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ボルダリングに学ぶ、告白術


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小倉みゆき(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
「うーん、また手が届かない……」
ドスン。
3メートルほどの壁から飛び降りる。
 
ボルダリングをご存知だろうか。
2020年のオリンピックから正式競技となった、
突起のついた壁を身一つで登りあがる競技である。
都内で始められる場所も増え、動ける服装さえあれば始められることから
俄かに人気が出ているらしい。
そんな朝の情報番組をみて感化された友達に、連れられていったボルダリング。
私は、すっかりその魅力にとりつかれてしまった。
 
ボルダリングはスタート地点とゴール地点が決まっている。
自分の武器(筋力・柔軟性・身長)を把握し、
可能である経路を試行することでゴールへ向かう。
 
初めの頃は、パワー勝負なのかと思い、これは私の筋力や身長では無理だと諦めたり、ただがむしゃらに同じ方法で筋肉に負荷をかけたりして何度も失敗していた。
 
右手を伸ばしても届かなくて、高さ2メートルあたりで断念しかけていた私に
「左足しっかり伸ばしたら届くよ!」という声援が飛んだ。
ハッと気づく。
たしかに、左の膝が曲がっている。
ここを伸ばせば、右腕のリーチも伸びるはずだ!
ぐいっと足を踏ん張って右手を伸ばす。
届いた!
そこからはトントンリズムよくゴールへ。
ジャンプで飛び降りると声援をとばしてくれた、見知らぬおじさんとグータッチを交わす。
 
そこからそのおじさんからの個人レッスンが始まった。
一人で挑戦していてもできなかったものが、
指導を受けていく中で、次々にクリアできた。
筋力がものをいうと思っていたが、
実のところは、筋力よりも柔軟な体の使い方や、経路の試行が必要な競技だったのである。
ガッツだけで何度同じ挑戦しても、答えは変わらない。
自分の武器の使い方を知ることと、入念な経路の選定・試行が必要なのだと気付いた。
 
ふと、高校時代の片思いを思い出した。
おじさんのちょっと掠れた声とお節介さが、
当時私が大好きだった先輩と似ていたからかもしれない。
 
先輩とは、地域のバレーコミュニティで一緒だった。
いつもみんなより少し早くきて、
鍵を開け、ネットの準備をしてくれていた。
私も少し早く来た時には、一緒にパスをしてくれ、指導もしてくれた。
温和で優しい先輩が私は大好きだった。
 
2年間の間に、私は先輩に3回告白をした。
その3回とも撃沈。
今思うと、本当に相手にされていなかったのだろうな、と思う。
私からすれば、今日こそはと、いつもよりもおめかしをして、
ドキドキしながら勇気を出して伝えた言葉だった。
けれど、先輩からしたら、毎回同じ、唐突な告白の仕方だったのだろう。
みんながいつくるかもわからない体育館で、ムードも何もなかった。
5個も年の離れた後輩の言葉に、本気だとも受け取ってくれていなかったかもしれない。
 
同じアプローチで何度挑戦しても結果は同じ。
当時の私に、今私がおじさんから学んだことを教えてあげたい。
成功させるためには、自分の武器を見直して、
目標にたどり着くためにはどの経路が最適かを図ることが必要なのだと。
 
告白をするための武器の確認も、
最適経路の確認も、どちらも当時の私はできていなかった。
先輩の好みの女性像は理解していたのか、
先輩の理想に近づける私の武器はなんだったのか、
武器の鍛錬はできていたのか、
答えは全てNOだと、恥ずかしながら思ってしまう。
ただ、あの時は、自分の全力で気持ちを伝えればなにか変わるのではないかと
同じ過ちを3回もしてしまった。
 
1度失敗しても、アプローチを変えることで、成功ができる。
試行錯誤することで目的地に辿りつく、
というわかりやすい達成感を味わうことができるのがボルダリングである。
ただ、試行錯誤をしないと目的地には辿りつけない。
ボルダリングは私に、試行のクセづけをしてくれる。
 
そして試行を重ねる中で、
筋力も柔軟性も私自身の武器が少しずつ強くなっていく。
それが新しい成功への一助になる。
 
同じアプローチを繰り返すことだけでは成功には繋がらない。
自分の武器のレベルは一気に上がることはないし、
握力・筋力の問題で、1日にトライできる数は限りがあるし、
後半に連れ、パワー任せのプレーは難しくなってくる。
ちょっと間をあけて、
しっかり考えて試行を続けることが成功への道なのである。
 
告白もボルダリングと一緒。
目的を付き合うこととするならば、
しっかり自分の武器を見直すこと、
そして最適経路にむけて試行錯誤すること。
その中で自分の武器を少しずつ磨いてレベルを上げることが必要だったのだ。
 
ただ力任せのアタックをしていた高校生の自分に伝えてあげることはできないけれど、
これからの自分は知っている。
一度目の失敗はなんでもいい。チャレンジすることが素晴らしい。
そこからの試行錯誤が重要なのだ。
そう思ってこれからの毎日を過ごしていきたい。
 
 
 
 
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2019-05-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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