体型の話になりそうになったら話題を変えようとした。
 
一般的に、太っている人には、面と向かって「デブ」「肉が醜い」「ご飯、食べすぎなんじゃない?」そんな風には、軽々しく言ったりはしない。それは、すべて私が言われ続けている言葉の逆さまを言ったにすぎない。にもかかわらず、なぜか片側だけが、いわゆる「悪口」とされ、本人を傷つける言葉と広く認識されている。
 
テレビを見ていても、雑誌を開いても、世の中は痩せることにとにかく必死。
新聞の折り込みには必ずと言っていいほどに、ダイエット食品のチラシが入っている。ラジオでさえ、大幅に時間を割いてダイエットの成功体験を話している。
 
反対に、痩せている、太りたい人のための食品やグッズを、テレビなどで取りあげられているのを、私は見たことがない。ドラッグストアなどに行っても、「ダイエットに効果的!」とうたったコーナーは設けられていても、「太るのに効果的!」といったコーナーはない。
 
もちろん、より多くの人に共感され、需要があってこそのビジネスなのだから、太りたい人が少ない世の中には当たり前の形態と言える。
 
それにしても、である。
「痩せていることが素晴らしい」ということを、世の中のすべての人が求めているという前提での、一方的な情報発信や表現が多すぎやしないだろうか。
 
自分が欲しい情報だけをキャッチすればいいのでは、とも思うのだが、なんせ、ネット社会である現代では、情報というモノが、求めている、求めていないにかかわらず、ダダ漏れ状態。
 
この「ダダ漏れ」を利用した、「痩せていることが素晴らしいこと」という、人々への無意識のすり込みが、冒頭の私の発言を「世の女性が腹の立つもの」にしてはいないだろうか。
 
そして、そのような風潮の影響からか、痩せている人に対しての「悪口」は、太っている人に対しての「悪口」に比べると、かなり軽いタッチで繰り広げられていると感じる。
同じ「悪口」なのだから、同じように傷つく対象があるのは当たり前なのだが。
 
そんな、もやもやした気持ちを抱えた私を、変えてくれる本があった。
それは『1ヶ月で太りたい人のための完全マニュアル本』ではない。
『これで太る! カロリー多めの献立本』でもない。
それは、ぽっちゃり女子のためのファッション雑誌『ラ・ファーファ』である。
 
本屋で初めて表紙を目にしたときは、「え? こんな雑誌が受け入れられるんだ」という感覚だった。ファッション雑誌に出てくるモデルと言えば、スタイルがいいのが当たり前のはずだが、この雑誌に登場するモデルの体重は100キロを超える人もいると言う。
雑誌の趣旨としては、大きいサイズのファッションを、体型を気にして楽しめない人のために、いろんなジャンルでおしゃれを楽しんでもらえるように……との事らしい。
 
もちろん、ガリガリな私には、この本は何の役にも立たない。
しかし、ページをぱらぱらとめくるうち、その雑誌のモデルたちから、私はただ単なるファッションコーディネートの参考といったものではなく、「人が生きる姿勢」のようなものを感じていた。
 
後から気になって、この雑誌の発行人の方のインタヴュー記事を読んでみた。
なるほど、私がその雑誌に惹かれた理由が、そこにはあった。
 
「太っていても、そのことで自分を否定せず、健康的に生きている人には、かわいらしさがある。そういう人が“ぽっちゃり”なのかな。体重ばかり気にして後ろ向きになっている人は、印象もマイナスですよね」
 
この発言、ぽっちゃりの定義を、実に魅力的なものに変えている。
捉え方ひとつで、こんなにも人を魅力的に見せられるものなのか。
今までのモデルとはかけ離れたスリーサイズの彼女たちは、「ダダ漏れ」の情報に翻弄されることなく、堂々とファッションを楽しんでいる。自分で自分を認めて、自分の道を生きている。
 
人の言葉を「悪口」として捉えて、勝手に傷ついている私の方が、どうやら「ダダ漏れ」の情報に翻弄されていたようだ。
そして、私の「腹の立つ」発言に腹を立てた人。腹が立つのは、「ダダ漏れ」の情報の影響だけではなく、自分の道を生きていないことが最大の理由なのかもしれない。
 
ふと、ぽっちゃりの反対語を調べてみた。
「ガリガリ」「やせっぽち」「ひょろりん」と出てきた。
 
「痩せていても、そのことで自分を否定せず、健康的に生きている人には、かわいらしさがある。」
 
さて、この定義にどの言葉を当てはめようかな。
 
 
 
 
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2019-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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