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ドイツ人と日本人は本当に似ているのか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:CHACO(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「どちらの国から来られたんですか?」
 
夫はこれまで何百回とこの質問をされたはずだ。根っからのドイツ人の夫がすんなり答えるわけはなく、
 
「どこだかわかりますか?」
 
と、逆にクイズ形式にすることで、何気なく質問したはずの日本人がちょっと困っている。
あ、またやっとるわ……。私は心の中でニヤニヤしながら会話の行方を見守る。
 
そして、ドイツ人だということがわかると次は、
 
「やっぱりドイツ人と日本人って似てるんですか?」
 
と、今度は私に質問がくる。私は内心「やっぱり」が気にかかるものの、言わんとすることはわかる。日本では、両国民とも「マジメ」なのが共通点だと思われている。ドイツ人のどこが真面目なんだろう?
 
おそらく、日本もドイツも敗戦国であったにもかかわらず、そこからあっという間に戦後復興を遂げ輝かしい先進国の仲間入りをしたという背景から、真面目に努力した結果だと思われているに違いない。
 
そしてこの質問に対する私の答えは、
 
「そんなん似てたら毎日こんなに苦労せんわ!」
 
とまでは言わずとも、だいたいそんな答えになる。ドイツに8年暮らし、15年間ドイツ人夫と一緒にいて、ドイツ人と日本人は、チーズと豆腐くらい違うとつくづく思う。似てるのは、豆腐とチーズが食べ物に分類されるように、両者が人間に分類されるということくらいだ。
 
例えば、働き方についていえば、ドイツ人は残業をしない。1日の残業時間の上限が法律で決められていることも理由だが、そもそも彼らは、雇用契約書に書かれている時間を超えて働くという考えを持っていない。
 
仕事が時間内に終わらないのは効率よく仕事をしていないとみなされるし、仕事の量が多すぎるのであれば部下の仕事量を管理できない上司の能力が問われる。
 
私が実際にドイツで働いて目にしたのは、定時10分前になると同僚たちが机を片づけ始めたり、そのタイミングで入ってきた案件には「それは明日やりますね」と言ったりしている光景だった。
 
まじか! そんなんありかよ?
 
ただ、ドイツ人の名誉のために言うと、必要であれば朝7時に出社してでもやるべき仕事はこなす人たちだ。決して無責任でもないし、相手やビジネスのことを考えてないわけでもない。
ただ、1、2時間残業したところで大した違いはないのなら、わざわざ会社に残ってプライベートの時間を犠牲にするなどということはしない人たちだ。
 
そして、ドイツ人は休暇に命をかける人々だといってもよい。
12月もクリスマス近くなると、社内で翌年の休暇取得希望日を提出するように言われる。有休は社員の当然の権利であり、1年分を計画的に業務に支障がないように全員が取得するという共通の理解もあるからだ。
 
日本しか知らなかった私にとって、それらがかなりの衝撃であったことを想像いただけるだろうか。
 
いったいどこがマジメなんだ?
いつも定時で帰ることしか頭にないよな。
3週間の休暇が終わったら、すぐに次の休暇のことを考えてるよな……。
 
こういうこともあった。あるとき、処方箋を持って6時で閉店する薬局に駆け込もうとしたことがある。あと5分あるから大丈夫だと思いきや、目の前でシャッターが閉まるところだった。
 
おっーと、おばちゃん! ちょーっと待ったー!
 
処方箋をヒラヒラさせて見せたが、シャッターはむなしく私の目の前で閉まった。
 
「あそこの通りの薬局が当番で開いてるから、そっちに行ってください」
 
えっ、マジかよ? いや、滑り込みセーフだろ? こっちは薬を求める病人なんだぜ?
 
しかしこういう時の店員には情けも容赦もない。とほほ……
 
6時閉店ということは、6時までお客さんが入れるという意味ではなく、店員が帰宅する時間が6時なのだということを、このとき身をもって知った。
 
なんて国なんだ! 日本じゃありえない! この国にサービスはあるのか?
 
しかし逆の立場だった場合を考えてみると、なんてすばらしいシステムなんだと感動すら覚える。個人の労働環境が守られているということは、つまり、それぞれが少しずつ不便な思いはするけれども、自分も恩恵を受けている。お互いさまだということだ。
 
私の持論だが、ドイツ人のほとんどは基本的に「できれば働きたくない」のだと思う。だからこそ働かなくていいようなシステムをつくるために時間と頭を使った結果、発展してきた国ではないかとすら考えたくなる。
 
そしてなんとドイツ語には、「頑張る」にぴったり当てはまる言葉がない。日本人のように耐えながら頑張ることをしないし、ましてやそれを美徳とも思わない人たちだ。
試験や試合を控えた我が子を送り出すときには、「楽しんで来てね」とか「成功を祈ってるよ」と言う。
 
そんな彼らのどこが日本人と似てるんだろう?
 
行動の基本となるそもそもの考え方から違う。チーズは動物性、豆腐は植物性。
 
断言しよう。ドイツ人と日本人は全く似つかない人たちだ。
ただ、全く似つかないドイツ人と日本人だけれども、付き合ってみるとどちらもなかなか味のある人々であることは間違いない。
 
 
 
 
***
 
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2019-06-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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