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メディアグランプリ

サンドイッチは休日スイッチ


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:岸本しおり(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
私の父の朝ごはんにはマイルールがある。平日は味噌汁しか飲まないのに、日曜日の朝はサンドイッチしか食べないのだ。うっかりサンドイッチの準備を忘れると機嫌が悪くなる。
 
小学校高学年になった頃からだろうか。母がパートを始めた事をきっかけに、私がサンドイッチ当番になった。サンドイッチ当番と言っても、やることはとてもシンプル。レタスを洗ってちぎり、トマトを切る。卵焼きを焼いて、その後スパムを焼く。戸棚からパンを出し、冷蔵庫からチーズを出す。我が家のサンドイッチは、自分で好きな具材をお好みの量でパンに挟んで食べるセルフメイドスタイル。そのため、用意した具材を別々のお皿に乗せて、机に並べると準備は完了だ。大学進学で上京するまでの間、私はずっと日曜日の朝、サンドイッチの準備をし続けた。
 
父は自宅の近くのアパートの一室を借り、会社を営んでいた。会社と言っても、従業員を雇わず、一人で働いていたため、仕事に関わる全てを自分で決めて、一人でこなしていた。変わりがいない仕事に穴を空けないためにも、仕事の作業スケジュールだけではなく、自分のコンディションもコントロールしながら働いていた。
 
私は社会人になって、仕事で最高のパフォーマンスを出すためには自分のコンディションをコントロールすることが重要なこと、それがとても難しいことを知った。父は、「未来の自分のために、最適な暮らしのリズムを守り続けること」で自分のコンディションをコントロールしていた。つまり、仕事の作業だけを最優先にするのではなく、「未来の自分のための自分との約束事」をきっちりと守って生活していた。
 
家族を巻き込んだ日曜日のサンドイッチルールは、父が月曜日から仕事を頑張るための父の自分との約束事だったと思う。日曜日の朝に、分かりやすくいつもと違う朝ごはんを食べることで、張り詰めていた仕事モードから休日モードに、緩やかにスイッチを切り替える。そして、娘が用意したサンドイッチを食べながら、家族と他愛のない話をする。この時間が、父にとって仕事の息抜きとして、癒しの時間になっていた。実際に、私が上京した後も、日曜日のサンドイッチを食べた後の父は、よく私に電話をかけてきて、大学の授業の話やアルバイトの話など他愛のないおしゃべりをしていた。この時間だけでも仕事を忘れリラックスできるから、父は月曜日からの仕事も頑張れていたに違いない。
 
思い返せば、父には日曜日のサンドイッチだけではなく、自分で決めた約束事がいくつかあった。例えば、水泳かジョギングの運動を土曜日か日曜日に週1回必ず行うこと。デスクワークの多い父にとって、週に1回運動をすることは、気分転換にもなっただろう。それに、年齢に負けず、仕事をこなし続けるための体力づくりの意味合いが強かったと思う。
 
そんな父も、2年前から大病を患い、仕事を一時休業している。入院生活は約1年近く続き、薬の副作用で歩けなくなり車椅子生活になってしまった。約1年の入院生活のあと、退院し、現在は自宅療養中である。自宅に戻ってからの父は、歩けるようになるための自主リハビリ、仕事復帰に向けてのトレーニングなど、一週間のスケジュールを自分で決めて、それを毎日黙々とこなしている。もちろん、やらなくても、誰にも怒られることはない。父も今年で67歳。仕事を引退してもおかしくない年齢だ。だが、父は仕事復帰という目標に向かって、自分で決めたスケジュールをこなしている。
 
未来の自分のための自分との約束事を守り続ける。大切なことだと分かっていても中々実践できないことを父は当たり前に、淡々とこなしている。
 
それができるから、父は30年近く、自営業として会社を守り続けることができたんだと思う。自分との約束事を守り、コンディションをコントロールし、仕事のパフォーマンスも安定させていた。また、忙しい中でも、未来の仕事のために、新しい資格を取得して、自分の市場価値を上げてきた。資格取得に必要な勉強も、忙しい仕事の合間に、自分の決めたスケジュールにのっとり、コツコツとやっていた。何より、自分への約束を守れる人は、他人への約束も守れる。クライアントからの信頼も厚かったに違いない。
 
社会人になった今だからこそ分かる父の偉大さ。父の背中はまだまだ大きい。
 
そうだ、次の帰省の時は、美味しい食パンを買って帰ろう。
 
 
 
 
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2019-05-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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