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メディアグランプリ

田舎暮らしで見つけた「片づけの魔法」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:天草野 黒猫(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 

ある日のことだった。
「1年たったけど、田舎暮らしはどう?」
 

そんな質問を受けたのは、昼下がりのカフェの一角。久しぶりに会う友人と軽いランチも終わり、2件目のお店に移動した時の会話だった。彼女は、ガトーショコラに生クリームがたっぷり乗ったデザート。私は、シナモンがかかった暖かいアップルパイを一口ほおばった時のことだ。
 

「それがね、意外にいいの。田舎暮らし」
「そうなんだ。でも、街みたいに買い物できる所やカフェとかも少ないんじゃない?」
 

そう。彼女の言う事を実際、私も心配していた。
私が引っ越ししたのは熊本県の南西に位置する、天草。橋で繋がっているとはいえ、かなりの田舎町。デパートとよばれるものがほぼない。かろうじてイオンがあるくらいの島だ。
 

生まれ故郷ではあるけれど、学生時代を過ごしただけの場所。子供の頃の印象では、交通と買い物は不便な町であった。美術館や映画館、カフェでまったりするのが好きな私。ちょっとさみしくなるのかなと思っていた。
 

ところが、大人になって帰った故郷は違っていた。
車の運転もできるようになった今、どこへでもふらっとドライブできる。海まで5分。温泉だって8分程度だ。
 

それに、お買い物もインターネットで気軽にできる。心配していたデパートやお店は、パソコンという画面の中で終了してしまうお手軽な時代に変わっていた。そんな事を回想しながら、質問に答える。
 

「あ、その選択肢が多くないのが逆にいいよ」
「え? 少ないのがいいの」
 

友人の目が少し丸くなった。
そうなのだ。選択肢が少ない。実はこれは大きなメリットだった。
 

というのも、都会にはとにかくたくさんのお店がある。コンビニにいたっては50メートルも歩けば、別のコンビニが並んでいる。
 

その上、独特の明るさが疲れた心に呼びかけてくる。「ちょっと寄ってみようかな」とつい引き寄せられる。そしてなんとなく立ち寄り、新商品などあったら、まんまと買ってしまう。特にストレスがあるときは顕著なパターンだった。
 

ところが田舎には、コンビニは数えるほどしかない。ファストフードときたら、代表的な店舗が1店舗あるのみ。何キロも田んぼや畑が続いている。衝動を誘うものがない。あるのは青く広がる海、緑の山々とどこまでものどかだ。
 

カフェやレストランももちろん少ない。
しかし田舎で長く生き残っているお店は、おしゃれさはなくても、本物の味を持っている。それに最近ではUIターンや、移住者のお店も増えつつある。
 

若い頃に都会や世界に出て、大きな技術を持ち帰った人々のお店は秀逸だ。スタバはなくとも、海をみながらゆったりできるカフェがある。ガラス工房、手織物、陶芸など様々な芸術とも出会える。
 

そして、そういったお店に行きあたる確率も高い。そりゃそうだ。分母が少ないのだから。けれど、きっとそれだけではない。技を身につけ、熟練した頃に地方に移住のパターンは増えてきているのだ。背景には、地方自治体の支援や補助金制度の充実などがあるのかもしれない
 

そんな事を彼女に話しながら、そうだ! これは最近はやりの「片づけの魔法」に似ていると思い当たった。図らずして、田舎暮らしは周囲の環境をまるで「片づけ」でもしたかのように、すっきりと減らしてくれる。
 

大きな発見だった。
 

そういえば、もうひとつ整理されたものがある。
それは目に飛び込んでくる風景だ。
 

窓を開けると高い建物ばかりの都会とは違い、目の前は田んぼ。周囲は背の低い家ばかり。そう、目にとびこんでくる景色があきらかにすっきりとしている。
 

耳に入る、音も片づいた。
 

車や電車の音、深夜の騒ぎ声はほとんど無い。聞こえるのは鶯やカエルの鳴き声。時々、キジの「ケッケーン」と響く雄叫び。段々とテレビの音さえ騒々しく感じてしまう。
 

田舎暮らしは知らないうちに、住んでいる環境自体を「片づけの魔法」で整理してくれていた。
 

もちろん、田舎暮らしはいいことばかりではない。
保険料は地方の方が高い。ガソリン代等の交通費もかかる。今までやったこともなかった、地区の回覧板の配布など時間を裂かれる部分もある。
 

それでも、余りあるスッキリ感!
これはきっと「片づけの魔法」なのだ。
 

刺激や衝動が楽しさを生み出す年齢。色んな物を見て、体験して学びたい若者。車の運転が難しくなってくると向かないかもしれない。しかし、ある程度やりたい事が落ち着き、学びたい事は学んだ中高年には田舎暮らしはお勧めだ。
 

そんなことをひとしきり、友人と話して家路につく。海沿いをドライブしていると、目の前には海一面に広がる美しい夕焼け。「引っ越しして良かったな」としみじみ感慨にふける。
 

そして、自宅につきドアを開けると……
わ! 家の中がごちゃごちゃだ。これこそ片づけなきゃ!
 

まだまだ、片づけは途中。しかし島に移住したことで、確実に周囲の環境は片付いた。あとは、長く大切にしたい物事を探す。きっと数は多くはないだろうけれど、なんて楽しみなのだろう。
 
 
 
 

***
 
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2019-06-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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